Movie & TV / John Wick

「ウィック・イズ・ペイン」 観た人のためのレビュー「Wick is …」

Wick is Painが、YouTubeApple TVで視聴可能になっている。
Amazon Prime Videoでも見つけたけれど、これは字幕の有無が怪しい。
ジョン・ウィックの撮影の舞台裏を、1作目から10年以上も記録し続けた貴重なドキュメンタリーフィルム。
映画が産んだのは、痛そうなシーンだけではない。
リアルな痛みもしっかりと与えていたのだ。

Wick is Pain

撮影の前日に650万ドルの資金の手当がつかずに、あわや空中分解しそうになったインディペンデント映画が、10年の歳月をかけて10億ドルの収益をもたらすフランチャイズ映画へと成長した道程とクロニクル。
4作目の撮影時には、その予算は1億ドルになっていた。

ちなみに、1作目の資金を提供した救世主は、あのエヴァ・ロンゴリア
まさにデスパレートな状態から、撮影チームを救い出してくれたわけだ。

アメリカの人気海外ドラマ『デスパレートな妻たち』にて、チャーミングでわがままな主婦ガブリエル・ソリス役を演じ、大ブレイクを果たした。

エヴァ・ロンゴリア – Wikipedia

チャド・スタエルスキ

マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロの関係に憧れていたんだよね」

キアヌ・リーブスは、そう呟く。
だけど、僕にも信頼できる監督はいるんだよと。

チャド・スタエルスキは、マトリックスで、キアヌ・リーブスのスタントダブルを務めていたことで有名だ。
マトリックス レザレクションズでは、リニューアルされたマトリックス世界でトリニティーの夫役として登場するというお遊びもあった。

ブルース・リーに憧れてマーシャルアーツを始めた彼は、ブランドン・リーに出会い、さらに撮影中の事故死により、そのスタントダブルとしてハリウッドで仕事を得るようになる。

そして第1作には、もうひとり共同監督がいる。
チャド・スタエルスキと共同で会社を設立し、盟友であったデヴィッド・リーチだ。

二人はともにベテランのアクション監督でありながら、いわゆる本編を撮る監督としては、ともに新米でもあった。
なぜ、チャプター2以降、デヴィッド・リーチが共同監督でなくなったのかというストーリーも語られる。
さらに、チャド・スタエルスキは、盟友に続いて妻も失うことになる…

掟破りの犬殺し

ハリウッドの暗黙の了解として、犬は絶対に殺してはならない。
事実、試写では、デイジーが殺された場面で席を立つ観客も一人ではなかったらしい。

だが、試写後の観客のアンケートは違った。

「犬を殺されたことを理由に多数の人間を殺すことをどう思いますか?」

男性の60%は、まあ、肯定するという回答だった。
ところが女性は、その98%が、Fuck Yes!皆殺しにしろ!というものだった。
それが、ただの犬ではないことを、女性たちは深く感じ取っていたのだ。

Lionsgate

ようやく完成したこの作品を、どこの配給会社も欲しがらなかった。
国内のただの1社もだ。
海外の配給権を取得したLions Gateの海外部門が、それならアメリカ国内もウチがやると手を挙げたことにより、全米で公開されるようになったのだ。

フランチャイズ映画の匂いを感じたLionsgateは、早期の続編を希望した。
フランチャイズ映画にとって、2作目は極めて重要だ。
ここが成功すれば、3作目、4作目と軌道に乗せられる。
しかし、実のところ、どうして1作目が、これほどヒットしたのかは、誰にも理解できていなかったのだ…

タラン・バトラー

2作目から、ジョン・ウィックは、Taran Tactical Innovationsのカスタムガンを使用するようになる。

JW2 Combat Master Package – Taran Tactical Innovations

タラン・バトラーという凄腕のグランドマスターのもとで、キアヌ・リーブスは、実に3000発もの実弾射撃を行い、ガン・フーの所作に取り入れることができるようになったのだ。

だが、彼が提供したのは、トレーニングとタイアップにとどまらなかった。
近接射撃を行うガン・フーの撮影において重要なプラグガンの開発と提供だ。
エアガンの進化は著しいが、ことバリエーションにおいては、制限がある。
しかし、実銃による空砲の使用は危険が伴う。

ブランドン・リーに死をもたらした直接の原因は空砲である。
そのことをよく知り抜いて、銃器の取り扱いに厳しかったチャド・スタエルスキにとって、完全にマズルが塞がれた安全性の高いはプラグガンは、撮影の限界を取り払ってくれるものとなった。

ジャクソン・スピデル

ジョン・ウィックでキアヌ・リーブスのスタントダブルを演じるのは、ジャクソン・スピデル。

彼によれば、キアヌ・リーブスは、その出番の実に98%を自分で演じているらしい。
自由の効かない肩と首。
痛みの治らない膝を引きずりながら、キアヌ・リーブスはガン・フーアクションを実践している。

では、2%しか出番のないスタントダブルが何をやるのかといえば、それは本当に危険なシーンだ。
皆さんは、ジョン・ウィック:パラベラムのエンディングを覚えているだろうか。
ジョン・ウィックは、ウィンストンに銃撃されて、コンチネンタル・ニューヨークの屋上から落下する。
あれは背景以外はCGではない。
実際に、ジャクソン・スピデルが落ちているのだ。

彼は、あのTENETのアクションシーンをコーディネートし、バレリーナ:The World of John Wickではスタントコーディネーターとして、アナ・デ・アルマスを鍛え上げている。

ルカ・モスカ

The Tailor
Luca Mosca

Day or night, high-profile engagements demand one look the part. The most discriminating operatives pay a visit to the Tailor for their most rigorous apparel needs.Combining high fashion with high function, the Tailor is a master of their craft, creating bespoke garments enhanced with cutting-edge technology that protects and moves with the wearer.

John Wick Franchise | Official Site | Lionsgate

これは全くの余談なのだが、チャプター2に登場し、ジョン・ウィックに防弾スーツを提供したコンチネンタル・ローマのテーラーを演じたルカ・モスカは、このシリーズの衣装デザイナーだと初めて知った。
なんだよ、本職じゃないか。

Wick is …

50代というDecadeをジョン・ウィックで過ごせたことを、キアヌ・リーブスは本当に感謝している。
陰りの出始めていた彼の人気は、このシリーズで復活を果たし、それは確固たるものとなった。

Wick is Pain.
彼の満身創痍の姿を見れば、それはリアルな痛みを彼にもたらした。

But Wick is…
だが、その後に彼が挙げるものの多さを見れば、その痛みに見合う以上のものが手に入ったのかもしれないね…

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