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『タブーの正体!: マスコミが「あのこと」に触れない理由』レビュー 「三つの恐怖」

なんとなく、触れてはいけないことが世の中に存在するんだろうというニオイはするものの、それがいったいどんなもので、それに触れるとどんな恐怖が待っているのかはまったく想像できない情弱な僕。
情弱なりにネットを泳いでいると、ネットで大ニュースになっているものが、テレビ新聞でまったく報道されていない。

When Ikumi Yoshimatsu refused to work for any mafia-connected talent agency, she found out standing up for the right thing is a sure way to get knocked off your throne.

情報源: The Beauty vs. Japan’s Beasts

ミス・インターナショナル吉松育美さんが、安部首相夫人である安倍昭恵さんまで巻き込んで海外では大々的に報道されているものが、日本ではまったく報道されていないのだ。
コトの真実はまったくわからないとしても、話題としては相当大きなもののはず。
真相究明にいたらなくとも、いつものようにワイドショーで消費するには格好のネタのはずなのに、どこからも煙が立つ気配もない。

なんなんだろう? と思っているところにたまたま本書に出くわした。

『噂の真相』の副編集長であった著者が、三つの恐怖によってメディア・タブーが形成されていく課程をわかりやすく解説してくれる。

タブーはさまざまな要素が複雑に絡み合ってつくられるものではるが、つきつめれば、最後は暴力、権力、経済のうちのどれかに対する恐怖にいきつく。この三つの恐怖を軸にタブーを観測すれば、なぜ、メディアはこうも簡単にタブーに屈するのかという本質的な問題を解く鍵が見えてくる気がするのだ。

自らも暴力の犠牲者になったことにより、そのトラウマが暴力に屈するココロを生んでいくさまを率直に記述している。
これを読めば、ミス・インターナショナル吉松育美さんの件が、まったく報道されないのもよくわかる。
そして、マスコミ自身が「ゴミ」の発生源なのではなく、単に三つの恐怖に屈して報道機関の座から転落したという構図も理解できる。
そしてこのガチガチの構図を理解すると、暗い気持ちにしかならない。
最近の若者は、新聞もニュースも見ないと非難されてしばらく経つが、こんな偏ったモノの考え方を刷り込まれるくらいなら、その方が自衛のためには有効だ。
いっそ広告主に全て買い取ってもらって、僕らを巻き込まないサイクルを確立してくれればいいのに。
ハリウッド映画では、政府を敵に回した主人公が証拠のネガとテープを信頼できる新聞記者に渡すことにより窮地を脱するという場面がよくあるが、その脚本はこの極東の島国では書き換えなければならないだろう。

この出来上がった構図を理解すればするほど、今までのアレコレに納得するし、この先のアレコレに暗澹たる気持ちになる。
しかし、巻末に個人でタブーを破った数人の記者の事例が語られている。
個人の情熱と反骨心でタブーを破った記者たち。
それは数少ない本当の希望であったが、その後の不遇な状況を見れば、全員それに続くべきだなどと軽々しくは言えないだろう。
だから、そのギョーカイにいない人間としては、その構図を理解するべきだ。
この三つの恐怖に押しつぶされた挙句に、ようやっと情報というものが僕らに届いているという構図に。

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