フットボールの正しい技術を啓蒙するために、毎週、最高のお手本のプレイを披露した選手を表彰するNFL WAY TO PLAY。
2023 第57回スーパーボウルの受賞者となったのは、カンザスシティ・チーフス CB ラジャリウス・スニード。
対象となったのは、ゾーンカバーからの強烈なタックルだ。
SUPER BOWL LVII – L’JARIUS SNEED
Chiefs CB L’Jarius Sneed takes home the final award.
情報源: NFL Way to Play | NFL Football Operations
フラットゾーンに残ったラジャリウス・スニードはモーションしてきたバックスにドンピシャのクリーンヒット。
あれほどのタックルを受ければ、ボールを保持できるはずもない。
カレッジでシングルハイのSもプレイしていた彼のタックルは強烈だが、クリーン。
ヘルメットを武器にせず、レシーバーをアオテンさせている。
惜しくも判定が覆りインコンプリートになってしまい、ニック・ボルトンに2つ目のTDをプレゼントし損なった。
もし、ニック・ボルトンが20年ぶりにスーパーボウルで守備の選手として2TDをあげていたら、MVP選びはどうなっていただろう?
さらに、このプレイが飛び出したタイミングも絶好のものだった。
前半、イーグルスに時間を消費され、満足に攻撃する時間のなかったチーフスが、後半に入って追撃のTDを上げた直後。
攻撃のつくった勢いをさらにブーストさせるプレイになった。
DC スティーブ・スパグニョーロの辛抱
ラジャリウス・スニードがショートゾーンに残っていたのは、この日、2ディープのゾーンカバーが多用されていたからだろう。
2high safetyはチーフス守備の得意なカタチでありながら、ジェイレン・ハーツのお好みでもある。
The Chiefs have used split-safety coverages on 58.1% of dropbacks this season (incl. playoffs), the highest rate of any defense over the last 5 seasons.
Chiefs Split-Safety Coverage Rate (2022):
🔹 Regular Season: 57.0%
🔹 Postseason: 66.7%#SBLVII | #ChiefsKingdom pic.twitter.com/AjX2XefPdK— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 10, 2023
そうして、ジェイレン・ハーツは、この守備の弱点であるSとCBの間に長いパスを通し続けた。
要所でそこを突かれながらも、DC スティーブ・スパグニョーロは、じっと辛抱していたように見える。
その辛抱は、実っていく。
ショートゾーンに残ったディフェンダーが安易なランアフターキャッチを阻み、DB陣もランサポートに加わっていた。
気持ちよくファーストダウンにたどり着けないイーグルスには、いつもショートヤードが残された。
もちろん、彼らにはQBモールがある。
ジェイレン・ハーツごと押し込んで仕舞えば、ダウンの更新は容易い。
しかし世の中に絶対はない。
小さなミスに大きなミスが重なれば、失点に直結することさえあるのだ。
OLのフォルススタートで残り1ヤードだったノルマは6ヤードになってしまい、ありえないファンブルにつながる。
After a false start puts the Eagles in 3rd & 6, Nick Bolton picks up Jalen Hurts' fumble and runs it back 36 yards for a touchdown.
The Chiefs win probability increased from 27.0% to 54.0% (+27.0%) as a result of the scoop-and-score.#SBLVII | #ChiefsKingdom pic.twitter.com/7CA2FiX8fS
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 13, 2023
さらにファイヤーゾーンの大将は、要所ではブリッツを仕掛けていた。
ブリッツを受けてポケットから逃げ出したジェイレン・ハーツのパスは、並のQB以下のパフォーマンスになってしまうからだ。
そうして、このゲームでは、DC スティーブ・スパグニョーロは3人のLBをラインアップさせることが多かった。
4-3なんてラインアップは、今時スターターの紹介くらいでしかお目にかかれない。
事実、チーフスも6人のDBを多用するチームだった。
The Chiefs defense has used dime personnel (6 DB) on 30%+ of plays in 4 of its last 5 games (compared with 3 of its first 14 games).
The Chiefs defensive success rate against the run has dropped from 56.8% in the regular season to 50.0% in the playoffs.#SBLVII | #ChiefsKingdom
— Next Gen Stats (@NextGenStats) January 30, 2023
もちろん、強力なランニング攻撃を誇るイーグルス対策ではあるだろう。
そして、LBは躍動した。
The Chiefs linebackers were active today, with Willie Gay, Nick Bolton, and Leo Chenal each recording 5 defensive stops.
Their 15 total defensive stops is tied for the 4th-most by a Chiefs LB unit in a game since 2016.#SBLVII | #ChiefsKingdom
— Next Gen Stats (@NextGenStats) February 13, 2023
タックル数で言えば、ラジャリウス・スニードは、S ジャスティン・リードと共にチームの第3位だ。
イーグルスの攻撃時間はチーフスの1.5倍。
そしてチーフスの合計タックル数は68と、イーグルスの47の1.5倍。
何度QBモールで押し切られようと、どれほどドライブを継続されようとも、ひとつひとつのタックルを積み重ねる。
その辛抱がチャンスを生み出す。
そうした姿勢を具現化したものとして、ラジャリウス・スニードのタックルが表彰されたのだと言ったら言い過ぎだろうか…