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ハイキュー!!第16話「勝者と敗者」見た人のためのレビュー「全てのフツーの部活生のために」

ふとしたタイミングで目にしてしまったハイキュー!!にすっかりどっぷり魅せられてしまった。
往年のスポ根もののように「ど根性」を豪快にばらまくようなものではない。
小さな一歩を出すことへの恐れと不安、そして勇気が丁寧に繊細に表現されている。
そしてその小さな一歩を踏み出すための大きな決断をする姿にグッと引き込まれていく。
主軸となる二人が物語の軸ではあるが、チーム全員それぞれの物語が丁寧に描かれている。
そして16話は、ぐんぐん成長していく主人公達でもなければ、立ちはだかる強烈なライバル達でもなく、脇も脇、エキストラのような弱小チームの視点で物語が進む。

弱小チームの最後の大会

三年生にとって最後の大会、それは弱小チームにとっては、あと1試合で部活が終わってしまうことを意味する。
弱小チームの自覚はしっかりあるのに、それでも勝ちたい。
全国大会など現実のそのまた向こうで、頂点なんてとんでもない、いつか必ず負けることはわかっている。
それでも勝ちたい。
もうちょっとこの時間が続いて欲しいんだ。

部活とスポーツと

その競技を選ぶということと、その部活に入るってことは、全く同じとは言えない。
もちろん、そのスポーツがやりたくて、しかもその学校のチームに入りたくて飛び込んでいくものもいるだろう。
しかし、大半は、縁と弾みとタイミングでなんとなく始めてしまった部活動ってとこじゃないんだろうか。
好きだから始めたというより、始めてみたら好きになってしまったという感じの。
この16話は、僕の過去に溜まったホコリを吹き飛ばし、決して強豪ではない部活やってた頃の、あの自分に引き合わせてくれた。

ラグビーなんて全く縁のなかったものを始めるようになってしまったのは、友達の体験入部のお付き合いだった。
当時、他の部から借りてこないと15人揃えられなかったラグビー部は勧誘がしつこかった。
僕はノーマークだったが、友達は毎日のように誘われ、一度体験入部してくれたら、もう勧誘しないという約束をすることになった。
たまたま、その場に居合わせた僕は、なんとなく流れで付き合うことになってしまった。
1日やって泥だらけになり、貴重な体験だったけど、とてもじゃないが3年間もやれるものか、高校生活はエンジョイするんだ!という固い決意のもと3年生のキャプテンに「やっぱり正式には入部しません」と伝えたら、「体験入部ってなに?聞いてないけど」とはめられ、そのままずるずる続けることになった。
勧誘した同級生は、キャプテンの後ろでニヤニヤしてたなぁ…

陸上部からやらかき集めたメンバーでも試合に勝つこともあり、負けると普段は陸上やってる先輩ほど、大泣きしたりしてた。
いつの間にか、部員を借りなくても自前で試合もできるようにもなり、その頃はラグビーも好きになっていた。
自分たちが何かの原石だとも思えなかったし、いやそもそも原石がどういうものかも知らなかったし、磨き上げる方法も的外れで適当で根性なしだった。
それでも、最後の大会は長く続けたかった。
しかしあえなく強豪校のひとつにベストなんちゃらを賭けたところで敗れてしまった。
スコア的には、そこそこ肉薄したんだけどねぇ…
ま、そんな強豪相手に勝てるはずもないよなと冷静にとらえながらも、それでも勝ちたかったなぁ…
常波高校を見ていたら、そんな昔のことがフラッシュバックしてきた。

誰も知らない学校で、成績とも呼べないリザルトしか残せず、誰かに「なんか部活やってたの?」と聞かれるたびに、ええまあとか、一応とかの枕詞をつけながらごにょごにょ話して、ふーんと流されるだけのリアクション。
まあ別に、今のために、将来のために部活やってたわけじゃないんだよ。
もう細かくは思い出せないけれど、あの頃、得難い時間の中にいたことだけは確実に覚えてる。
指折り数えられるほどのベストプレイは、その光景も感覚もまだ覚えてる。
それで十分だよな。
「私たちも、俺たちも、やったよ」
そう胸を張っていればいいじゃないか。

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