思えば、ずっと風の音を聞いてたような気がする。
電子的な騒音がまったくなく、自動車の量は適正だった。
2度目の、しかしちゃんと見て回ったという意味では初めての、沖縄訪問はあっという間に終わってしまった。
月並みだけど、海はホントに青いし、緑はしっかりと濃厚さを主張していた。
日差しがTシャツでいることを許してくれるし、絶えず穏やかに吹き続ける風が、不快な汗から守ってくれる。
なにより、時間が時間として存在していた。
何かの合間の時間、何かのついでの時間、そうではない自分の時計がしっかりまわっていく時間。
スローな時間と言ってしまえば、そこでリアルに生きてるプロの生活者に怒られるかもしれないが、アマチュアの観光客として、それはほんとに衝撃だった。
海外であれば、移住のリアリティは、やや低い…
しかし、ここであればまったくもって選択肢。
しかも、老後を待つまでもなく。
夜間、羽田に帰ってくると機上から膨大な光のドットの集合体が確認できる。
それはとても美しく、どこから帰還しようが心を捉えて離さない。
いや、離さなかった…
今夜は、そのドットを見ても胸は高まならなかった。
美しい女の計算高さを嗅ぎつけたような居心地の悪い冷たさが塊になって残りつづける。
ピンヒールは似合わないかもしれないが、気だてのよい娘に出会ってしまったような、この感じ。
さて、なんとかしなければ…