Wastelandを爆走するモンスターマシンのコンボイ。
それこそを大スクリーンで観るべきだと思って劇場に足を運んだ僕だった。
だが、意外にも、それよりも僕を捉えて離さなかったものがある。
それは、彼女の瞳だ。
マッドマックス 怒りのデス・ロードの後悔
決してマッドマックスのファンとは言えない僕は、前作、マッドマックス 怒りのデス・ロードを配信で観た。
観る前は、正直、まだやってるの?という感想しかなかった。
ジョージ・ミラーもネタに詰まって、まだマッドマックスをやっているのか…なんて思っていたのだ。
ただ、余計な伏線なんか考えずアタマ空っぽで観るにはちょうどいいだろうくらいの感覚でクリックした。
そうして僕は、ぶっ飛んだ。
広大なWastelandを爆走するモンスターマシンのコンボイに乱舞する炎とウォーボーイズ。
スペクタクルなサーカスのようでもあり、剥き出しの叙事詩でもある。
そしてそれは、硬質なラブストーリーでもあった。
こうした映画こそ、劇場で大スクリーンで爆音で見るべきだったのだ。
そして、マッドマックス 怒りのデス・ロードが着想から実に20年をかけて公開されたことも初めて知った。
バイクのレギオン
その迫力を余すことなく体験しようと、僕には珍しくシアターの前部ブロックに陣取った。
そんな僕の期待に違わず、プリミティブでパワフルなモンスターマシーンの数々が披露される。
今回、特徴的なのはバイカーズの存在だ。
ディメンタス率いる「バイカー・ホード」は、暴走族とひとくちにいうには、その数がおびただしい。
まさしく、バイクのレギオンだ。
そして、ディメンタスの愛車はチャリオット。
バイク3台立ての戦車は、馬に置き換えれば何馬力になるのだろう。
Wastelandという荒野では、野生動物なんかよりもMotor Beastsの方が、遥かにしっくりくる。
フュリオサの瞳
Motor Beastsの暴れっぷりは期待通りだった。
だが、予想外だったのは、彼女の、フュリオサの瞳だ。
「子産み女」にされそうになるまでは、その美しい青さがインプレッシブだった。
しかし、自ら道を切り拓くために一歩踏み出して以降、彼女の瞳の色はぐーんとダークになっていく。
だが、反比例するように、その輝きは、一層強くなっていく。
シン・仮面ライダーを劇場で観たとき、大スクリーンにアップになる浜辺美波の美しさを初めて認識し、見惚れてしまった。
それまで、小さなディスプレイで見ているだけでは、それを認識することができなかったのだ。
それは、今回もそうだ。
いくら予告編を見ていても、フュリオサの、 アニャ・テイラー=ジョイの瞳が、あれほどに美しい輝きを放つなど認識していなかったのだ。
だから劇場の大スクリーンでの最大の収穫は、彼女の美しくも強い眼差しに魅入られたことだ。
Wastelandとのコントラストが、その美しさを、より一層際立たせているのだろう。
北斗の拳とのコラボで原哲夫が描いたフュリオサのイラストも、特徴的な目が、しっかいと描かれている。
全人類待望!世界初の伝説的コラボが実現! 『マッドマックス:フュリオサ』×『北斗の拳』・原哲夫 主人公フュリオサの描き下ろしイラストが解禁!
予想外といえば、マクシミリアン・ロカタンスキーが、お馴染みのV8インターセプターとともに登場していた。
ただの傍観者としての出演だったけれど…
ちなみにトム・ハーディーではなく、彼のスタントダブルのJacob Tomuriが出演していたようだ。
ディメンタスのテディベア
クリス・ヘムズワース演じるディメンタスは、どこか憎めないところがある。
もちろん、残忍な振る舞いはするし、何しろフュリオサの母、メリー・ジャバサの命を奪った張本人ではある。
だが、イモータン・ジョーのそれとは違う。
何しろ、まだテディベアを手放せずにいるのだから…
妻とともに亡くしてしまった娘が持っていたテディベア。
彼は、それを捨てられずにいるのだ。
世界が崩壊した後、資源が枯渇するよりも早く失われてしまったであろう、ある種の人間性を、彼は失っていない。
家族を失ったあの日以来、彼は生きているのではない。
死んでいないだけなのだ。
だから、「バイカー・ホード」もリーダーになってしまっただけなのだろう。
だが、イモータン・ジョーは違う。
この世界を生きていく決意をしたはずだ。
そうしてシタデルを作り上げ、インフラを整え、「子産み女」も整備して子孫繁栄に精を出す。
決意してリーダーになった彼は、ウォーボーイズという命を投げ出すことを厭わないコマまで作り上げた。
余計なことを口にせずとも動く統率の取れた集団は強い。
所詮バイカーズの寄せ集めの集団は組織とはいえない。
リーダーになりきれていないディメンタスは、いちいち、長ったらしいスピーチをしなければならない。
そうして容易く造反者を生み出してしまう。
だが、致し方ない。
ディメンタスは、死ぬまでの時間つぶしをしているだけなのだから…
そんな男が、フュリオサに勝てるはずもない。
彼女は、決意をしているのだから。
あの日のことを、その美しい瞳に焼き付けて以来、なすべきことを成して今日まで生きてきた女なのだから…
Furiosa: A Mad Max Saga (2024)
そして、その決意は、The Green Placeに帰るまで揺らぐことはないだろう。
母との約束の、あの緑の地は、ずっと彼女を待っていてくれるはずなのだから…