「The Wall」法治国家のアキレス腱:25年目の9/11

前回の記事に続いて、10カ国で1,200人以上へのインタビューを行い、250万ページに及ぶ膨大な文書を精査するという極めて大規模な調査を実施した、9/11調査委員会の報告書を中心に、Deep Researchを決め込んだGeminiに、もうひとつの疑問をぶつけてみた。

アメリカには、CIAとFBIという、世界に名だたる機関がある。
どうして、あんな大規模攻撃を、彼らは事前にキャッチできなかったのか?

Theyの回答は、法治国家の弱点を、アキレス腱を射抜くようなものだった。

CIAとFBIを分断するThe Wall

CIAは、事前に情報を掴んでいた。
しかし、FBIには、その情報は共有されなかった。

何故かって?
それは、お役所同士の縄張り争いなんかのせいじゃない。
厳格な法律の運用ルールが、The Wallとなって情報を分断したのだ。

分断された防衛網:インテリジェンスと法執行

冷戦期の米国では、市民のプライバシー保護と権力集中の排除を目的とし、組織の管轄が厳密に分けられていました。これがテロ対策において致命的な盲点となります。

CIA(中央情報局)

  • ミッション:「外国諜報(Intelligence)」
  • 領域:海外での情報収集。
  • 手法:監視、傍受、スパイ活動。米国内の市民・入国者に対する刑事捜査権限は持たない。

FBI(連邦捜査局)

  • ミッション:「刑事捜査・法執行(Law Enforcement)」
  • 領域:米国内の犯罪捜査。
  • 手法:司法令状に基づく証拠収集、逮捕。犯罪が起きる、あるいは疑いがある場合のみ動く。

制度上の欠陥:情報共有を禁じた「壁(The Wall)」

CIAなどの海外諜報機関が収集した暗号化情報や容疑者リストは、国内で司法令状を用いて刑事捜査を行うFBIの捜査部門に対して、法的な解釈から自由に共有できない仕組みになっていました。

悲劇の分岐点:見逃されたハイジャック犯(アル・ミハダール)

  • 容疑者:アル・ミハダール
  1. 2000年初頭:CIAの捕捉
    • CIAは、アル・ミハダール(後の77便ハイジャック犯)がマレーシアのテロ会議に出席したことを把握。米国のマルチプル入国ビザを持っていることも知っていた。
  2. 情報共有のブロック
    • しかし、この重要情報は「壁」の規定により、FBIニューヨーク支局の国際テロ刑事捜査部門には伝達されなかった。(STOP)
  3. 2001年夏:国内潜伏
    • ミハダールは堂々と米国に入国し、国内でハイジャックの準備を進める。
  4. 2001年8月:捜査の却下
    • 直前になり情報の一部がFBIに漏れるが、FBI本部は「壁」の厳格な解釈を理由に、刑事リソースを使って彼を米国内で捜索することを禁止した。

事件発生13日前の捜査禁止命令

  • 経緯:CIAから「ハリド・アル・ミハダール(のちのハイジャック犯)が米国に入国している」という情報がもたらされた際、FBIニューヨーク支局のテロ専門捜査官は、直ちに彼を捜索しようとしました。
  • 本部の捜査禁止命令:しかしテロ直前の2001年8月29日、FBI本部は刑事捜査と諜報活動を隔てる法的な「壁(The Wall)」を厳格に解釈し、ミハダールの捜索に刑事捜査のリソース(人員や予算など)を投入することを公式に禁止(却下)しました。

この決定に対し、現場の捜査官は「いつか誰かが死ぬことになる。なぜ目の前にある問題を解決するために全リソースを投入しないのか、一般市民は決して理解できないだろう」という予言的かつ痛烈な警告メールを本部に送っていましたが、聞き入れられませんでした。

法治国家のアキレス腱

何事も法によらなければ、手続きによらねば、物事を進められないのが、まともな法治国家だ。
そうしてそれは、アキレス腱のようになる。

だが、攻撃を仕掛けてくるのは、そんなまともな連中じゃない。
法治国家を名乗っていても、そんなのは、あとづけだ。
テメエ勝手な正義と道理を振りかざし、ただの民間人虐殺を聖戦に仕立て上げようって連中なのだ。

この種の生き物に共通しているのは、他者の存在を著しく軽んじるということだ。
だから、キチ反対キチが、僕の知っている「平和」とは違う類の「平和」を振りかざし、ただ仕事をしていただけの警備員や、ただ修学旅行に来ただけの学生の命を奪っていることも驚くべきことではないのだろう。

高速鉄道爆破未遂事件

9/11を対岸の火事のように思っていたら、同じころ、日本でも、アルカイダが新幹線を狙った爆破テロを起こそうとしていたと知って驚いた。

CIAから警察庁への情報提供により、公安部指揮下で生活安全部が実際の逮捕にあたったらしい。

「建設会社に勤務する者や飲食店で働く者、コンビニの店員もいました。中には、ビザの期限が切れて、オーバーステイの者も。彼らは、埼玉県戸田市や板橋区などのアパートに住んでいました」

日本もアルカイダに狙われていた‥元公安警察官が初めて語る「高速鉄道爆破未遂事件」(全文) | デイリー新潮

未然に防止できたことで、長い間、オープンにする必要もなかったのだろう。

だが、僕がもっと驚いたのは、その顛末だ。

「逮捕された3人は、裁判で罰金刑が下り、国外退去処分となりました。残る2人のテロリストは、行方がわからなくなりました」  

当時は、テロ等準備罪法(2017年7月施行)がなかったため、テロの計画段階での逮捕ができなかったという。

日本もアルカイダに狙われていた‥元公安警察官が初めて語る「高速鉄道爆破未遂事件」(2ページ目) | デイリー新潮

爆破テロの計画者が、罰金刑だけで済むの?

テロ等準備罪法が施行されたと言っても、刑期は、いいとこ5年だ。
日本にも押し寄せてきたダイバーシティの波が、テロリストの皆様にも生きやすさを提供できているのだろうね、きっと。

法治国家のアキレス腱を自覚したアメリカは、法治国家らしく、即座に法と制度を改正した。
もう、2度とこんなことが起こらないようにと。

我が国日本も、法治国家の端くれだったはずだが、もう80年以上前にあてがわれた法律を1ミリも変えられずにいる。
アキレス腱どころじゃない、あちこちに弱点を晒したままなのに…

アメリカは、ツインタワーを双子とも失うことで、誤りを自覚し、正そうとした。
唯一の被爆国である日本は、もう一度、被爆しないと身にしみないというのだろうか。

そのときは、もう国ではなく、日本自治区と呼ばれていることだろう。
もっとも、議員バッジと税金も、もらいながら国会で活動してるエージェントの皆様におかれては、それこそが望むところなのかもしれないが…

あのときのFBI捜査官の警告が現実のものになるのには、たいして時間はかからなかったはずだ…

「いつか誰かが死ぬことになる。
なぜ目の前にある問題を解決するために全リソースを投入しないのか、一般市民は決して理解できないだろう」

コメントを残す