2026 第60回 スーパーボウル Flyover:250年目のオールスター

ついに第60回 スーパーボウルの出場チームが決定した。
そして、もうひとつの重要な役目を担う第3のチームは、少し前に既に発表されていた。

今年のフライオーバーを担うのは、史上初のアメリカ海軍と空軍の合同チーム。
今年は、アメリカ軍創設250周年にあたる記念すべき年。
それを祝して、史上初の混成オールスターチームが結成されたのだ。

コレが実現できるのは、アメリカ人が華々しいイベントを好むからだけではない。
その裏には、他国では真似をするのが困難な、高い実務能力の存在がある。

3つの基地

The formation, featuring two Air Force B-1 Lancers, from Ellsworth Air Force Base, South Dakota, and two F-15C Eagles, from Fresno Air National Guard Base, California, alongside a pair of Navy F/A-18E Super Hornets and two F-35C Lightning IIs, from Naval Air Station Lemoore, California, is a symbol of the nation’s journey and independence.

Air Force, Navy aircraft to fly over Super Bowl LX > Air Force > Article Display

リリースを読むと、空軍と海軍の合同という華やかさより、それぞれ3ヶ所の基地から飛び立つという点が目を引く。

機種機数出撃基地
空軍B-1B ランサー (死の白鳥)2機エルスワース空軍基地 (サウスダコタ)
空軍F-15C イーグル2機フレズノ空軍州兵基地 (カリフォルニア)
海軍F/A-18E スーパーホーネット2機レムーア海軍航空基地 (カリフォルニア)
海軍F-35C ライトニング II2機レムーア海軍航空基地 (カリフォルニア)

ものすごいスピードで飛行するしかない移動体を、それも、性能も年式も違うものたちを、別々の場所から発進させて、The Star-Spangled Bannerのサビもサビというピンポイントで、編隊を組んで通過させなければならないのだ。
ひとつの基地から、ヨーイドン!というシンプルな方法とは、全く違う手順を踏まなければならない。

Geminiのシミュレーション

こんな動きになるのではないかと、Geminiがシミュレーションしてくれた。

1. バラバラの出発点(分散)

  • B-1B ランサー: サウスダコタ州のエルスワース基地(約2,000km先!)
  • F-15C イーグル: カリフォルニア州のフレズノ基地
  • F/A-18 & F-35C: カリフォルニア州のレムーア基地

サウスダコタから来る爆撃機と、地元の戦闘機たちが、それぞれ全く違う距離と速度でサンタクララを目指します。

2. 「2,000kmの彼方」からの同期

特にB-1Bランサーです。彼らはサウスダコタ州のエルスワース基地から、カリフォルニアのスタジアムを目指して飛びます。

  • 距離: 約1,300マイル(約2,100km)。東京から台湾やマニラまで行くような距離です。
  • ミッション: その距離を飛びながら、地元の基地(フレズノやレムーア)から上がってきた戦闘機たちと空中で合流し、国歌斉唱の「最後の1音」に合わせてスタジアムの真上に現れる。

これはもはや「飛行機を飛ばす」というより、**「広大な空間に散らばったデータを、一つのパケットとして正確なタイミングで着弾させる」**という、極めて高度なコンピューティングに近い行為です。

3. 「空中ランデブー」という名の魔法

彼らは試合開始の数十分前に、サンタクララから少し離れた海上や山間部の**「スタック(待機エリア)」**で合流します。 時速数百キロで飛びながら、空軍と海軍の機体がピタリと隣に並び、あの「8機の編隊」を完成させる。これ、暗闇の中で針の穴に糸を通すような作業を、空中でやっているようなものです。

4. 地上との「完全同期」

ここからが、究極のコントロールです。

  • 地上のコントローラー: スタジアムにいる軍の担当者が、国歌斉唱の進み具合を秒単位でパイロットに無線で伝えます。
  • 速度の微調整: 「歌手の歌い方が少しゆっくりだ」となれば、編隊全体が速度を数ノット落とし、「最後のフレーズ」の瞬間にスタジアムの真上を通過するように、AI並みの精度で調整し続けます。

空軍と海軍のプロトコルの違い

そうして、空軍と海軍の合同という点もオペレーションのネックとなる。
それぞれに、異なるプロトコルを構築してきたからだ。
大体、どの国でも、陸軍と海軍は、いがみ合う。
陸軍航空隊という存在から空軍として自立した歴史が浅い彼らも、独自のプロトコルを築いているのだろうか。

1. 空軍と海軍、異なる「プロトコル」の融合

十一さんが仰った「軍合同」の難しさは、実は**「言語(プロトコル)の違い」**にあります。

  • 空軍: 高度や速度の管理、無線の使い方が「空軍流」で最適化されている。
  • 海軍: 空母艦載機としての独特な動きや、海軍特有の通信手順がある。

これまでは、事故のリスクを避けるために「今回は空軍だけ」「今回は海軍だけ」と分けていました。しかし今回は、**B-1B(空軍)、F-15C(空軍)、F/A-18E(海軍)、F-35C(海軍)**という、性格も速度も異なる4機種・8機が混ざり合います。

2. 異なるOSの「翻訳」能力(インターオペラビリティ)

空軍と海軍は、無線機の周波数から戦術用語、さらには「緊急時の優先順位」まで、長年異なるOS(文化)で動いてきました。 それが一つの編隊を組めるということは、**「自分たちの個性を維持しつつ、共通の目的のためにシステムを完全に統合(API連携)できる」**という、組織としての圧倒的な柔軟性と知性を示しています。

誰が仕切るか

じゃあ、そんなに鼻っ柱の強いプロトコルたちを、一体誰が仕切れるというのだろう?
そんなシンプルな疑問に、Geminiは、データの面から答えてくれた。


その質問、まさに「システムの核心」ですね。

これだけ広域から集まる航空機を、国歌斉唱の「最後の1秒」に合わせてスタジアムの真上に持ってくる司令塔。実は、単一の管制塔ではなく、**「情報のバトンリレー」**によって仕切られています。

1. 広域の仕切り:FAA(連邦航空局)の各センター

まず、サウスダコタやフレズノから飛び立った直後は、通常の民間機と同じようにFAAの管制下に入ります。

  • B-1B: ミネアポリスやソルトレイクシティのセンターが、高度数万フィートの「高速道路」を確保します。
  • F-35C: カリフォルニアのオークランド・センターなどが担当します。

この段階では、まだバラバラのパケットです。

2. 集合地点(Holding Point)の仕切り:軍の管制

スタジアムから数十マイル離れた待機空域(スタック)に集まる際、彼らは**「軍専用の周波数」に切り替えます。 ここで編隊を組むための仕切りを行うのは、多くの場合、近くの軍基地(今回ならレムーア海軍航空基地やトラビス空軍基地)の管制、あるいは「AWACS(早期警戒管制機)」**が上空から調整することもあります。

3. 最後の1ヤード:地上管制官「TIC」

そして、最も重要なのがスタジアムの屋上に陣取る**「TIC(Terminal Instrument Controller)」**と呼ばれる軍の地上管制官です。

  • 彼らの役割: 手にはストップウォッチと無線機。
  • ミッション: 国歌斉唱の進行をライブで聞きながら、編隊のリーダー機に**「あと30秒遅らせろ」「5ノット加速せよ」**と秒単位の指示を出します。
  • バイオニックな連携: パイロットはスタジアムを直接見て合わせるのではなく、このTICからの「データ(指示)」を信じてスロットルを動かします。

統合運用のプレゼンス

前回のフライオーバーは、、海兵隊が単独で、その役目を担った。

第59回スーパーボウルのフライオーバーの担い手として白羽の矢が立ったのは、アメリカ海兵隊。なぜなら、今年、彼らは、創設250周年を迎えるからだ。そして、彼らの誕生の地は、フィラデルフィアだった…

: 2025 第59回 スーパーボウル Flyover 「フィラデルフィア生まれの海兵隊」 – ALOG

海兵隊は、陸海空軍の全機能を備えた、いつでも、どこにでも、殴り込み可能な完結した即応部隊だ。
しかし、他の軍も、それぞれがそれぞれの戦争をおこなうというものでもない。
局面ごとに、それぞれの能力を生かした統合運用をすることは必然なのだ。
なんだったら、宇宙軍までも含めて。

その統合運用のプレゼンテーションにおいて、このフライオーバーは打ってつけなのだ。
混成の編隊が、異なるプロトコルを飲み込んで、ミリ秒単位の正確さで、スタジアムなんてピンポイントの地点に突如現れることが可能ということになる。
コレが実行可能な国が一体いくつあるのだろう。
だが、ひとつの国家で統合運用が可能になれば、強い絆の同盟国に広げることは容易なはずだ。

スーパーボウルの当日には、ぜひ、この能力を存分に発揮してほしい。
そうして、ベネズエラを見て青ざめた独裁者たちに、いつか、ステルス爆撃機がピンポイントで現れるかもしれないという悪夢を植えつけてほしい。
サンタクララの青い空に残される飛行機雲は、ある者たちへの強い楔になるはずだ…

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