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『書くことについて』 スティーヴン・キング レビュー 「命の水」

自身の持つ、物語を紡ぎだす技と術を語るべく執筆が始まった本書。
執筆中、生きていたのが幸運だったといえるほどの交通事故を経験し、「書くこと」の意義と喜びについても語られる。
「書く」仕事に関わらず、わかりやすい文章の作成にも役立つ本書。

本書の構成

  1. 書くことについて
  2. 生きることについて
  3. 閉じたドア、開いたドア

スティーヴン・キングは最初から完成されたスティーヴン・キングのイメージしかなかったが、当然ながらいきなり大ブレイクしたわけではないらしい。
出版社に原稿を送っては、山のようにたまっていく不採用通知。
だが、その不採用通知に現実的なコメントが増えていくことに喜びを見出しながら書き続けるうちに『キャリー』で最初の成功をむかえる。
「履歴書」では、スティーヴン・キングになるまでとその後のドラッグとアルコール漬けの日々からの脱出まで赤裸々に語られている。

「道具箱」「書くことについて」では、書くということに関しての具体的なスキルがわかりやすく記されている。
「閉じたドア、開いたドア」では一次原稿と手直しした二次原稿の比較と解説も掲載。

そして「生きることについて」では、執筆中に遭遇した生きていたのが幸運だったといえるほどの交通事故から復活するまでの物語。

その全てにおいてわかりやすくフレンドリーに語られる。 しかしふと、超一流の気概が顔をのぞかせる。

動機は問わない。だが、いい加減な気持ちで書くことだけは許されない。繰り返す。いい加減な気持ちで原稿用紙に向かってはならない。

天職につく人間の伝えるメッセージは、いつもフラットでストレートだ。

ものを書くのは、金を稼ぐためでも、有名になるためでも、もてるためでも、セックスの相手を見つけるためでも、友人をつくるためでもない。一言でいうなら、読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ちあがり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。おわかりいただけるだろうか。幸せになるためなのだ。
(中略)
あなたは書けるし、書くべきである。最初の一歩を踏みだす勇気があれば、書いていける。書くということは魔法であり、すべての創造的な芸術と同様、命の水である。その水に値札はついていない。飲み放題だ。
腹いっぱい飲めばいい。

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