ジョン・ウィックの世界で、ずっと気になっている存在が二つある。
ひとつは、管理部。
そして、もうひとつは制服警官のジミーだ。
事務方の「管理部」
主席連合を頂点とした社会を、事務方として支えているのが管理部だ。
事務方の伝統に倣い、彼らは制服着用で働いている。
薄いピンクのシャツとグレーの制服。
あちこちに顔を出すタトゥーとヘビーなピアッシングだけが、僕たちThe other sideの一般企業との相違点だ。
寡黙で迅速な仕事ぶりは、何ら変わることがない。
いや、彼らの方がはるかに優秀かもしれない。
相違点は、もうひとつある。
それは、彼らのインフラが、レトロやクラシックという柔らかな表現を通り越して、まさしく旧式であるという点だ。
リンリン鳴り響くダイヤル式の電話機で、音声通話でしかコンタクトを取ることができない。
情報がストックしてあるのはデータベースなどではなく、文書と写真で構成された紙のフォルダーを整然と並べた、まさしく正真正銘のライブラリー。
その文書にしたって作成に用いるのは、手動式のタイプライターだ。
指示を受けた管理部レディー(HeかSheかTheyかは不明)が、検索の必要もなく迅速に見つけ出すファイルには、マネージャーが承認のスタンプを押す。
そうして更新された共有されるべき情報は、巨大な黒板にチョークで書き込まれるのだ。
彼らもコンピューターは使ってる。
しかし、パーソナルコンピューターという馴染みのあるものなんかじゃない。
WYSIWYGなんてどこ吹く風の、Green on blackのターミナル端末だ。
しかし、ここから、あらゆる最新のOSに対応して、全世界に散らばる会員のスマートフォンに瞬時にテキストメッセージを送り込むことができる。
どんな凄腕のハッカーだとしても物理的にハッキングしようのない紙のライブラリーと、主席連合の意思を瞬時に伝えることができるネットワークは、彼らにとってまさしく最適なシステムなのだろう。
制服警官のジミー
彼は、ジョン・ウィックの自宅がある地区を管轄とする制服警官だ。
ジョン・ウィックが何者であるかを知っている彼は、状況を一目見ると、「騒音の苦情」と「ガス漏れによる火災」で処理してくれる。
しかし、その度に
「また仕事始めたの?」
と聞くことを忘れない。
ジミーは、いったい何者なんだろうか。
ジョン・ウィックの人柄に惹かれた善意の理解者なのか?
いわゆる鼻薬を効かされた、職務規定に忠実でないだけの警官なのか?
それとも、主席連合の秩序の端っこにぶら下がっている構成員なのか?
あるいは、全く別の組織の、別の秩序を遵守する人間なのか?
広くて深いジョン・ウィックの世界。
妄想の余白は、限りなくあるからね。