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ペイトン・マニング引退「さよならゲーム」

会見の最後は「オマハ!」で締めくくられた。
誰もが望んだスーパーボウルの勝利を手にして引退という大団円を、僕らはようやく迎えることができたのだ。

フットボールを変えた男

ペイトン・マニングの出現以降、フットボールが変わってしまったとよく言われる。
彼が何を変えたのかという点に関して、ジョン・エルウェイがわかりやすく端的に解説している。

エルウェイGM、「マニングはフットボールを革命的に変えた」

QBマニングに最大限の賛辞を送ったエルウェイGM。AP Photo/David Zalubowski 【画像クリックで拡大】  デンバー・ブロンコスのクォーターバック(QB)ペイトン・マニングが現地7日、正式に現役引退を表明。会見に同席したジョン・エルウェイGMは、去りゆく名QBに最大限の賛辞を送った。 …

確かに彼の出現以降、ハドルを解いた後のオーディブルコールの方が長くなった。
それもただの思いつきではなく、膨大な準備に基づく、その状況での最適解を導き出そうとする結果だったのだろう。

そうして樹立された記録は数知れず。

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So. Many. NFL. Records.

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手にした栄誉も書ききれないほどだ。
引退時に、これだけびっちりと埋め尽くされたゲームボールを手にできる選手がどれほどいるだろうか…

 

ドラフト全体1位指名でスタートし、勝利したスーパーボウルを最後のゲームとして引退する。
背番号通りの18年間のキャリアの中で、数々の新記録と栄誉に輝く。
フルハウスどころか、ロイヤルストレートフラッシュだ。
だから、なかなか引退発表されないことに不安があった。
もしかしたら、まだ現役を継続するのか?と。
引退にも、様々なタイミングがあるだろう。
絶頂期にスパッとやめてしまう、ボロボロになるまでやり続ける。
そのどれもが正しくその選手のタイミングだろう。
しかし、ロイヤルストレートフラッシュのまま、勝ち抜けできる選手がどれほどいるだろうか?
だから、彼ほどの選手は彼ほどの選手の責任として、この絶好のタイミングを逃してはいけないような気がしていた。
どこかのチームで苦闘した挙句、冷徹なサラリーキャップの公式に基づく解雇だなどという事態は、彼のタイミングではない。
そう、質問する記者が口々に「おめでとう!」と声をかける、愛に溢れた記者会見こそが彼にはふさわしい。

さよならゲーム

彼ほどの高みでプレイしたことなどなく、彼ほどのプレッシャーにさらされたこともなく、彼のように全てを手に入れたことのない僕にも、一つだけ共感できることがある。
いや、それはきっと皆が分かち合える感覚だろう。
それは、自分の愛するゲームにさよならを言うことだ。
どの競技でも、それがどんなレベルであろうとも。
やっている間は苦しいことだらけで、喜びは瞬間的にしか訪れない。
しかし、いざサヨナラを告げようとすると、それができなくなる。
あらゆることを成し遂げ、全てを手に入れた彼でさえ、サヨナラとは簡単に言えなくなる。
だから、スーパーボウルが終わってからの1ヶ月、彼はそうした気持ちと線引きをしなければならない責任感の間で葛藤を繰り返していたのではないだろうか?
そうしていよいよ決断した後の涙は、特別なものだ。
寂しいとかせつないとか、決して言い表すことができない感情に、自動的に絞り出される涙。
超巨大興行の花形選手の根底に、いつまでもただフットボールをやっていたいだけの少年の面影が垣間見える。
引退の手順は、リーグの誰かさんが、その確立された方法を教えくれるだろう。
しかし、ゲームにさよならを言う方法はまだ見つかっていない。

ペイトン・マニング引退記者会見スピーチ全文

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