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「007 スペクター」見た人のためのレビュー(1)「女王陛下の007との符合と次回作」

大団円だ。
これは大団円に間違いない。
これまでボンドを苦しめてきた数々の宿敵の黒幕であるSPECTREがようやく姿を現し、そしてそれはボンドによって壊滅に追いやられた。
ブロフェルドは信頼できる男Mによって逮捕され、ボンドは愛する女とめぐりあい、日陰の仕事であるダブルオーエージェントの職と訣別する。
しかし、行きすぎたほどのハッピーエンドは、ちりばめられた女王陛下の007との符合と相まって、次の大いなる悲劇しか予想させない。

女王陛下の007との符合

女王陛下の007では、SPECTREとは別の犯罪組織ユニオン・コルスのボスであるドラコの協力のもと、SPECTREのアジトを強襲し組織を壊滅に追いやる。
そして、エンディングでは、ドラコの一人娘テレサとボンドの結婚式が行われる。

007 スペクターでは、SPECTREと反目しているクレイグ・ボンドシリーズの準レギュラーと言ってもいいMr.ホワイトが、ボンドにSPECTREのアジトの位置を託し、アジトは破壊される。
そして、Mr.ホワイトの一人娘であるマドレーヌと共に生きることを選んだボンドは、ダブルオーエージェントの職と訣別する。

似通ったこの二つの物語は、しかし最後の最後のシーンに決定的な違いがある。
車に同乗し、2人があたたかく走り始めるところまでは共通だ。
007 スペクターは、そこでエンドロールが流れる。
しかし、女王陛下の007では、その後シリーズの中でただ一つしか存在しないシーンが描かれる。
それは、花嫁にするほど愛した女性をボンドが目の前で失うシーンだ。
生き延びたブロフェルドによる銃撃で、テレサは息絶える。

次回作のオープニングは

次のジェームズ・ボンドは誰か?という記事もちらほら見かけるようになってきたが、以前読んだニュースでは、ダニエル・クレイグは合計8作品に出演するという延長契約を締結し、ついにロジャー・ムーア卿の7本に出演という記録を更新する見通しだというものがあった。
また、公開前には、007 スペクターは前後編2部作であるという噂もあった。
となれば、次回作のオープニングは大いなる悲劇から始まるのではないだろうか?
ブロフェルドは生きている。
重要な拠点を失ったとは言っても、それは一つに過ぎない。
それに何より、007 慰めの報酬で正式に政府内からMI6に圧力をかけたような輩は、涼しい顔で紅茶でも啜っていることだろう。
Cは、今回、たまたま偶発的に犠牲になったに過ぎない。
フェリックス・ライターの所属するラングレーのお友達も、損得勘定つきの風見鶏を改めようとはしていない。
ブロフェルドがセカイのあちこちに張り巡らした触手のネットワークは、アタマが逮捕されたくらいでは、いささかのダメージも受けておらず、自らの活動をしやすくするための神輿として、そのアタマを解放するだろう。
そして解放されたブロフェルドは、躊躇せず、ボンドの大切なものマドレーヌを奪うだろう。
それは彼にとって、自らの父親を抹殺するよりは、はるかに簡単な決断だ。
しかも、効果的でもある。

いまだヴェスパーのかさぶたが残っているようなオトコが、目の前でマドレーヌを失うとしたら…
そうして僕らは、シリーズで最もナイーブなクレイグ・ボンドが、深く傷つく姿を目にしなければならないのかもしれない。
彼の立場に立つならば、もう次回作などとは騒がずに、シリーズを封印すべきかもしれないが…

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