心からっぽの時に観る映画 第2弾『南極料理人』:ラーメン・クライシス

いい映画ほど、レビュー記事を書くことが無駄な作業に思える。
そして、いい映画ほど、自ら進んで映画館に足を運んでいない。
それらは、たいてい、地上波に流れて来た時に出くわしてしまうのだ。

頭からっぽ、心からっぽモードのときにおすすめする映画第2弾は南極料理人

南極料理人

大きな伊勢海老のフライの料理がプレートに盛り付けられ、その横にビール缶が置かれている食事のシーン

1997年。海上保安庁の巡視船厨房で勤務する主計士・西村淳は、同僚隊員・スズキの代理で急遽、第38次南極地域観測隊のメンバーとして南極大陸のドームふじ基地に派遣された。妻・みゆき、小学生の長女・友花、生まれたばかりの長男を置いての単身赴任で南極にやって来た西村の任務は、冷凍野菜や缶詰などの備蓄食料を使って、ともに越冬する隊員8名分の食事を用意することだった。

南極料理人 – Wikipedia

これもジャッジ!とおんなじだ。
あらすじなんか置いといて、いいから再生ボタンを押して欲しい。

どのキャラクターも、どのシーンも、替えの効かない得難いものだ。
どうしても、ひとつシーンを取り上げるのなら、それは、ラーメン・クライシス。

ラーメン・クライシス

南極の中でも、ペンギンさえも住まない、ウイルスさえも生息できないほどの極地で生活を送らなければならない彼らの楽しみは、食事しかない。
そう、夜食のラーメンも。

だが、ハイペースで消費し続けたツケが回って、早々に備蓄していたラーメンのストックが底をついてしまう。
ここで、ラーメン好きのタイチョーを演じるきたろうの演技は圧巻だ。
彼は、さめざめと泣く。
堺雅人演じる調理人の西村の寝床を就寝時間後に訪れ、部屋に入ることなく、ドアの前で泣き続ける。

「西村くぅん、眠れないんだよ…西村くぅん…」

きたろうの、いや、大の大人の男が、ここまで悲しげに泣くシーンを、僕は他に知らない。

卵はある、小麦粉もある。
しかし、かん水がない…

しかし、南極地域観測隊には、日本の優秀な科学者がいる。
生瀬勝久演じる本さんは、かん水という物質を元素記号に分解し、元素記号から代用品を見つけ出す。
そうして、調理人の西村は、見事に中華麺の手打ちに成功する。

幸福の黄色いハンカチで、網走刑務所から出所したばかりの男を演じた高倉健が、数年ぶりのビールを飲み干し、数年ぶりの醤油ラーメンとカツ丼にがっつく名シーンがあった。

きたろうを筆頭とした、このラーメンのシーンも、日本映画史上に残るOne of the bestといっていい。

劇中に登場する、伊勢海老を使ったエビフライという壮大な心揺さぶられる思いつきは、その期待の大きさに反比例するように残念な結果に終わってしまった。
だが、この映画自体は、頭から尻尾まで旨みが詰まっている。
しかも、反芻できるのだ…

そこらのテリヤキバーガーでも…

振り返ってみれば、僕の人生の中でのベストランキングには、映画館で鑑賞していないものも多く含まれる。
ジャッジ!も、これも、その中のものだ。

南極の奥地で生活するむさ苦しい男たちのニチジョーなんて、それを観るまでは、面白さが想像できないのだ。
そうして見逃してしまった名作たちを、誰かさんが、これはいい作品ですよと放送にかけてくれる。

もしかしたら、いい映画に出会うためには、専門チャンネルのようなものが流してくれるものを、食わず嫌いせずにそのまま、その時間に飲み込んでしまう方がいいのかもしれないね。
あるいは、Netflixのダッシュボードに表示されたものを、詳細など確認せずに再生してしまえばいいのかもしれない。

どうせ、あっちこっちの詳細を眺めるうちに映画一本くらいの時間は過ぎてしまうんじゃない?
吟味したって、伊勢海老のエビフライのように裏切られてしまうこともある。
それならば、誰かさんがテキトーに買って来てくれたテリヤキバーガーに、忘れられない美味さを見つけられるかもしれないじゃない…

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