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『LIFE!』まだ見てないヒトのためのレビュー「Step Out!」

最後に強すぎる潮の香りを嗅いだのはいつだっただろう。
最後に全身に風を受けたのいつだっただろう。
最後にケータイの電波やバッテリーを気にせずに歩き回ったのはいつだっただろう。
そんなことばかり考えながら、画面を見続けていた。

あらすじ: 雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、思いを寄せる女性と会話もできない臆病者。唯一の特技は妄想することだった。ある日、「LIFE」表紙に使用する写真のネガが見当たらない気付いたウォルターはカメラマンを捜す旅へ出る。ニューヨークからグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへと奇想天外な旅がウォルターの人生を変えていく。

引用元: LIFE!  解説・あらすじ- Yahoo!映画.

物語は、地味な主人公が一歩踏み出して旅をするという、よくある話だ。
しかし、ふと予告編を目にしてから、絶対に見なければいけないと感じた。
だらだらした日常を変えようぜ!という自己啓発的な思考に基づくものではなく、映像と音楽がダイレクトに届いてちょっとしたしびれを感じた五感に指令を受けたのだ。
ウォルター・ミティが無人の道路をスケボーで滑走していく映像が、良質な音楽と組み合わさって、言葉ではうまく表現できないくらいの自由さ、開放感をぶつけてくる。
その感覚を、ただただ味わいたくて劇場に足を運んだ。

映像は美しく、音楽は秀逸だ。 どちらかでも欠けてしまうと成立しないミュージックビデオのソレとは違い、それぞれ単独で成立する映像と音楽が組み合わさってすごいシナジーを生んでいる。
ベン・スティラーが「より感情に訴えかける内容」とインタビューで答えたように、あらすじやネタバレを確認するだけでは、この映画を体験できたとはいえない。
シンプルながらよく練られた美しい映像と、適切な場面で効果的に流れる良質な音楽を、あわせて自分自身の五感で受け取って、その時ジブンのココロに浮かぶ感情を楽しみにして欲しい。

映像の美しさはエンドロールにも及び、Flickrかtumblrの上質なサイトを見ている気分になる。
映像には、細かい仕掛けが散りばめられているので、背景にも注意しておくとより楽しめるだろう。

コメディでは決してない。 ユーモアには溢れているのでクスクス笑えるシーンは多いが、悪ふざけはなく、基本的には真面目でなにより繊細な映画だ。
だからこそ、感動しました、ポジティブになりましたなどと上っ面の感想に丸め込まれることなく、ジブンだけのココロに浮かぶナニカを大切にして欲しい。

生まれ変わるのではなく、よりジブンになっていくための「Step Out!」 泥酔したパイロットのヘリコプターに乗り込む勇気を発揮すれば、ソレは僕にも見つかるだろうか。

To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, draw closer, to find each other, and to feel. That is the purpose of life.

Life Magazine motto

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