「神社に行くのなら、破魔矢をお願い!」
はまや?ハマヤ?なんだっけ?
言われた僕は、それが破魔矢だと思い出すまでしばらく時間がかかった。
そうして、あらためて、その字面を拝むと、とてつもない破壊力を持った兵器に思える。
初めての破魔矢
絵馬もついて1メートルほどの長さもある破魔矢。
思えば、僕はこれまで破魔矢を授与品として求めたことはなかった。
だから、値段、失礼、初穂料がおいくらなのか、全く見当がつかなかったのだ。
ただ、どう見たって立派なしつらえだ。
にっこり笑った巫女さんは、1500円になりますと告げる。
安さにびっくりして、思わず、えっ!と口から出てしまった。
すると巫女さんは、もう少しお安い方がよければ、千円ちょうどのものがありますよと教えてくれた。
とんでもない!
この立派さで1500円なら、とんでもなくありがたい。
こんなに安いとは知らなかった。
これなら、毎年の定番入りは確定だよね。
#破魔矢女子
どうして僕が、破魔矢を求めてこなかったのかといえば、それは女子のものだという勝手な思い込みがあった。
OLD SCHOOLなお正月では、普段は攻めてる女子たちも、そのときだけは晴れ着を着用し、自分にも大和撫子のDNAが健在なのだとアピールしていた。
そんな女子たちが、振袖とセットで忘れずに持っていたのが、大きな破魔矢だった。
破魔矢という名前、その日以外では決して持ち歩くことはないであろう、大きな矢。
そうしたものが、自分たちのカワイイをより強力に演出してくれるためのギャップになるという緻密な計算があったはずだ。
もし、あの時代にインスタグラムがあったなら、#破魔矢女子 なんてハッシュタグが生まれていただろう。
自分のカワイイを演出するためにこだわるDNAは、ずっと不変だ。
Anyway、あのイメージが、スナップショットが、僕の脳裏に焼き付けられて、アレは女子のものという偏見のレンズが装着されることになったわけだ。
魔を打ち破る矢
だが、意図せずとも、それが彼女たちの本意ではないとしても、彼女たちは、それを持っておく必要があった。
なぜなら、それは、魔を打ち破る矢だからだ。
年頃の彼女たちによってくる魔物は、僕なんぞより遥かに多かったはずだ。
しかし、そんな僕でも、魔物に出くわす。
魔物は、そのままの姿では現れない。
大概、ヒトを乗り物にしてやってくる。
乗り込まれた本人は、その意識があるのか、ないのか、わからないが、そのOSはオリジナルのものではない。
第一印象で、その違和感はわかる。
だから、深入りしないようにと身構える。
しかし、時間が経過するうちに、なんだ、そんなに悪いやつじゃないじゃん。
なんて思い始める。
それが、魔物の常套手段なのだ。
そうして、こちらが警戒を解いた匂いを嗅ぎつけると、魔物は、その本領を発揮する…
そうして、こちらは、後悔、いや、消せない悔恨を抱え込むことになる。
一見で、その違和感に気が付いてたはずなのにと…
魔がさすと表現されることが多い。
しかし、僕の実感で言えば、それは、魔に刺されると表現した方がしっくりくる。
破魔矢の先は、鋭く尖っていない。
ゆえに、生き物に放っても突き刺さることはない。
しかし、魔物には、これが効く。
これが、魔物の発する邪気を打ち払うのだ。
だが、あえて言おう。
これで、この破魔矢で魔を刺せ!
付け入る隙を与えずに、No mercyで放て!
それを、その気構えを、ココロにインストールしておくのだ。
そうして、この破魔矢の先が大きいことには、絶大な効果がある。
今ホットなキーワードで言えば、それは抑止力になる。
近づくんじゃあ、ねえぞと、魔物に破魔矢を見せつけるのだ。
もし、近づいてくるのなら、このでっかい矢をオマエに向けることになると。
奴らに大きなアラートを鳴らすのだ。
天候に恵まれた今日は、陽光が心地よかった。
神社からの帰り道、破魔矢につけられた鈴の音が鳴っている。
さらに、絵馬のカタカタとなる音も加わってきた。
そのセッションに、魔物がつけ入る隙などあろうはずもないけれど…



