今回ほどダイヤモンド編隊が似合うフライオーバーはないだろう。
第57回スーパーボウルのフライオーバーは、史上初めて、パイロット全員が女性だったからだ。
今年それが実施されたのには明確な理由がある。
そして女性パイロットだけのフライオーバーは、今回が初めてのことではない。
史上初のそれは、もっとふさわしい場面で行われている。
女性パイロット誕生50周年
1973年、米海軍に初めて女性のパイロットが誕生した。
“The First Six”と呼ばれる6人の女性パイロットが誕生して、今年がちょうど50周年にあたる。
In 1973, the first eight women began flight school in Pensacola, and one year later six of those eight women, titled “The First Six”, earned their Wings of Gold.
情報源: 50 Years of Women Flying in the Navy
ローズマリー・マリナー大尉
彼女たちはキャンペーンガールなんかで誕生したわけではない。
ローズマリー・マリナー大尉は、女性として初めて最前線で戦術攻撃機を操縦した。
しかも空母に乗りながらだ。
後に湾岸戦争が起こると、あの砂漠の嵐作戦で、女性として初めて航空隊の指揮をとった。
ローズマリーという麗しい名前には、ダイヤモンドがよく似合う。
しかし彼女は、それを身につける必要はなかっただろう。
何故なら、きっとダイヤモンドのように崇高で強靭な意志と決意をお持ちであっただろうから…
そうでなければ、道を切り開くことなど出来なかったはずだ。
Missing Man Flyover
だから、史上初の女性パイロットだけのフライオーバーが行われたのは彼女の葬儀だった。
24年間の兵役の間、15機の異なる海軍航空機で3,500時間以上の軍事飛行を重ねた彼女が勝てなかった相手は癌だった。
Honoring the life and legacy of a female pioneer in Naval aviation, the U.S. Navy will conduct Feb. 2 the first ever all-female flyover in Maynardville, Tennessee. Officially referred to as a
情報源: All-Female Flyover to Honor Naval Aviation Pioneer Capt. Mariner > United States Navy > News-Stories
そうして彼女に続くものが、スーパーボウルの新しい歴史をつくった。
もちろん、それは完璧なタイミングで遂行された。
無事に任務を遂行させた彼女たちは、屈託なく笑う。
しかし、柔らかな笑顔の奥には、先駆者と同じダイヤモンドを抱えているに違いない。
沁みるクリス・ステイプルトン
クリス・ステイプルトンの歌うアメリカ国歌は沁みた…
カントリー・ミュージックに造詣が深いわけでもないし、アメリカ国民とそれの結びつきなんて想像もできない。
しかし、高らかに歌い上げるスタイルと違って、じんわり染み入るような歌声は秀逸だった。
スーパーボウルの歴史の中でも、one of the bestと言えるんじゃないだろうか。
.@ChrisStapleton brings the house down with his performance of the National Anthem! #SBLVII pic.twitter.com/iiRzjVcByW
— NFL (@NFL) February 12, 2023
多様性が許される社会だから、いや、多様性を求める社会だからこそ、ひとつの強いアイコンの下に人々は繋がれるのだと思う。
それがなくなってしまえば、残されるのは多様な社会ではなく、ただの混沌だ。
国歌という強いアイコンに聴き入りながら、僕は、ぼんやりとそんなことを考えていた…