ヒューストン・テキサンズがフランチャイズ史上初めて、ユニフォームの変更を行なった。
のべ1万人以上のファンとの対話の上で誕生した新ユニフォームは、まさにDesigned by Houston in Texas。
そして今回、チーム創設時にデザインされた本来のディープブルーを、初めて手に入れることができた。
NFL史上もっとも包括的なプロセス
およそ2年前、変化を決断した球団は、そのプロセスに着手した。
同じように変化を望むファンは、それに呼応した。
こうして、NFL史上もっとも包括的な新ユニフォームのデザインプロセスが始まった。
ひとグループ30人のファンとのセッションは、3時間にも及んだ。
そのグループ数は50に及び、のべ1万人以上のファンが、チームに直接意見を伝え、フィードバックを受けた。
すなわち、このプロセスの大半は、デザインの作業ではなく、ファンとの対話に費やされたのだ。
現役のロースターも加わったこのプロセスは、ヒューストンのDNAを探る旅となった。
図らずも、サプライヤーのナイキの担当者までもが、ヒューストンの出身者だった。
ORIGINAL DEEP STEEL BLUE
2000年にチームの発足が発表されたとき、そのブルーは深かった。
決してネイビーなんかじゃない。
ブルーブラックのような、ミッドナイトブルー。
しかし、当時のサプライヤーのリーボックでは、その色を実現することができなかった。
だが、今回のプロセスの中で、それをナイキが実現した。
このディープブルーを着用するのは、テキサンズが初めてであり、唯一のチームとなるはずだ。
図らずもテキサンズは、新ユニフォームのプロセスの中で、自らのオリジナルのアイデンティティに巡り合うことができたのだ。
余談ながら、昨年、アンダーアーマーもエクリプス・ネイビーという、黒と見紛うほど濃いネイビーを発表している。
色の進化と深化は、さまざまなチームのアイデンティティを、より明確にしていくことだろう。
H-Town Color Rush
今回、唐突に発表された「H」のロゴだが、これもファンとの対話の中で実現したもの。
さらに、ヒューストンのDNAが満載だ。
ベースとなったBLACK LETTER フォントは、ヒューストンのミュージシャンが、アルバムのアートデザインに好んで多用している。
さらには、地元の名門、ライス大学も、このフォントのロゴを使用している。
File:Rice Owls logo.svg – Wikipedia
フォントに雄牛のツノの要素を加えたロゴに使用されるのは、H-TOWN BLUE。
H-TOWN BLUEは、正式なテキサンズのカラーになったとリリースされている。
そもそも、ヒューストン市の旗には、この色が使用されている。
Taking a closer look at Houston’s official flag
無論、ヒューストンのDNAなのは間違いないが、それをいっそう濃くしたのはヒューストン・オイラーズの存在だろう。
テネシー・タイタンズは、ボルチモア・レイブンズと違う条件でフランチャイズを後にした。
レイブンズは、ブラウンズだった頃の歴史を全てクリーブランドに置いていくことが条件だった。
しかし、タイタンズには、そのような条件は課されなかった。
だから、昨年、オイラーズのユニフォームをスローバックして着用している。
happy oiLers game! https://t.co/fg5IXVAMVZ pic.twitter.com/8PPFqPrgF4
— Houston Texans (@HoustonTexans) December 17, 2023
そもそもオイラーズが、コロンビアブルーをチームカラーにしたのは、創立者のバド・アダムスのお気に入りのカラーだったからだ。
ヒューストンとは何の関係もない。
だが、あのカラーに、あのユニフォームにヒューストンの歴史の一部が形成されたことも事実だ。
今回、このブルーのオルタネートをテキサンズが発表するという噂もあったが、正式なアクセントカラー止まりになったのは、様々な利益調整の結果ということなのだろうか。
ヒューストン市民でない僕は、よそに移ったものには見切りをつけて、こんなにファンベースを大事にする球団が推すテキサス州旗をベースにした3色でいいんじゃないかと思う。
そういう意味でも、オルタネートのアクセントカラーというのは、よい落とし所なのかもしれない。
BOLD BATTLE RED
昨年も登場していた、バトルレッドのオルタネートのヘルメットは、エレメントが強調されて、シャープで力強くなった。
BOLD BATTLE REDの名前は伊達じゃない。
この強い赤で新たに創り上げる歴史は、古のコロンビアブルーを吹き飛ばしてくれるはずだ。
Liberty White
バトルレッドと同じように、肩のストライプが、雄牛のツノの要素を用いてデザインされている。
これまでのジャージよりスッキリしていて、なおかつ斬新だ。
NFL初のヘルメット
オルタネートのヘルメットで新しいロゴを発表するのも初めてのことだが、ふたつのロゴがタンデムしているのは、本当に珍しい。
しかも、それぞれ強いアイコンなのに、いい塩梅で共存している。
2024 新ユニフォームのベスト
これまでに幾つかのチームが新ユニフォームを発表しているけれど、テキサンズがベストなんじゃないだろうか。
これまでのユニフォームもシンプルで好みだったが、今回のデザインは、洗練の度合いが一気に高まった。
長い時間をかけて丁寧なプロセスを経ることで、明確になった自らのアイデンティティが、余分なものを削ぎ落とすことに成功したのだろう。
特にミニマムに進化したORIGINAL DEEP STEEL BLUEのホームのジャージは、その色合いの興味もあって、ぜひ実物を手にしてみたくなる。
変化を決意したものは、その時点で、すでに変化を手にしている。
今にして思えば、昨シーズンのテキサンズの飛躍は、2年前にこのプロセスに着手する時点で、いや、球団が変化しようと決意した時点で約束されていたことなのだろう。
その昔、テキサンズを名乗って始まったチームは、今では名前を変えて、ミズーリ州で王国を築いている。
その伝説の創立者から直々に許可を得てテキサンズを名乗っているこのチームも、ごく近い将来、王国を築くようになるのかもしれない。
そのとき、ヒューストンと聞いて人々が思い浮かべる色は、何色なんだろう…