ペイトン・マニングとトム・ブレイディの最後の直接対決エピソード17は、最後まで勝負の行方が分からない名勝負となった。
ゲームの主役は、それぞれのディフェンス。
華々しくフィールドを蹂躙した彼らは、相手チームのエースQBに安易にスポットライトを浴びさせなかった。
https://www.youtube.com/watch?v=PG1YNa-4N6k
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完璧なディフェンスとの対戦
ボン・ミラーやデマーカス・ウェアのQBサックに目を奪われがちのブロンコスのディフェンスだが、よく見ると、それはカバーによってもたらされていることも多い。
時にロブ・グロンコウスキーを3人がかりでもカバーしていた緊密さは、ブレイディにクイックディシジョンをすることを許さず、コンマの遅れがQBサックを生んだ。
そしてまた、脅威を与え続けたパスラッシュは、ブレイディのメカニズムを狂わせ、投げミスとインターセプトを誘う。
ようやく通せたショートパスは、ディープに構えるSFが、上空で待機している戦闘機のように即座に迎撃し、ランアフターキャッチどころかボールを失わないようにするのが精一杯。
打開策としてコールされたランプレイは、分厚い壁に阻まれるだけだった。
これは、ペイトリオッツのディフェンスも同様で、マニングはディレーブリッツで何度もパスをあきらめさせられ、頼みのランプレイもリズムを生むことはできなかった。
しかし、厳しいゲームを幾多も乗り越えてきた2人のQBは、何度フィールドに叩きつけられてもそのメンタルを切らすことはなかった。
フィールドポジション勝負と割り切った2人は、ロングシチュエーションでゲームを壊すロングパスは選択せずに、揃ってドローを選択しモメンタムを渡さなかった。
ブレイディに至っては、2ダウン残り1ヤードで、すぐさまQBスニークをコールするほどの慎重さ。
お互いのQBスクランブルが、途中までそれぞれの最長のランプレイとなった点も、興味深かかった。
決して走らない2人が、必死になってスクランブルしたのだ。
複雑に確実にカバーを遂行していたそれぞれのディフェンスユニットにとって、唯一注意する必要がなかったのがQBのスクランブル。
そこをついて、即座にベストな選択をした2人のQBは、やはり冷静だった。
キャム・ニュートンとの違い
改めて、この2人のメンタリティーを見ると、これからのリーダーであるべきキャム・ニュートンにはまだまだ成長の余地がある。
Super Bowl 50の終盤では、まだ可能性がなくなったわけではないのに、戦意を喪失してしまい、自ら敗戦を確定させてしまったキャム・ニュートン。
ブレイディは、あれほど手詰まりになりながら、最後の最後までゲームを捨てなかった。
そしてそのメンタリティーは、ダブルカバーされたロブ・グロンコウスキーに連続してパスを成功させ、本当にもう一歩までにじり寄った。
それを冷静に見ていたマニングが、OTを覚悟して、静かにキャッチボールを始めた姿が印象的だった。
もちろん、踏んだ修羅場の数であれば、この2人にはまだまだ追いつかない。
しかし、あきらめないと言うメンタリティーは、経験によって醸成されるものではないだろう。
早々にメンタルを切らしてしまった姿は、非常に残念であった。
来シーズン、それを糧として成長した彼の姿に期待したい。
前半のマニングと後半のブレイディ
以前、殿堂入りQB20人に、どちらのQBを選ぶか?とアンケートを取ったことがある。
多くはマニングを選択したが、我らがジョー・モンタナは「前半はブレイディ、後半はマニング」と0.5票ずつに分けたらしい。
2009年11月にジョー・モンタナなど20人の殿堂入りQBを対象に「もし自分のチームのQBにブレイディとマニングのどちらかを選ぶとすれば、どちらを選択するか」というアンケートが行われた[108]。20人全員がブレイディとマニングの双方を称賛し回答には苦心したが[108]、ブレイディに2.5票、マニングに13.5票という結果が出た。(スティーブ・ヤング、ダン・マリーノ、ロジャー・ストーバック、バート・スターの4人は優劣をつけなかった。)0.5票はモンタナの評価で「前半はブレイディ、後半はマニング」と評した[108]。
トロイ・エイクマンはペイトリオッツがブレイディを欠いても11勝をあげた2008年シーズンのことを引き合いに出し、3人のHCのもとでプレーしたマニングに比べればブレイディの成功はHCベリチックによるところが大きいとした[108]。
情報源: トム・ブレイディ – Wikipedia
しかしこの試合は、「前半のマニング、後半のブレイディ」であった。
前半唯一のTDドライブの後は、無理することはせずに、ディフェンス主体のチームの勢いをそがなかったマニング。
そして、我慢に我慢を重ね、逆転のチャンスをうかがっていたブレイディ。
それぞれが厳しいディフェンスに向き合い、思い通りにできなかったからこそ、また彼らの優れたプレイを堪能することができた。
容易に打ち合うゲームよりも、この展開の方が相応しかったのかもしれない。
そして、この最後の対戦をもってしても、そのどちらにも優劣はつけることは叶わなかった。
それは、そうなのだろう。
僕らは、この2人が同時期に存在し、史上稀なグレートライバリーの物語を紡いでくれたことに感謝するしかない。
最後は、スティーブ・ヤングの引用を持って締めくくりたい。
スティーブ・ヤングは、このような問いに答えることは失礼だとし「どうやってレンブラントとファン・ゴッホのどちらかを選ぶことができるんだ。」と話した。
情報源: トム・ブレイディ – Wikipedia