Blog & SNS / Tumblr

Twitterの買収とTumblrの幸福な事例

「本当の金の使い方を見せてやるよ」
そう、宣言されたような気がした。
イーロン・マスクのTwitter買収は鮮やかだった。
全株取得で非公開企業にThrowback。
UBO ユーザー・バイアウトの世界初の事例かもしれない。

早速、Twitterの先行きはどうなる?なんてディベートごっこに最適なネタになっている。
僕自身は、あんまり悲観していない。
それは、Tumblrの幸福な買収事例を見ているせいだろう。

ジャック・ドーシーのつぶやき

今回の一連の出来事の中で、もっとも胸を打たれたのは、ジャック・ドーシーのせつないつぶやきだった。

「自分にとって大事なのは、(ツイッターの)概念とサービスだけで、その両方を守るためなら何でもする。企業としてのツイッターは常に、自分にとって唯一の問題で最大の後悔だった。ウォール街と広告モデルに所有されてきた。ウォール街から取り戻すことが、正しい第一歩だ」

情報源: マスク氏に買収されツイッターは変わるのか – BBCニュース

純粋な金儲けだけではない目的で始まったであろうサービスは、純粋な金儲けだけが目的の人種に取り上げられてしまった。
ずっとそのことを気に病んできた創業者の告白は、せつなすぎる…

もっともユーザーも、アカウント所有者もだいぶ様変わりした。

「えっと、渋谷なう」
なんて呟いていた、はにかみ屋のサイレント・マジョリティは見当たらなくなり、ノイジー・マイノリティが大型スピーカー代わりに占拠した。
商業キャンペーン、非商業キャンペーンが持ち込まれ、確信犯とDupesの間をストローマンが駆け抜ける。
頭数の減り続ける年老いた活動家たちが、ハッシュタグを使って安上がりなデモをする。
そうして自分達が創作したトレンドをもとに世間を脅迫する。

ただ誰かさんが呟くだけで、議論のための場所なんかじゃなかったTwitterが、あの頃の空気にThrowbackすることはもうないだろう。
でも、それでも言論の自由を標榜するイーロン・マスクを僕は歓迎する。
個人に所有される危惧をメディアは騒ぎ立てるが、個人に所有されていないのに、多様性の旗を振りながら、立場の異なる価値観を封殺してきたのはメディアの方だ。
自分と異なる意見の人々にもTwitterに残ってほしいという彼の姿勢を今は信じる。

Tumblrの幸福な買収事例

外から眺めている者の方が、その価値をよく理解していることがある。
そして、そうした者ほど、それの持つ本来の価値を守ろうとする。

そんな実例を、僕は目の当たりにしたことがある。
WordPressのAutomatticによるTumblrの買収だ。
持ち主が二転三転するTumblrを救ったのは、Automatticのマット・マレンウェッグCEOだった。

「もし Tumblr が独立起業のままだったら、5年や10年後にはどうなっていたんだろう?」

情報源: Automattic の二次投資に見る長期的方向性 – Naoko Takano

こう呟いて、Tumblrの持ち主が変わるニュースに胸を痛めていた彼は、自ら買収することでその思いを実現しようとしている。
買収からもう3年近く、細かい機能改善や、新しいサービスは山のようにリリースされていくが、居心地の良さは相変わらずだ。
Tumblrの最大の価値である、あの自由な空気に空気清浄機を発動するような真似はしなかった。

「世界はTumblrを本当に必要としているのか?」

その問いかけを持ってデイヴィッド・カープはTumblrをスタートした。
そして、マット・マレンウェッグは、その問いかけに正しくプラクティカルに答えたことになる。

https://alog4.tumblr.com/post/187168010893

だから今回も、ジャック・ドーシーの苦悩に、イーロン・マスクが正しくプラクティカルに答えを出しくれるのではないだろうか。
そして創業者の最大の後悔を、ずっと刺さったままの小骨を取り除いてくれるのではないだろうか…

コメントを残す