Apple TV+「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」のシーズン1が終了した。
ポジティブな彼のおかげでスイートな結果を迎えたいくつかのことがあった。
しかし、プロとして最も重要な成績は、重たくビターなものだった。
引き分けなんて妹とキスするようなもの
アメリカンフットボールをよく見るあなたなら耳にするこのフレーズ。
曰く、そんなに味気ないものはないぜという意味らしい。
初めて聞いたときは意味がわからなかったし、いまだに肌感覚ではふに落ちたとはいえない。
引き分けでも降格を逃れることができる状況にテッド・ラッソはゲキを飛ばす。
「誰も妹にキスなんかしたくないだろう⁈」
そしてキョトンとする選手たち。
英語圏では、そのフレーズは共通だと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。
英語を話す人々と、そこから派生した米語を話す人々のちょっとしたカルチャーギャップを取り上げてきたこのドラマならではのものだ。
テッド・ラッソは、紅茶にも炭酸水にも馴染むことができなかったが、共通言語であるダーツでは10歳の頃から父親仕込みで鍛えられた凄腕を発揮していた。
ラッソ・スペシャル
マンチェスター・シティという圧倒的な相手を迎えるにあたってテッド・ラッソは、ありったけのスペシャルプレイを用意する。
そのうちのひとつ、ラッソ・スペシャルは、まさにラッソならではのもの。
ゴールーキーパーをQBの位置に配置したスプレッドフォーメーション。
そこからマンインモーションもオーディブルコールもある。
どんな競技でも、マンインモーションで動く相手をカバーすることは難しい。
さらに、インテリアラインマンという存在がないサッカーでは、ゴールーキーパーを除く10人が全てレシーバーになりうる。
これが一斉に散るのなら、正真正銘のショットガンということになる。
YOU’LL NEVER WALK ALONE
終了間際でまたもひっくり返されるという痛い敗戦に、スタジアムの空気は重たく沈む。
選手もコーチングスタッフもフロントも、そしてサポーターも、ひとしくその悲しみにうちしがれる。
そこに流れるのがこの曲だ。
サッカーに明るくない僕には、この曲の歴史も、どのような場面がふさわしいかも腹に落ちていない。
しかし、大きな悲しみに直面したとき、とても一人では耐えられないそれに直面したときに、これ以上ふさわしいものはない。
これを、あなたや私のために歌うのだ。
簡単には金魚になれそうもないときに。
そういえば、東日本大震災のときも、海外のサポーターがこの曲を贈ってくれていたっけ…
捲土重来
制作が決定したこと以外、シーズン2の情報は全くない。
しかし、その内容は予想できる。
しかも、日本語として。
それは捲土重来だ。
チームを失敗させるために雇われたテッド・ラッソは、今やチームを成功に導くために必要とされている。
Coach ビアードと昇格したネイトは、サッカーに未熟なテッド・ラッソの脇をしっかり固めてくれるはずだ。
プライベートでは、相当にクセのある二人だが、そこはテッド・ラッソの大きな包容力がモノをいう。
ま、彼自身もクセは強いのだが…
Anyway、ラッソ Wayは選手にもフロントにもサポーターにも、そして新聞記者にも浸透したはずだ。
リッチモンドという街が、彼にとってホームになっているかアウェーになっているかはシーズン2のお楽しみだろう。
いずれにせよ、シーズン1の興味本位のカウボーイ扱いじゃなくなっていることだけは確かだよね。