ジャック・リーチャーがAmazon prime videoでリメイクされて配信が開始された。
トム・クルーズが演じたものとは全く趣の違うジャック・リーチャーの登場だ。
そうして、このアラン・リッチソンが演じる巨漢のジャック・リーチャーは、原作のイメージ通り。
何が違うかといえば、そのサイズだ。
あのデザートイーグルを腰に忍ばせていても目立たないほどの巨体なのだ。
フットボールのポジションで言えば、トム・クルーズはSがいいところ。
しかし、身長188cmのアラン・リッチソンにはDEがしっくりくる。
DEと言ったって、決してEDGEなんかじゃない。
3-4のDE、それもスプレッドが普及する前の。
SとDEでは、同じキャラクターであるはずもない。
トム・クルーズは、群衆に紛れて逃亡するシーンがあった。
しかし、アメリカの街中でさえ目立つ巨体のアラン・リッチソンでは、そのような振る舞いはできない。
それに、その必要はない。
彼は、自らを取り巻く状況をなぎ倒して、ただまっすぐに進んでいくのだ。
身を守るためだけの最低限の暴力とは違い、彼は自らブリッツを仕掛ける攻撃性もある。
そして、無防備の敵を背後から撃つことも厭わない。
自由な放浪者
ジャック・リーチャーで最も惹かれるのは、彼の暮らしだ。
クレジットカードも携帯電話も使わず、現金と歯ブラシ、そしてフランス軍の古い勲章だけを持って着替えを持たずに旅をしている。
家を持たず、運転免許証を含めてデータベースには、いっさいその痕跡がない。
しかし、ひとたび彼が退役した合衆国陸軍の記録をあたると、出てくる出てくる。
そこには、数々の叙勲の歴史と、合衆国陸軍憲兵隊特別捜査官として数々の事件を解決した輝かしい記録がひしめいている。
軍からの恩給を受け取りながら、全米を足のつかない長距離バスで、ただ好きなところに行くという自由な暮らしを続けている。
その自由を守るための力が彼にはある。
ウェストポイントを卒業して、世界最強の合衆国陸軍で身につけたコンバットスキル。
そのスキルは、同じ人殺しの訓練を受けたものたちを犯罪者として追う憲兵隊に在籍したことでいっそう高まったはずだ。
さらに、シャーロック・ホームズ並みの観察眼。
余談ながら、ウェストポイントでフットボールをやっていた彼は、あの伝統のArmy–Navy Gameには出場できていないようだ。
強すぎるバイオレンスに、わずか1ゲームの出場のみでチームを放り出されてしまったらしい。
正義のアウトロー?
日本語版では、正義のアウトローという副題が付けられている。
しかし、ジャック・リーチャーは、自らが巻き込まれてしまった事件の謎を解き明かそうと、熱く正義感をたぎらせたわけではない。
事実、自らの逮捕が誤認であると証明されると、彼はさっさと街を離れようとする。
そうしなかったのは、身元不明だった死体が、ただ一人の肉親である兄のジョーだったからだ。
そうして兄の思い出を振り返ることで、ジャック・リーチャーの生い立ちも語られていく。
海兵隊員の父を持つジャック・リーチャーは、オキナワを含め世界各地を転々としながら育った。
Reacher (2022)
情報源: Reacher (2022)
強すぎる正義感とそれが許されない実社会のしがらみを目の当たりにした経験が、現在の何者にもとらわれない生き方を選ばせているのだろうか。
ペイバックと言いながら淡々とプラクティカルに物事を遂行するジャック・リーチャーには、感情の揺らぎは見られない。
兄への想いなどより、目の前の唾棄すべき存在を叩き潰すことだけに気持ちがいっているのかもしれない。
しかし、そうではなかった。
感情を爆発させることのない彼は、静かにエモーショナルな行動をとってみせた。
なぜフィンリー警部はマーグレイブに?
Malcolm Goodwin in Reacher (2022)
情報源: Reacher (2022)
ハーバードを卒業し、ボストン警察で20年近く勤め上げ、別れた妻がいる。
そして現在は禁煙6ヶ月目。
そんな状況を、シャーロック・ホームズ並みの観察眼を持つジャック・リーチャーに全て言い当てられてしまったフィンリー警部。
ジョージアのマーグレイブなんかに突然越してきた彼は、街では完全な余所者扱いだ。
だってそれはそうだろう。
どんな時でもツイードのジャケットを身に纏い、なんだったら犬の首輪までツイード製だ。
それに何より、彼はブルース嫌いなのだ、黒人なのに。
Anyway、彼はマーグレイブという南部の片田舎にやってきた。
信頼できる友人のFBI捜査官ピカードの「マーグレイブだけはやめておけ」という忠告も聞かずに…
余談ながら、アトランタのBARで話しかけてきた女性が、彼がボストン出身であるとわかるとこんなことを言う。
「お願いだから、あのスーパーボウルの話はしないでね。あの悪夢を思い出したくないの。」
そう、2017年の第51回スーパーボウルで、前半圧倒的にリードしていたアトランタ・ファルコンズが、ニューイングランド・ペイトリオッツにスーパーボウル史上最大の逆転負けを喫した、あのゲームのことだ。
本筋とは全く関係ないが、こういうちょっとしたセリフが楽しいよね。
シーズン2の制作も決定
早々にシーズン2の政策が決定。
今回は、原作の第1作「キリング・フロアー」を映像化したけれど、順番にやっていくのだろうか?
まさか、全25作やることもないだろうし…
ニーグリーなんて頼れる渋いパートナーの存在は、作品の厚みを増してくれる。
そんな存在のいるシリーズが、面白くないわけがないよね。