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「007 スペクター」見た人のためのレビュー(5)「ボンド一家MI6」

前任のMという女王が仕切っていた組織から、ダブルオーセクションはボンド「一家」と言っていいほどの強い絆で結ばれたチームに様変わりしているようだ。
Qやタナーまで加わって一家総出で敵に殴り込むなんていう光景は、これまで目にしたことがない。

円熟の騎士

情報源: Focus Of The Week: Spectre’s Day of the Dead scene | James Bond 007

以前、サム・メンデスが、新しいMI6ではボンドが一番の経験者となるとインタビューで答えていた。
確かに、このチームの要になっているのは、成熟したボンドだ。
ダブルオーエージェントとして様々な危機を乗り越えてきたボンドは、もはや何事にも動じる気配はない。
何が起きようと、眉ひとつ動かさず、己のなすべきことをなす。
前任のMという女王との信頼関係から醸成された騎士の信念は強固だ。
遺言代わりの指令も、躊躇することなく、自らのなすべきこととして受け入れる。
彼女がすることには理由がある。
だから、それをやるのだと。

そして、ダブルオーセクションの面々もそのように理解している。
ボンドが動く時、そこに理由がある。
そして障害が大きくなるほど、その方向性に間違いがないことも。
だから、彼を支えるのだと。

M

情報源: Focus Of The Week: M (Ralph Fiennes) | James Bond 007

Mもそれをよく理解している。
たとえ自らの部下が、自分の預かり知らぬところでメキシコのビルを爆破し、街を混乱に陥れたとしても。
そこには、ボンドの理由が存在するのだ。
だから彼は、停職処分にしても、クレジットカードを停止したりはしない。
前任のMのように、ボンドの移動の自由を根底から奪うことはしない。
ヒルデブランド商会でボンドを「よく戻ってくれた」と迎える時、彼は確信する。
前任のMであったなら、「わたしは、ひとつだけ正しいことをした」とつぶやいていたかもしれない。

苦労人のMは、相変わらずいい人ぶりがにじみ出ている。
ボンドに停職を言い渡す時、「今抱えているものをすべて忘れろ」と言い放つのはボンドを思ってのことだろう。
組織のサポートはない、無茶はするなよと。

マネーペニー

情報源: Focus Of The Week: Moneypenny (Naomie Harris) | James Bond 007

彼女はボンドに不満を持っている。
彼が行うことに理由があり、それが間違っていないことはよく理解している。
しかし、なぜそれを明かしてくれないのかと。
自分はまだ、前任のMとボンドを結びつけていた信頼の聖域に立ち入ることができないのかと。
だから、ボンドがビデオレターを見せてくれたことがたまらなく嬉しい。
その聖域に立ち入ることができたような気がしたからだ。
持ち前の秘書気質に火がついて、Mに内緒でボンドをサポートすることをいとわない。
それは、感謝とともに素敵な花を送ってよこすボンドに比べ、自分の誕生日も覚えてくれていないMに愛想を尽かしたからというわけではないだろうが…

こうして強い信頼と絆で結ばれことになったダブルオーセクションだが、肝心な要であるボンドを失うこととなった。
もちろんその理由は、祝福すべきことではある。
今のところは…

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