テネシー・タイタンズもホワイトヘルメットを着用する。
誰も真似のできないアイコニックなロゴと共に、オイラーズが帰ってくる。
しかも、彼らはそれを、ヒューストン・テキサンズとのゲームで着用しようというのだ。
THE OILERS ARE BACK
Derrick is back
ひと頃のNFLを代表するクリーンなユニフォームが帰ってくる。
もちろん、ヘルメットには、あの油田掘削装置が輝いている。
僕がNFLを知るようになったころ、そのロゴとニックネームが何を表しているのか、わからないものがいくつかあった、
思えば、それは初めてのカルチャーショックというものだったかもしれない。
インディアン・パッキング・カンパニーの企業チームがパッカーズと名付けられ、石油ビジネスで成功したオーナーが、オイラーズと名乗って油田掘削装置をヘルメットに飾る。
その捻りのないど真ん中の豪速球ぶりも、ヤック!デカルチャー!
コロンビアブルーと歴史
そもそもコロンビアブルーがチームカラーとなったのは、創立者のバド・アダムスのお気に入りのカラーだったからだ。
How EVERY Team Got Their Colors!
だからナッシュビルに移転し、テネシー・タイタンズと名前を変えた後も、ライトブルーはチームカラーだ。
持ち込めたのはチームカラーだけではない。
ヒューストン・オイラーズというチームの歴史も、引越し荷物に詰め込むことができたのだ。
このあたりは、クリーブランド・ブラウンズとは違う状況だ。
ブラウンズは、ボルチモアに移転するにあたってニックネームはもちろんのこと、それまでの輝かしい歴史もクリーブランドに置いてくることしかできなかった。
創業オーナーだったバド・アダムスと、後からチームを買収したアート・モデルに対する対応の違いだろうか。
オイラーズというチーム名を使うことができなかったヒューストンは、テキサンズというチームを作るしかなかった。
しかし、クリーブランドには、またブラウンズを名乗るチームが現れた。
だが、重たい看板だけ背負わされた新生チームは、未だ浮かび上がる兆しは見えない…
NFLでフランチャイズの移転には、常にドロドロの愛憎劇が付き纏う。
雨の日も晴れの日も応援してきたファンと、ビジネスコンシャスな球団フロントの対立。
NFLが家庭裁判所のように離婚の調停に出向かなければならない。
多くの離婚調停がそうであるように、復縁することはあり得ない。
ただ、条件の折り合いをつけるだけだ。
ボルチモア・コルツが、インディアナポリスに夜逃げ同然で逃げ出した例外もあるけれど…
ヒューストン・オイラーズ
そうして、今シーズン、タイタンズはテキサンズとの対戦で、このオイラーズのユニフォームを着用してゲームに臨む。
ソフトバンクが南海ホークスのユニフォームを着るのとはわけが違う。
ノスタルジックとは程遠い、ライブな感情が芽生えるはずだ。
まだヒューストン・オイラーズがアイドルだった世代は、大勢いる。
そして彼らは、まだ傷が癒えていない。
NFL100年の歴史に残る大逆転劇を、2年連続で味わされた悲劇の…
Broncos vs Oilers
AFC DIVISIONAL PLAYOFF – ELWAY COMEBACK“To see him operate in that moment, it let me know then, just how special number 7 was.” – Shannon Sharpe
情報源: NFL 100 | NFL.com
1992 – Oilers vs. Bills
AFC WILD CARD – “THE COMEBACK”“We had that good-luck positioning, where you’re not allowed to move or you’re the reason that they lost the game.” – Chad Michael Murray
情報源: NFL 100 | NFL.com
あの温厚に見えるウォーレン・ムーンが、大量リードをひっくり返されたとき、サイドラインでゲータレードのカップを握りつぶした姿を覚えている。
タイタンズは、少なくともスーパーボウル出場を果たすことはできた。
しかし、ヒューストンの人々は、その歓喜の入り口にすら辿り着けてはいないのだ。
ウォーレン・ムーン
スーパーボウルには届かなかったが、ウォーレン・ムーンは偉大なゲームチェンジャーのひとりとして、NFL100の歴史に、その名を刻んでいる。
Quarterback
WARREN MOON“Warren Moon paved the way, and it’s not said enough.” – Nate Burleson
情報源: NFL 100 | NFL.com
彼は黒人QBとして初めて、そしてドラフト外のQBとして初めてプロフットボール殿堂入りを果たした。
間違いなく現在の黒人QBの道を切り拓いたのだ。
もし彼がいなければ、現在のフランチャイズQBの顔ぶれは、相当変わったものになっていたはずだ。
彼も、今回のスローバックを喜んでいる。
チームは誰のもの?
チームに記憶が残り続けることに感謝するOBたち。
そうした姿を見ると、ブラウンズのことが頭をよぎる。
歴史が分断されたチームに、OBたちは、どんな感情を持っているのだろう。
バーニー・コーザーは、現在のブラウンズにノスタルジーを感じるのだろうか。
公式には、そのころ存在していなかったレイブンズは、レジェンドRB ジム・ブラウンの死去にあたっても、チームとして追悼することも叶わない。
“His impact on this game and the NFL community cannot be understated. I will miss my friend.”
Ozzie Newsome and the Baltimore Ravens share our condolences after the passing of NFL legend Jim Brown. pic.twitter.com/Y9WwIi5Utn
— Baltimore Ravens (@Ravens) May 19, 2023
チームは誰のものなのか?
スポーツと文化とビジネスのマリアージュであるチームとは、一体誰のものなのか?
その地域の財産なのか、それとも経営母体の資産なのか。
簡単に答えは見つかることはないのだろう。
もっとも、アート・モデルは、自らがチームマスコットから追いやった、善意の妖精ブラウニーから呪いをかけられているだけなのかもしれないが…
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