NFL 2026シーズンのスケジュールが発表された。
必要以上の盛り上がりに、またもリーグの過度の興行的な演出の匂いを感じ取るかもしれない。
しかし、スケジュール作成の裏側を知れば、これこそが担当者たちにとってのスーパーボウルであることが理解できるはずだ。
その過酷なスケジュール作成のバックステージを、NFLが公開中。
NFLのスケジュールはどうやって作成されるのか?

NFL32チームが、18週にわたって行うゲーム数は合計272。
そのスケジュールには、576の枠が存在する。
ひとつのチームだけでも、どこで誰と対戦するかの選択肢は10億通り存在し、リーグ全体では、実に数百兆の選択肢が生まれることになる。
17試合の内訳は
それぞれのチームは、バイウィークが与えられるため、実際にはレギュラーシーズンで17試合を行うことになる。
その組み合わせには、絶対的なルールが存在する。
同地区のチームとの対戦(6試合)
自分の所属する地区の他3チームと、ホームおよびアウェイで2回ずつ対戦。
同カンファレンス内・別地区との対戦(4試合)
同じカンファレンス内にある別の1地区(4チーム)と総当たりで対戦する(ホームで2試合、アウェイで2試合)
別カンファレンスの地区との対戦(4試合)
別のカンファレンスにある1地区(4チーム)と総当たりで対戦(ホームで2試合、アウェイで2試合)
前年順位に基づく同カンファレンス内の対戦(2試合)
同カンファレンス内でその年に総当たりしない残り2つの地区において、前年に自分と同じ地区順位で終わったチームと対戦。
例えば、あるチームが前年地区1位だった場合、他の2地区の1位チームとそれぞれ対戦する。
前年順位に基づく別カンファレンスとの対戦(1試合)
別カンファレンスの中で、今年・昨年・来年のローテーション対象になっていない地区の中から、前年に自分と同じ地区順位だったチームと対戦する。
OK!ここまでは、オートマティック。
このルールに基づけば、対戦相手は、すぐに確定する。
最適化の遠い道のり
だが、問題は、ここからだ。
そのゲームを、いつ、どこで開催する?
同じチームが連続してアウェイになってない?
マンデーナイト、サンディナイト、サーズデイナイト、それぞれの放送局のプラムタイムとの兼ね合いは?
あ、そうだ!
メルボルン、リオデジャネイロ、ロンドン、パリ、マドリード、ミュンヘン、メキシコシティ、ここでインターナショナルゲームが行われることも忘れないでよ!
ワオ!
とてもじゃないが、人知を超えた作業になることは、あなたにもお分かりいただけるだろう。
しかし、Keep calm!
現在は、機械学習という強い味方がいる。
そう、AWSのサーバーが、この処理に当たってくれる。
3000台のAWSサーバー
現在のテクノロジーを持ってすれば、1台のAWSサーバーで、せいぜい数時間もすれば算出可能と思った僕は、認識を改めさせられることになる。
かの機械学習の力を持ってしても、AWSにとっても、相当に歯ごたえのある作業に、稼働しているのは、実に3000台だ。
1月のレギュラーシーズン終了直後から、5月の発表直前まで、この3000台のAWSサーバーが昼夜ぶっ通しで稼働し続けるのだ。

そうして最後の変数、ドラフト会議が訪れる。
もし、ここでスター候補生のQBが指名され、フランチャイズQBが交代したり、移籍なんてことが起きると、プライムタイムのゲームの価値が変動してしまう。
もう一度、AWSの電源スイッチを入れなければならなくなる。
スケジューリングの責任者であるハワード・カッツが、ドラフトを見つめる目は真剣そのものだ。
もっとも、その観点は、彼特有のものではあるが…
賢明なあなたなら、こういう疑問が湧くはずだ。
では、コンピューターが登場するまでは、いったいぜんたい、どうやってスケジュールを作成していたの?と…
それには明快な回答がある。
それは、ひとりの男によってなされていたのだと。
ヴァル・ピンチベック
彼は、オリジナルのコルクボードの前に陣取ると、何時間もボードを眺め続ける。
ただただ、マカダミアナッツを頬張りながら。
そして、ひらめきを得ると、手作業で、紙製のタグを移動させていた。
現在使用されている、カナダのOptimal Planning Solutions社が開発したソフトウェアによるGurobi Optimization(最適化ソルバー)も、彼の思考モデルがベースになっている。
彼が長年使用していたNFL本部の部屋は、ピンチベックルーム(Valjean A. Pinchbeck Jr. Room)と正式に名付けられ、現在でもスケジューリング作業に使用されている。
彼は、NFL同窓会(NFL Alumni Association)によって授与される名誉あるレザーヘルメット賞(Order of the Leather Helmet)も受賞している。
この受賞により、彼はジョージ・ハラス、アート・ルーニー、ヴィンス・ロンバルディといった、NFLの歴史に名を残す伝説的な人物たちと肩を並べることになった。
さらに、スポーツ放送における、名誉の殿堂入りも果たしている。
僕らは、NFLで、人間離れしたアスリートを、しばしば目撃することがある。
そうして彼らの残したスーパープレイは、脳裏に焼きついている。
3000台のAWSに匹敵する知性が存在したことも、記憶に刻み込んでおくべきだよね。
だって、スケジュールが滞りなく運んでいくこと全てが、彼のスーパープレイだったのだから…








