Movie & TV / 007
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ観た人のためのレビュー(7)「アメリカの友人と英国のブラザー」

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ観た人のためのレビュー(7)「アメリカの友人と英国のブラザー」

方やブラザーと呼びかけ、もうひとりはアメリカの友人と紹介する。
ジェームズ・ボンドの前に久しぶりに姿を現したフェリックス・ライターは、ひとつだけ勘違いしていた。
「近頃じゃ、敵味方の区別がつきにくい」
そんなことはない。
彼らは出会った時から敵味方の見分けがつかないまだら模様の世界を生きていた。

英国のブラザー

僕は、フェリックス・ライターに謝罪しなければならない。
5年間も現場を離れた男に、資金も人材も潤沢な、ザ・カンパニーが仕事を依頼するなんて、それはきっと陰謀、失礼、何かのオペレーションの一部だと思い込んでいた。
彼は、ただ純粋に英国のブラザーに助けを求めていただけだったのだ。

MI6とCIAの間柄は、表面的なママ友の付き合いのようだ。
利害が一致するところでしか、胸の内は明かさない。
付き合いの広さと深さが、その長さに比例する事態は一向に訪れない。

一枚噛んでいるであろう、そのゴタゴタに関して、MI6は一向に情報を共有する姿勢を見せない。
探るにあたってラングレーが寄越したバディは、笑顔がチャーミングなだけの信頼できない男。
そうした状況下で、彼が頼るべき男は一人しかいない。
まともに笑顔を見せたことはないが、MI6に通じていて何より信頼できる結果を出してきた男。
しかも、おあつらえ向きに、その男はMI6を辞めている。
そうしてジェームズ・ボンドに仕事を依頼するのは、フェリックス・ライターにとって最善の選択肢だったのだ。

ラングレーのお友達

僕がフェリックス・ライターを、正確に言えば彼が在籍する組織を訝しむのには、これまでのいきさつがある。

二人が最初に共闘したのは、カジノ・ロワイヤル
しかし、これは本来、共同作戦ではなかった。
MI6に至っては、CIAが参加していることすら知らされていなかった。
ポーカーに勝つ見込みがありながら資金が底をついたジェームズ・ボンドと、潤沢な資金がありながら勝てる見込みの一切ないフェリックス・ライター。
二人が結果を出すために即興で最善策を選択したに過ぎない。

慰めの報酬に至っては、MI6とCIAは敵対している。
正確に言えば、英国政府自体もCIAと同じサイドラインに立っており、ダブルオーセクションのみが蚊帳の外であったわけだが。
兎にも角にも、ジェームズ・ボンドはCIA自身の強襲部隊によって抹殺されそうになる。
先代のフェリックス・ライターたちは、騎兵隊を引き連れて危機一髪のボンドを救出してくれたというのに…

情報源: Quantum Of Solace | James Bond 007

しかし、この時おおっぴらな手助けができないフェリックス・ライターは、本当にミニマムな情報を提供することでボンドの命を救った。
スペクターとクァンタムの関係を知ってか知らずか、そんなことよりもいわゆる国益と呼ばれるもののために邁進するザ・カンパニー。
フェリックス・ライターの上司であるグレゴリー・ビームが失脚したのは、決して取引する組織の悪事が暴かれたからということではない。
一国の政府のクーデターまで黙認しての取引に、単に失敗したからだろう。
フェリックス・ライターの振る舞いは、そうした組織への、ラングレー本社の振る舞いに静かにNOを突きつけることなのだ。
あの英国諜報部員に比べれば、いささか地味な振る舞いではあるが…

It’s a good life,isn’t it?

https://alog4.tumblr.com/post/680553850859634689/just-let-me-go-let-me-go

そうして己の信じるところを守り抜き、昇進も果たした男は、その人生を全うすることになる。
アメリカの友人と英国のブラザーは、仲良く同じケースの中でその役割を終えた。
アメリカの友人が最後に残した言葉は、英国のブラザーが最後に空を見上げた時にも、きっと脳裏に浮かんだことだろう…

思えば、このフェリックス・ライターは、先代のようにジミーとは呼ばなかった。
英国人であるボンドを、ちゃんとジェームズと呼んでいたよね。

ジェフリー・ライトとダニエル・クレイグ

ジェームズ・ボンド役が決定した知らせを買い物中に受けたダニエル・クレイグが、その場でウォッカを買って自らウォッカマティーニを作って祝杯をあげたというのは有名なエピソードだ。
しかもそれは、インベージョンの撮影中の休日のこと。
つまり、ジェフリー・ライトと共演中の出来事だったようだ。

全くイメージが合わないと叩かれ続けたダニエル・クレイグ。
黒人として初めてフェリックス・ライターを演じたジェフリー・ライト。
史上最高の6代目007のターンを作り上げるべく、彼らには、そもそも縁があったのかも知れないね…

コメントを残す