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大滝詠一「ロンバケ」40周年とふたつのとびら

大滝詠一サブスク解禁!
なんてニュースを目にして、なんで今頃?と思ったら、今年は、A LONG VACATION発売40周年になるらしい。
ひとつのアルバムが40年後にアニバーサリーを祝ってもらえることなんて聞いたことがない。
しかし振り返ってみれば、僕にとってはそれに値する、いやそれ以上に大きな存在だと気づかされた。
だってそれは、今の僕につながるふたつのとびらを開いてくれたのだから。

情報源: 大滝詠一 | A LONG VACATION 40th Anniversary Edition

姉貴のススメ

情弱どころか、ただの小僧だった僕がこのアルバムを手にしたのは自らの意思ではない。
UC0080の終戦協定でピリオドを打ったばかりのガンダムに熱中していた僕が聴いていたのは、そのサントラばかり。

TVアニメ『機動戦士ガンダム』のオリジナル・サウンドトラックの復刻が決定した。当時の装いのままLPで復刻し、レコードの日である11月3日に6タイトルがリリースされる。

情報源: 「機動戦士ガンダム」サントラが当時の装いのままLPで復刻! 安彦良和の美麗イラストに注目 | アニメ!アニメ!

「あなたも、そろそろこういうものを聴きなさい」
と半ば強制でレコード店で買わされることになった。
お姉さまという生き物は、相手の意見などIMFよりも関知せず、自らの好みを押し付けぐいぐい引っ張っていく。
オールタイムお姉さまのユーミンが、ひところニッポン文化を引っ張り上げていたように。

アートのとびら

中身など、その音楽など想像できようもない僕の目に飛び込んできたのは、鮮烈なジャケットのアートだった。

情報源: 大滝詠一 | A LONG VACATION 40th Anniversary Edition

それまで僕が触れたことのない感性に、何か弾ける感覚があった。
そのイラストレーターが永井博という日本人だと知り、驚きもあったが納得感もあった。
お洒落とかポップとか、そういう薄皮の下に、独特の寂寥感が透けて見えたからだ。
そして、その感覚は楽曲を聴いた時にも感じるものだった。
そういう意味でも、このジャケット・アートワークと楽曲が一体となって「ア・ロング・バケイション」というアルバムが成立しているんだと実感する。
当時はLPレコードであったということも幸いだった。
配信のアイコンやCDのサイズでは、そうしたインパクトを感じることができなかったはずだ。

そうしたジャケット・アートワークの重要性も鑑みてのことだろうが、「コラボレーション・ポスター」企画もある。

『ロンバケ』発売40周年を記念して、大滝詠一やアルバム『A LONG VACATION』と縁のある4人のイラストレーター・漫画家の皆様に「ロンバケ」ジャケットをモチーフに描いて頂いたイラストによる、コラボレーション・ポスターを作成頂くことになりました。

情報源: 大滝詠一 | A LONG VACATION 40th Anniversary Edition

絵の大部分があらかた出来上がって、最後に残ったのが彼女が手にもつレコードでした。この絵の全制作時間の半分か、もしかするとそれ以上は実は、レコードジャケットそのものにかかりました(笑)。一見スキャンして貼り付けただけに見えるかもしれませんが、パソコン内でいちから描いたものです。絵の全体で見ると小さいですが、そこはパソコンですのでいくらでも拡大できます。模写してみると永井博さんの絵は非常に論理的で明解な手法で描かれているのがわかります。永井さんが描く手順通りに描いていくのは楽しかったですが、手にして以来何度も眺めたこの絵を、40年経って模写しているのが不思議な気もしました。

情報源: 江口寿史、大滝詠一「ロンバケ」40周年に寄せたポスター執筆「日々のオアシスでした」(コメントあり) – コミックナタリー

そうして僕はアートだとかカルチャーだとかそういったものへの関心が芽生え、当時、西海岸を聖地とするPOPEYEも目にするようになり、リーバイスとLeeはどう違うのか、コンバースとPRO-Kedsはどっちがいいかなんて知識も手に入れるようになった。
プレッピーの大波で東海岸に打ち上げられるとメンクラに手を出し、「街アイ」にかろうじて後ろ姿で登場することができた。
いま僕が身につけているものの源流も、Tumblrに潜ってアートのようなものを楽しめる感覚も、あのジャケット・アートワークが扉を開いてくれたからだと、だいぶ時間が経ってしまった今ならよくわかる。

音楽のとびら

いつ聴いても古さを全く感じることなく楽しめる。
古い楽曲は、たいてい聴いている頃の思い出や記憶あるいは感情を反射的に呼び起こす。
しかし、不思議なことに、このアルバムはそうしたことが一切ない。
いつも、今なんだよね。
長年聴き続けていて、もう特定のトピックスに紐付けできないからなのか。
その理由は見当もつかないが、聴いているのはあの時の自分ではない。
いつだって今の自分なのだ。

Anyway、こうして僕は音楽の良さを体験することになった。
アニメのサントラではなく、アイドルの今の新曲でもなく、まして知ったかぶりの洋楽でもなく。
音楽への扉も、このアルバムが開いてくれたのだ。
そうしてナイアガラ・トライアングルを通じて、佐野元春へ導いてくれた。

40年という時間

「お前は、そのアルバムを40年も聴き続けるんだぜ」
と伝えたら、あの頃の自分はどんな反応をするんだろう?
40年という時間が実感できない小僧は、ただただうなるばかりだろうか。
40年という時間は、歌詞というものがただの美しい言葉の集まりではないと気づくのに充分な時間だ。

過ぎ去った過去
しゃくだけど
今より眩しい

そんな歌詞に強い実感を感じるようになるなんて、彼には告げないほうがいいのかもね…

日本の音楽シーンに燦然と輝く歴史的名盤「ロンバケ」の発売40年を記念して『A LONG VACATION 40th Anniversary VOX』と『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』2021年3月21日発売!!

情報源: 大滝詠一 | A LONG VACATION 40th Anniversary Edition

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