Apple User / iPhone

Apple 渋谷でiPhone修理「つながらない3時間」

ほぼ5年ぶりにiPhoneの修理が必要になった僕が向かったのは、渋谷のApple Store。
そうして僕は、つながらない、しかし、濃密な時間を過ごすことになった。

背面ガラスの損傷

僕が使っているのは、iPhone 15 Pro Max。
iPhone 13 miniは、ずっと裸族で通して、修理の憂き目に遭うこともなかった。
しかし、大きくサイズアップする不安から、ケースは着用していたのだ。
だが、所詮は裸族。
試しにケースを外して使っていると、やっぱり具合がいい。
何度か落下させてしまったけれど、iPhone 15 Pro Maxは無傷だった。
これなら裸族でいけるよねと思っていた矢先、また落としてしまった。
どうせ無傷だろうと拾い上げると、背面ガラスにヒビ割れがある。
落とした角度と当たりどころが悪かったのだ。
やれやれ、こうならないようにケースを買ったはずなのに…

目の前の快楽に溺れる、浅はかな自分を呪いながら、状況を確認すると、損傷したのは背面ガラスだけで、それも大きなヒビ割れでもない。
そのままケースを着用してしまえば、騙し騙し使っていけそうだ。
だが、もし、何かのアクシデントで水分が入ってしまうとシリアスなめんどくさい状況に陥ってしまうかもしれない。
こりゃ、元気に稼働してるうちに修理しておくかと、重い腰を上げることになった。

あんしん保証パック with AppleCare Services

僕はまだSoftBankユーザーなので、AppleCareもSoftBank経由で加入している。
もし、AppleCareに加入していなければ、背面ガラスの交換だけでも29,800 円の費用が発生することになる。
だが、AppleCareのおかげで、それは3,700 円に抑えられる。
それに、一旦は自分で支払う必要があるが、この3,700 円は、後々、SoftBankが補填してくれる。
補填されるのは現金ではなくPayPayポイントになってしまうけれど、別途申請する必要がない。
Apple Storeで修理を受けて料金を支払えば、自動で処理され通知が届く。

そうして10日も経たないうちに、PayPayポイントは付与された。

Apple 渋谷

修理予約もApple サポートアプリを使えば簡単だ。

Apple サポート

近場のGenius BarとApple正規サービスプロバイダの位置と空き時間の一覧を表示してくれて、そこから簡単に予約することができる。

僕が選んだのは、Apple 渋谷。
何度もお邪魔してお世話になってるし、こじんまりとしてて、あんまり混雑していない。
この日も、予約しやすかった。

お近くのApple Store – 渋谷 – Apple(日本)

前回は、COVID-19なセカイで予約なしで突撃したことを思えば、予約の入っている今回は、僕の気持ちはJust フラット。
さざなみさえも立たない穏やかさだ。
テキパキとしながらも明るく快活なスタッフさんのおかげで、流れるようにコトは進み、あっという間に修理の受付は完了した。

「それで、ですね…」
彼女の顔が急に曇った。
「お渡しするのが、3時間後になります…」

以前の本体丸ごと交換修理の選択肢しかなかった頃と違って、今では背面ガラスだけを交換できるようになっている。
その作業時間は、かかってしまうのだ。
どうせ、こちとらPayPayポイントで補填される身。
一時払いの料金は上がってしまうが、本体丸ごと交換修理に変更できないかと尋ねてみたが、「管理が厳しくなっておりまして…」と辛そうな返事が…

奇しくも、僕は前日、onlineのApple StoreでUSキーボード付きのM3 MacBook Airを発注済みだった。
そうだ、そうだ。
実機を確認しておこう。
ミッドナイトの色合いや、キーボードの打ち心地を試してみよう。
そうやって、時間を使えば…
いや、いかにガジェット好きのディズニーランド、Apple Storeにあっても、とても3時間は消費できそうにない。

そうだ、映画でもと思ったが、この日、僕はApple 渋谷に来る直前に、話題の機動戦士Gundam GQuuuuuuXの第1回目の視聴を済ませてきたばかり。
ただでさえショック状態の上に、1日に2度もゼクノヴァに遭遇したら、僕までキラキラの向こう側で消失してしまう…

Apple Vision Proのデモ

すると彼女が、こう切り出した。
「実は、Apple Vision Proのデモのキャンセルがあって、枠が空いたんです。体験されますか?」

あまりに先進的すぎて、かつ高額なために、僕のApple欲しいものリストの圏外にも入っていない、僕とは縁のないものと思っていたApple Vision Proのデモ?

きょとんとする僕に、彼女は、こう付け加えた。
「いや、全然、すぐ買ってくださいって話じゃないんです。体験してみて欲しいんです。」

30分程度の時間が必要になると言われて、まあ、30分程度の時間が潰せるならありがたいと思ってお願いすることにした。

その体験は、凄まじかった。
バーチャルリアリティーという言葉があるが、この体験を表現するならリアルリアリティー。
没入感なんてもんじゃない。
本当にキラキラの向こう側に行ってしまいそうだ。
目の前の子供達のセーターの毛先が感じられる。
バースデーケーキのローソクの炎の温度まで体感できるような気がする。

この世界が普及していくのなら、ディスプレイのサイズがどうしたとか、外付けディスプレイがどうしたなんて話は吹き飛んでしまう。
映画だって劇場体験を上回ってしまうだろう。
それに何より、家族の思い出が、真空パックされた状態で保存できるだろう。
もし、この空間ビデオで家族の全てが記録できていたなら、人が死ぬという概念が、またも揺らぎそうだ。

デモを担当してくれたスタッフさんも、まずは買って欲しいというより、体感して欲しいんですよねと、しみじみと言っていた。
確かに、これは体感する以外には、理解できない。
どんな仕組みでこれが実現しているのかは理解できないが、すごいことだけは実感できる。

「よくわかんないけど、なんかわかった!!!」

そう叫びたくなるのを、僕はグッと我慢した。
この体験は、僕にとって、この日2度目のゼクノヴァになった。

時計もねぇ電話もねぇ

ホクホクしながらApple Storeを後にしたものの、僕には、後2時間半という長い時間を消費しなければならないという大役がある。
そうだ、散髪いこう。
馴染みの床屋は、隣の恵比寿。
電話して予約しよう。
あれ、電話がない…

そうだ。
iPhoneは、Apple Storeで絶賛修理中なのだ。
そうして、よく考えてみれば、PASMOもない。
電車に乗れないコトはないが、切符を買うのかい?
やれやれ、どれくらい時間が経ったのかと思ったが、時計もない。

全てiPhoneに委ねた生活は、それが手元から離れたことで、のっぴきならない状態になってしまった。
繋がっていたのはWi-Fiだけじゃない。
iPhoneがないことで、僕は社会のインフラにもつながることができなくなってしまった…

そうして僕は、渋谷の街を彷徨うことになる。
かつてはホームだったが、絶賛トランスフォーム中の街は、すっかりアウェイになっている。
知らない高層ビルの明かりが煌めいて、どこもかしこもスタバになってしまった。
キャピキャピしたギャルの声の代わりに、知らない外国の言葉が、あちこちで飛び交っている。
そうしてスクランブル交差点では、一斉に記念撮影を始め出す。
挙句に結婚式の前撮りさえも行われていた。
その様は、スクランブルというよりカオスだ…

時間潰しの最後の砦、ゲーセンに足を踏み入れてみたが、ビデオゲームはどこにも見当たらず、軒並みクレーンゲームに制圧されていた。

そうして街には、時計がない。
以前は、どこかしらにパブリックな時計が存在していはずだが、その姿は一切見当たらなかった。

僕に残された時間を確認する唯一の方法は、電器屋に陳列されたPCのメニューバーだけだった。
これが、Apple Watchを買っておきなさいなというデモだとしたら、その効果は絶大というものだ…

ただ、この時間、繋がっていない時間に懐かしさを感じた。
一切ディスプレイを眺めることなく、久しぶりに街のツラをしっかり拝んで歩いた時間。
SNSのTLではなく、街の空気をたっぷりと吸い込んだ時間。
昔、そのようにして、この街を歩いていたのだ。
あのBARさえ残っていれば、昔と同じように1日を締めくくることが、いや、正しく夜を始めることができたはずだった。
もっとも、いそいそとiPhoneを受け取って、ディスプレイにのめり込むような男には、正しく夜を始めることなど、もう、できるわけもないだろうが…

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