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NFL 2021 BAL レイブンズ 激闘の裏の3つの数字

ずっと彼らの前に立ちはだかってきたカンザスシティ・チーフス。
その強敵をわずか1点差で退けたボルチモア・レイブンズ。
その裏にあった数字をNext Gen Statsが教えてくれる。

勝率82%

あなたがヘッドコーチなら、勝率82%と勝率58%のどちらのプレイを選択するだろう?
これだけなら、全員、勝率82%のプレイをコールするはずだ。

では、聞き方を変えてみよう。
試合時間残り1分5秒。
1点差でリードしている。
自陣43ヤードで迎えた4ダウン残り1ヤード。

あなたは、どんなプレイを選択するだろうか?

ボルチモア・レイブンズは、HC ジョン・ハーボーは、ギャンブルを選択した。

残り1ヤードといってもまだ自陣。
失敗して少し前進されれば、サヨナラFGのお膳立てには十分だ。
リスクを抑えるなら、パントを選んで相手を押し下げておくのが賢明な判断だろう。

しかし、AWSの機械学習の意見は違う。
彼によれば、ギャンブルを選ぶことが勝率82%であり、パントを選択すると、それは勝率58%にまで低減してしまうのだ。

彼らがそのプレイを成功させる確率は75%。
成功すれば勝率は99%にまで跳ね上がる。
しかし、もし失敗すればソレは一気に33%にまで低減する。

様々なシチュエーションを説得力を持って提示してくるAWSに対して、腹を括って物事を決断するのはまさしくギャンブルのメンタリティーが必要になるということだ。
そして、確率が絶対ではないことを、つい先日テネシー・タイタンズが証明して見せた。

走る走るQB

少し話は脱線するけれど、こんなガッチガチのパワープレイでもQBがボールキャリアになるなんて、NFLも変わったものだ。
以前、いわゆるアスレチックQBタイプに見えないバッファロー・ビルズのジョシュ・アレンが、デザインされたパワースイープでボールを持っているのを見た時も驚いた。

「昔はな、QBが走るとヘッドコーチが激怒したんだぜ」

なんていうと老人扱いされるだろうか。
日本アメリカンフットボールのHall of Famer プロフェッサー・ケンが全盛期の日大フェニックスのショットガンを評して12人でやっているようなものだと言っていた。
通常、QBは優秀なRBにボールを渡すだけ、残り9人がブロックする。
しかし、優秀なRBでもあるQBがダイレクトにスナップを受け取るならば、ブロックに向かうのは10人になる。
これを12人でやっていると表現したのだ。

どんどん強力になっていくディフェンスに対抗するために、NFLのコーチたちは12人でオフェンスをやると決意したのだろうか。
怪我のリスクには腹を括って…

ブリッツ12.9%

この日、レイブンズのディフェンスがブリッツを入れたのは、わずか12.9%。
ディフェンス・コーディネーターのドン・マーティンデールのもとでは、最小の数値だ。

優秀なパサーに対しては、ブリッツは裏目に出ることがある。
前回の対戦で、それが身に染みた彼らは、我慢強く迎撃することを選択したのだ。

最初の1

今回の3つの数字の中でいちばん重みがあるもの、それが「1」だ。
そしてこれは、AWSが、Next Gen Statsが弾き出したものじゃない。

ボルチモア・レイブンズのQBラマー・ジャクソンが、はじめてカンザスシティ・チーフス相手に刻んだ1勝なのだ。

MVP対決と言われながら、これまで直接対決で勝てておらず、パトリック・マホームズはリングまで手に入れている。
そして先週は、自らのファンブルで星を落としてしまったばかり。

彼は、自らが何者であるかを証明するためにもリングを手に入れなければならない。
しかし、近道はない。
Life is Inches.
1インチずつ前に進むしかない。
彼の、あのギャンブルは、それを体現しているのかもしれない。
そうしてそれを披露した相手が、A Game of Inchesと謳ってシーズンに突入したカンザスシティ・チーフスであったのは、もはや必然と言うべきなのかもしれないね…

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