ぼんやり書店を歩いていたら、Number860号が目に止まり、つい買ってしまった。
Numberの熱心な購読者ではないし、ファンとしても「ニワカ」ゾーンに貼りついたままなのに…
買ってしまった理由は3つある。
1.ハビエル・アギーレの直撃インタビュー
2.ザックの通訳だった矢野大輔さんの「通訳日記」
3.現在のザッケローニの独占インタビュー
優先順位は、この真逆だ。
1.ハビエル・アギーレの直撃インタビュー
これまでのように新しい外国人監督が就任することによるお祭り騒ぎは、もうない。
この間のワールドカップの結果に、日本国民が軽い失恋状態に陥っているからかもしれないが、新しい恋愛には慎重な空気がある。
記事は、「ニワカ」の僕にもアギーレがどのようなキャリアをたどったのかがわかりやすく解説されている。
インタビューアーが、つっこんだ質問をしていて興味深かった。
「日本には、本田圭佑と香川真司というふたりの10番がいるが、同じピッチで100%の力が出せたことがない。共存は可能だと思うか?」
そして、TV等で報じられた「守備を重視する」といった発言も一切口にしていないことが指摘されている。
やりたいのは「ボールを巧く繋ぐサッカー」だ。
2.ザックの通訳だった矢野大輔さんの「通訳日記」
外国人代表監督とその通訳の裏話は、これまでも感慨深いものがあった。
矢野大輔さんが大学ノート19冊に及んだ日記の中から、メンバー発表の1週間前からのものを公開し連載を開始した。
大久保を召集したときにネガティブな要素があるか長谷部に確認したエピソード等が綴られている。
本大会の様子は、次回以降になるだろう。
一体どうしちゃったの?と僕らがブラウン管にかじりついていた時に、チームとザックに何が起きていたのかが語られるのだろう。
それはとても興味深い。
少なくとも連載中は、Numberの「ニワカ」購読者になろう。
3.現在のザッケローニの独占インタビュー
ほぼ4年間、なんらかの報道がされ、なんらかのCMにも登場していたザッケローニ。
しかし、本大会が終わってからわずか2ヶ月で、その名前も姿も見かけることがなくなってしまった。
完璧な神隠しは、もともと存在していた痕跡まで消してしまうというが、まるでそれにあったように消えてしまった。
今となっては、ワールドカップが行われたのか、ザックJAPANというチームが存在したのかさえ不確かなくらいほとんどのメディアに登場しない。
彼のことがなんとなく好きな僕は、現在の彼がどうなっているのか興味があった。
なにせ引退の可能性まで口にしていたのだから…
–今後、どこかで監督をやる予定は?
「とりあえず少し休んで、休みたいというふうに思っています。家族のところに行って、家族と時間を過ごしたいと思っていますが、当然サッカーへの情熱はここで尽きるわけではありません。まずは休みますけど、時間が経ったら何かをする可能性はあります。ただ、これだけ素晴らしい4年間、これだけ素晴らしいチームの後に、すぐに次ということは考えづらい。やはりこれだけの現実があって次の新しい現実に行くのは非常に難しい。これ以上というのは正直ないというふうに思っているんで、そういう意味では「引退」というチョイスももちろん持っています」
勇気を持って戦おうといつも彼のジョカトーレに説いていたザックは、まず自ら実践した。
自らは代表監督の経験がないながらも、極東のちょっと勘違いし始めたサッカー途上国の代表監督を引き受けた。
ワールドカップ出場の歴史が浅く、トントン拍子に強豪国へステップアップすると信じて疑わないぬるい国民の期待を背負い込んで。
現在の彼は、アドリア海でサッカーには触れないリラックスした生活を送っているようだ。
そこでしっかりとワールドカップを振り返っている。
原因は明確。
「やるべきことは明確なのに、100%やりきれなかった。たとえうまくいかなかったとしても、信じきる力、やり続ける力が必要だったというのが指揮官としてのわたしの感想だ。もちろんその責任はわたしにあるのだが。」
「ニワカ」から見ても同感だ。
やり方がまずいとか及ばないと言う前に、やっていない、もっというと戦っていないように見えた。
コロンビア戦は別だが、あれはやって及ばなかった試合だろう。
課題も明確だ。
「自分たちのやるべきサッカーを、強豪相手に出すことだ。それも1試合や2試合じゃなく、継続的に出していく。自分たちのサッカーをやれたときというのは、どこが相手だろうと苦労させていた。」
本番で力を発揮できないという根深い日本人の問題は、ずっと残されたまま。
それは、どんなに優秀な監督を連れてきたとしても解決することは出来ない。
それはやってる選手が、実際の試合の中でしか解決していくしかないのだ。
思えばオシムの頃から、恐れず自身を持って戦えと言われ続けてきた。
強い自己信頼のもとに力を発揮するということを乗り越えない限り、JAPANの上の冠をどのカタカナにしようがブレイクスルーすることはできない。
ザックの評価は上がったようで、本当に沢山のオファーが来ていたようだ。
イタリア代表の監督のオファーも噂ではなかった。
しかし、彼は全てのオファーを気が乗らずに断った。
失った日本との恋愛に、彼のココロは傷心旅行の真っ最中なのだ。
自ら望まぬ別れを選択しなければならなかった男のように、彼は過去の恋愛をひきずったままだ。
彼が最後に発した公式なメッセージは、お世辞でも誇張でもなかったようだ。
日本の文化が反映された日々の生活はあまりにも心地よく、快適な日本の暮らしに慣れてしまったことで今後のことがかえって不安になっているくらいです。この4年で自分の半分は、いや、半分以上は日本人になった気がするくらいで、日本以外での暮らしに馴染めるかどうか心配になっているのです。おそらく、日本人の血が私の体のどこかに流れてしまっているのでしょう。今はイタリアの故郷に戻っていますが、ここでの暮らしにですらアジャストできるのか不安でなりません。
引用元: ザッケローニSAMURAI BLUE監督手記IL MIO GIAPPONE “私の日本”最終回「いつかまた、どこかで」 | JFA|公益財団法人日本サッカー協会.
そこまで日本を愛してくれて、感謝の言葉しか出てこないが、どうかそのまま終わらないで欲しい。
4年間心血注いで、最後の10日間で大きな失望を味わう。
どうかその失望のまま、キャリアを終わらせないで欲しい。
日本人よりも穏やかな出で立ちで、しかし喜びを表現するときにはイタリア人に戻って爆発させる。
そんな姿が好きだった。
もう一度、ピッチで喜びを爆発させるシーンを見せて欲しい。
最後に
ザックJAPANをどう思うかと聞かれたアギーレは「前監督へのリスペクトもあるから、コレに関しては意見はできない。」と言い、アギーレへのメッセージを聞かれたザックは「新監督に対して、わたしが何か言うこと自体おこがましい。私が新しい監督さんについて何かを言及するのは失礼に値するからだ。」と言った。
大きなものを背負って、決断し、責任を負う者同士のリスペクトが垣間見えた瞬間だった。
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