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Super Bowl 50 「ジョン・エルウェイという成熟」

大団円。
そう、まさしく大団円。
保安官とその助手達の活躍で、おらが町にトロフィーが帰ってきた。
そうして終わってみれば、改めてジョン・エルウェイという男の存在の大きさを感じずにはいられない。

CRY BABY

我らが日本プロ野球以外でもそんなことが起こりうるのかと驚くが、全体1位指名されたチームへのまさかの入団拒否。
ゴネにゴネたその経緯からCRY BABYとあだ名がついたジョン・エルウェイ
しかし、捕るものの手を傷つける程のパスを放つ剛腕と脚力で、ショットガンを操るジョン・エルウェイの破壊力は凄まじかった。
事実、チームを幾度となくスーパーボウルに導いたが、その度に敗戦という事実を突きつけられるばかり。
もうスーパーボウルでは勝てないQBだねと烙印を押された彼を救ったのは、正真正銘ずっと彼の影であったゲイリー・キュービアックだった。

キュービアックという影

ゲイリー・キュービアックは、ジョン・エルウェイと同期入団のQBだった。
だが、全体1位指名と8巡指名の差は歴然としており、スターター争いにすらならなかった。
しかし、非常事態には、自らフィールドに入りドライブを継続させる堅実なプレイぶりは印象に残っている。
ショルダーパッドはつけているものの、ヘッドセットをつけっぱなしの彼は、当時からオフェンスコーディネーターという風貌でサイドラインに立ち続けていた。
コーチに転身した彼は、エルウェイ頼みだったオフェンスをバランスアタックにモードチェンジして、デンバーに初のトロフィーをもたらした。
そしてそれは、暗闇にいたエルウェイに光を与え、心置きなく引退できるという花道までセットアップすることとなった。
しかし、ヘッドコーチとして一本立ちしてからは、キュービアックはスーパーボウルとは縁遠いところにいた。
そんな彼に声をかけたのは、GMになっていたジョン・エルウェイだった。
「彼がチャンスをくれたんだ…」とつぶやくキュービアックの表情は、印象深く残っている。

ウェイド・フィリップスという職人

ディフェンスの職人と言われるウェイド・フィリップスが、スーパーボウルを制覇したのは今回が初めてだ。
以前、最も近づいたのは、まだエルウェイもキュービアックも現役の頃、ディフェンスコーディネーターとして49ersと対戦したスーパーボウル。
サイモン・フレッチャーを擁してオレンジクラッシュの再来と言われた自慢のディフェンスは、しかし、絶頂期のジョー・モンタナに5TDパスを奪われるという記録的なパフォーマンスを許すこととなった。
珍しくロングパスを連投するモンタナのガッツポーズが印象的な試合だった。
そしてそれ以降、彼もスーパーボウルという舞台にすらたどり着けずにいた。

GMエルウェイ

リーグのレジェンドである男が、GMとして活躍した例は他にあるのだろうか?
彼は、自身初のドラフトで今回MVPとなったボン・ミラーを獲得し、くすぶっていたコーチに光を当て、引退後もスーパーボウル最多出場のチームに貢献している。
そうして登用された人材が、過去彼と縁があったという事実は、この大団円をいっそう味わい深くする。
もちろん、ビジネスコンシャスなあのリーグで、ギリ・ニンジョーなどというオリエンタルなものは一切存在しないのだろうが…
現役時にチームを強くするQBは数多く存在する。
しかし、引退後も球団自体を高めていく名選手という存在は聞いたことがない。

彼も、浴びた光と同様、あるいはそれ以上の批判を浴びてきたのだろう。
そうして学び成熟し、現在を迎えているはずだ。
時間は、学ぼうとするものには強い味方になる。
そうして、利かん坊、スーパーボウルで勝てないQBと嘲笑されていた男は、引退後もチームにコミュニティに長く貢献する男となった。
だから、若きスーパーマンよ、そのフードを取り払おうじゃないか。
そうしたことに気付けるのなら、持ち前の明るさとともに本物のスーパーマンになれるはずなのだから…

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