『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』レビュー:コックピットとアラームと

Amazon Prime Videoで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の独占配信が始まった。

前作から、実に5年の期間が過ぎている。
しかし、その期間は無駄ではなかったようで、前作でも僕を惹き込んだ精緻な表現に、より一層の磨きがかかっている。

そう、今回の目玉はモダンな空中戦だ。

コックピットとアラーム音

精緻に描かれたモニターと、リアリスティックなアラーム音。
瞬時に飛び去る対象のスピード感が、空中戦としての臨場感を高める。

この作品は、モビルスーツ同士のちゃんちゃんバラバラの格闘戦は、ほぼ登場しない。
狭いコックピットの中のモニターとアラームを頼りに、簡単に目視できないスピード感のあるものを対象に、戦闘という行為が描かれる。

それは計器戦闘、つまり、突き詰めれば機器の操作にすぎない。
必殺技を叫ぶでもなく、モニターとアラームで状況を判断し、最適なスイッチを押すだけの…

僕は、トップをねらえの第3話を思い出した。
庵野秀明が、リアルな宇宙空間での戦闘を描きたかったというシーンは、コクピットの中で瞬間的に敵か味方が通過していくだけで、パイロットのタカヤ・ノリコは、まるで状況を把握することができない。
ただ、明滅する計器を見つめているだけだ。

同僚のパイロットの死亡さえも、ただ通信が途絶したという状況で受け止めるしかない。
もっとも、死体が出なければ、それは公式にはMIAという扱いになるのだろうが…

前作では、人間と対比させることで、市街地における地上戦を臨場感高く描いていた。

飛び散るビームと、灼けて溶け落ちた破片。
それらが市街地を逃げ惑うだけの脆弱な人間に与える甚大な被害。

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」レビュー「精緻な細部描写に惹き込まれる」 – ALOG

こんなシーンがあったからこそ、キンバレーの部隊が、モビルスーツで人を握りつぶしたという行為が、とてつもなく残虐であるということをリアリスティックに感じさせる。

前作でも、見るまではあまり期待していなかった僕が、一気に惹き込まれたのは、その精緻な表現が魅力的だったからだ。
このモードで、宇宙世紀のすべてをリメイクしたら、どうだろう?

機動戦士Gundam GQuuuuuuXのモニター類は、だいぶモダンになっていて、いい感じだったよね。
ついにファーストガンダムの、「機動戦士ガンダム」のリマスターが始まるようだけど、どんな仕上がりになるだろう…

リ・ガズィ・カスタム?

出撃前の地球連邦軍の基地のシーンもリアリスティック溢れるものだった。
多様なモビルスーツが乱立せず、この時代に標準配備されているグスタフ・カール00型に統一されてプラトーンを組んでいる。

グスタフ・カール00型 | 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』公式サイト

だが、その中に異様な、しかし僕らには見慣れた機体がチラリと映り込む。

コレって、リ・ガズィ・カスタムってやつ?

僕はガンダムには精通してないのでアレだけど、たしか、ロンド・ベルのアムロ・レイ大尉は、Zガンダムという機体を使用したかったが、地球連邦軍は、頑としてそれを許さなかった。

代わりにあてがわれたのが、リ・ガズィ
それは、宿敵であるシャア・アズナブル総帥からも哀れみをかけられるような性能しか持ち合わせていなかった。

少しでも能力を向上させろというアムロ・レイ大尉の下、開発が進められたのが、リ・ガズィ・カスタムだったはずだ。
もっとも、MIAとなってしまった大尉は、一度も搭乗することが叶わなかったが…

地球連邦軍が、いや、地球連邦政府が、アムロ・レイ大尉にZガンダムを与えなかったのは、至極当然の判断だ。
白い悪魔と呼ばれた筋金入りのニュータイプに、その能力と相乗効果をもたらす機体を与えるわけにはいかない。

誰もが取り越し苦労だと鼻で笑っていたラプラスでの工作から、およそ80年。
本当に「宇宙に適した人類」というものの出現に遭遇した地球連邦政府は、その秘匿に邁進したのだ。

機動戦士ガンダムUC 見た人のためのレビュー(1)「空っぽの箱に過ぎた呪い」 – ALOG

白い悪魔が、たった一機のモビルスーツで小惑星を弾き飛ばすなんてことをやってのけたとき、地球連邦政府には戦慄が走ったことだろう。
同時に、MIAとなったことに強い安堵を覚えたはずだ。
願わくば、その死体を確認したいところだったろうが…

地球連邦政府の秘匿工作は著しい効果をあげ、U.C.0105の世界では、ニュータイプの存在なんて都市伝説以下の扱いになっている。
ギギ・アンダルシアの能力を、感受性を見ても、誰もニュータイプなんて言葉は使わない。
その言葉すら知らないように見える。

それは戦争のない、紛争すら起こらない、一見、平和な状態にあるからだろう。
大戦中は、極限状態におかれたニュータイプが、あちこちで発芽し、人々は、否応なく、その姿を目にしていたはずだから…

iBook ブルーベリー

さて、僕の目を惹いたものは、もうひとつある。
それは、ギギ・アンダルシアが使っていたラップトップだ。

これって、iBook ブルーベリーだよね?

iBook – Wikipedia

オンリーワンなクラムシェルのデザインは、この時代にもクラシックとして愛用されているのだろうか?
もっとも、PowerPC G3なんかじゃ、どうにもならないだろう。
中身は、Mの何番目かににアップデートされているはずだ。
それとも、Mでもない全く新しいシリコンなのだろうか…

U.C.0105の世界でもAppleが存続しているのなら、株価はいったいいくらになっているんだろうね…

さて、いよいよ、ブライト・ノア大佐にも地球への降下命令が降りた。
ケネス・スレッグ大佐は、例の装置を準備済みだ。

そうして、次は、いよいよラストの3作目。
結末は、どうなるんだろう。

いや、正確に表現しよう。
あの結末を、僕らは観なければならないのかな…

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