シーズン1と同様に風変わりな死体から事件は始まる。
しかし、真相解明には35年というシーズン1の倍以上の歳月を要し、しかも終着駅はまるで違う。
最初は、評価の高かったシーズン1の雰囲気をなぞっているのかと感じていた。
しかし、扱っているものは、事件はまったくの別モノなのだ。
本年度エミー賞最有力!記憶は嘘をつく−事件の深い闇に引きずり込まれ翻弄された刑事が、今、驚愕の真相に迫る本格緊迫クライムサスペンス
情報源: トゥルー・ディテクティブ 猟奇犯罪捜査|ワーナー・ブラザース
TRUE CLASSIC
シーズン1では、底なし沼のような深い闇が描かれる。
結局、我らがルイジアナ州警察のラストとマーティンさえ、その深さがどれほどであるのかを確認することはできなかった。
シーズン3で描かれるのは、それとは別の性質のもの。
一言でいえば悲劇だ。
殴られ痛めつけられながら、自らは解決することができず、ことの顛末を見守ることしかできない。
そんなこれまでのクラシックなディテクティブたちと同じ物語を主人公たちは味わうことになる。
1980年という時代設定のおかげで、ウェインとローランドはベトナム帰りという、ひと頃のアメリカ映画では数多く見られた設定になっている。
そして、ベトナムから帰って来ても社会に馴染めないものたちが影を落としている。
従軍していない住民に、ベトコンなど新聞の見出しでしか知らない連中に迫害を受けるとき、思わず発する「お前らのために戦ったんだぞ!」という叫びが切ない。
しかし、従軍した体験のおかげで、身分のまるで違う大富豪とも戦場の体験を分かち合うことができる。
一人は戦死して親に遺族年金を渡すことが目的であり、一人はノブレスオブリージュだったとしてもだ。
懐かしさは、二人の刑事が愛用する銃にもあらわれている。
二人ともリボルバーだ。
その38口径に、.357マグナムを装填しているのか、38SPを装填しているのかは不明だが。
そしてこの時代、日常生活ですぐに手を出すほどにはドラッグが蔓延していない。
うさを晴らすための手法は、まだ酒と、意図的にふっかける喧嘩というたいそう健全なものだ。
ウェインとローランドは、優秀な刑事であると同時によきバディでもある。
しかし、その二人を持ってしても、真相の解明には35年の歳月を要した。
しかも、それには、35年もの長い間、罪悪感を抱え続けた関係者の告白が必要だった。
ウェインがリーコンにいたという特殊な経歴と能力を持っていたとしても、彼らにできるのは物的エビデンスから証言を聞くべき人間をあたり、通話記録や搭乗記録を洗うという地道な作業しかできない。
ようやく見つけた糸口を、自らフイにしたというミスは犯してしまったが…
そして、どのように圧力というものがかけられるのかという点も描かれている。
しかし、その発信元は不明だ。
ラスボスのオトモダチが有力者に通じているのか、はたまた有力者自身が自らの野心と保身のために発信元になっているのかは見極めがつかない。
そして圧力を受けたものは、自分自身のためではなく、自らが大切にしているものを守るために応じる。
屈するのではない。
妥協し、手を引くだけのことだ。
そうして、再開も含めて2度にわたって行われた捜査は宙ぶらりんの状態になってしまった。
忘れるという幸福
事件が解決しようがしていまいが人生は続く。
そうして、「その後」を続けていくために、人間には忘れるという素晴らしい能力がある。
記憶障害に陥っているウェインが、バディとの関係を復活させることができたのは、二人の間に何があったかを忘れていたおかげだ。
だから、抜け抜けと会いに行けるのだ。
しかし、ローランドも、バディが忘れてくれているおかげで受け入れることができるのだ。
ウェインが、今さらながら様々な記憶を呼び起こし真相を究明しようとするのは、もう人生の際にいるのだと無意識に自覚しているのかもしれない。
であるならば、自分の人生に35年も影を落としているあの事件を解決したいのだと。
そうして事件は、解決はともかく、クローズする。
そうして、事件がクローズした後も、ちゃんと続いていた誰かさんの人生を発見したことも、ウェインは忘れてしまう。
しかし、それは誰かさんにとって、最良の結末であったはずだ。
ラストとマーティンもチラッと登場
新聞記事ながら、シーズン1のラストとマーティンもチラッと登場する。
彼らの命がけのラストエピソードが、きちんと報じられている。
しかし、結局、あの犯人のオトモダチには手が届かなかったようだ。
沼の底にまで光は当てることはできなかった。
しかし、ラストの言葉を信じるならば、あの闇のものたちも大打撃を受けているはずだ。
こうして報道されているのなら、もしもラストがマーティンの探偵事務所でまたバディを組んでいるのなら、さぞや商売は繁盛していることだろう。
しかし、ラストのことだ。
つまらない依頼人には悪態をついて、またマーティンと何度目かの大喧嘩をしているのかもしれないね…