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「シン・仮面ライダー」観た人のためのレビュー(3)「ジェイの筐体」

初めて観てからわずか2日間を空けただけで2回目を観に行ってしまった。
こんなに観たいと感じる作品に出会したのは、前回のことをもう忘れてしまったくらいに、ずいぶん久しぶりのことだ。
断っておくが、僕は仮面ライダーファンでも庵野マニアでもない。
どうやら、僕に刺さっているのは、そうした要素以外のもののようなのだ。

キャラクターの虜

池松壮亮は、庵野秀明監督が生み出した本郷猛合成型オーグメンテーションプロジェクトの最高傑作だ。
それは、浜辺美波の緑川ルリ子も、柄本佑の一文字隼人も同様。
僕は、彼らが、このキャラクターたちが好きなんだということを、2回目の鑑賞中に実感していた。

僕は旧作のイースターエッグを探しにきたわけでも、庵野演出の分析に来たわけでもない。
ただただ、彼らに会いたかったのだ。
そんな感覚は、初めてに近いんじゃないだろうか。

どうしてなんだろう?
この作品における浜辺美波の圧倒的な美しさはあるにしても、池松壮亮は、チワワオーグかと突っ込みたくなるくらい震えっぱなしだったというのに…

「ことにする」

そうつぶやいて彼らは、個人的な選択、決断を下していた。
シン・ゴジラやシン・ウルトラマンで下されていた決断は、もっと大きなものだった。
しかし、今回のキャラクターが下していたのは、甚だ個人的なものだ。
自分は、こうして生きていく「ことにする」と。

緑川ルリ子は、本音だけのハビタット世界は地獄だと言っていたが、この3人は本音だけの簡潔なやりとりで信頼関係を築き上げていく。
一文字隼人の場合は、自らを洗脳から解き放ってくれたお嬢さんと本郷へのオブリゲーションが、その始まりにあったにせよだ。
信じられて託されて、信じて託す、そうした関係が醸成されていく姿。
それが僕に刺さっているのだろうか?

本郷猛と緑川ルリ子に色恋が立ち入る隙があったのだろうか?
緑川イチローは、実の妹に下衆なツッコミを入れていたが、本郷猛が即座に強く否定したのは、もう少し高尚なものなんだという思いからだろう。
もっとも、バッタオーグと生体電算機がお互いに思いを寄せたとき、それがどこに辿り着くのかは、僕の貧弱な想像力の範囲を遥かに超える。

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まあ、ここまで書いたことは御託だ。
美しいロケーションを背景に、俳優と役柄が一体化して、この作品でしか観られないキャラクターが生まれていることだけは確かだ。
その姿になぜ心惹かれるのかは、僕のテキスト生成能力では表現することはかなわない。
ただ黙って、彼らの「ことにした」生き様を観ていたい。
だから作品が終わりに近づくにつれ、彼らが徐々に姿を消していくことに寂しさを感じるようになる。
その心情は、一文字隼人が端的に代弁してくれている。
「なんだよ。また独りかよ…」

仮面ライダー第2+1号

今回うれしかったのが、入場者特典のカードで、仮面ライダー第2+1号が出てきたこと。
初めて観たとき、そのサプライズな登場に、僕は大いに昂まった。
そうして、それは、あの抒情的で美しいエンディングに続いてく。
このカードを見るたびに、あの美しい光景が僕の中に広がる。

しかし、防護服にラインを加えたのは、誰のアイディアだろうか?
一文字隼人は、そんな細かい発注をするような男ではない。
だとすれば、立花と名乗る政府の男の配慮なのか。
一文字に託した本郷の思いをカタチにしたというのなら、公務員にしておくには勿体無いほど気が利いている。

ジェイの筐体

さて、前回の記事で続編にキカイダーが登場するという妄想を書いた。
今回、観ていてジェイの存在を思い出した。
ケイにアップデートされて、電源を落とされてしまったジェイの筐体のことを。
そうであるならば、本郷猛のプラーナは、ジェイの筐体をベースにしたものに固定されるのではないだろうか。
しかし、筐体には人工知能も消えずに存在している。
人工知能 アイは、ギルの笛の代わりに電気信号を送って、本郷猛は葛藤に苦しむことになる。

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そういえば、チョウオーグも、「蝶は復活、不死の象徴」と言っていたな。
純粋なプラーナとして復活するチョウオーグは、ダブルタイフーンのようなベルトも不要な神の使いのような姿で登場する。
その姿は、まさしくイナズマン。

御期待ください。

いやいや、これも怒られそうだな。
それに続編の制作については、僕のスタンスは微妙だ。
観たいような観たくないような…
あの美しいエンディングの後の余白は、そのままにしておいて欲しいような…

シン・ウルトラマンについては続編をやってほしい。
ウルトラマンには、是非とも帰ってきて欲しい。
これは、決して、シン・ウルトラマンの方が面白かったからという理由ではない。
作品としては、どちらも面白かった。
しかし、刺さったのはシン・仮面ライダーだけだ。
俳優と役柄が一体化して、この作品でしか観られない得難いキャラクターが瞬間的に誕生したのだ。
余計な尾ひれはつけないで、どうか、この貴重な存在を手付かずでフリーズパックしておいて欲しいと思う。

ただ、彼らの織りなす違う物語にも興味はあるわけで…
前略おふくろ様
俺、困ってます…

 

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