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Re:LIFE〜リライフ〜

「Re:LIFE〜リライフ〜」見た人のためのレビュー「ただ書き直せばいいんだよ」

練りに練ったシナリオは、いつだって書き直しの憂き目にあう。
そうして、それを迫るのは、いつだって自分以外のナニカ。
自らが進んで書き直すことはないだろう。
ヒュー・グラント扮する脚本家のキースも、その人生に、その状況に、自らの人生の脚本の書き直しを迫られる。

ロマンティック・コメディと位置づけられる本作は、ご婦人には、そのように映るかもしれない。
しかし、いい歳のオトコには、ようやくカサブタになったものが疼きだし、その他多数の傷に染み入る映画だろう。
それは、絶えないヒュー・グラントの笑顔に、現状と折り合いすぎたもののシニカルさを感じるほどに。

The Rewrite

昔、手に入れた栄光は、今の悲惨さを際立たせるためにしか存在していない。
誰もが名作と口にする映画の脚本でオスカーを手にしたものの、人々が覚えているのは、その一本だけ。
別れた妻は、その名作を手がけ、現在も売れっ子である監督と再婚した。
料金が払えず電気も止められてしまうような父親の自分なんかじゃあと、一人息子にも連絡できずにいる。
そんな彼が講師の仕事を引き受けたのは、生活のため、いや生存のため。
脚本の書き方を教室なんかで教えることができるはずがないと信じる彼の書き直した人生のシナリオは、田舎の講師で糊口をしのぎ、ハリウッドに返り咲こうというものだった。
才能あふれる教え子を見出したことにより、彼はプロヂューサーとして声がかかる。
だが、自らのシナリオどおりにコトは進んでいるのに、彼は自らの意思でそれをリライトすることになる。

主人公の置かれた状況は悲惨だが、ヒュー・グラントの笑顔のおかげで打ちひしがれることはない。
Re:LIFE〜リライフ〜という邦題だからって、生まれ変わろうなんて大仰なものじゃない。
そう、ただ書き直せばいいんだよ。
難しく考えずに、さらっとリライトしてこの先のストーリーを進めていけばいい。
人生なんて、ただ、それだけの話だ。
だから、原題のThe Rewriteの方がしっくりくる。

肩肘張らずに横目で見ているうちに、じんわり沁みてくる。
背負い込んだ傷と出口の見えない状況に疲れ果て、とてもじゃないが映画なんて見れないよという方にこそオススメしたい。

この映画でココロに残ることが2つある。
それは、エージェントとRPGだ。

エージェント

この島国でしか働いた経験がなく、しかもあのような業界にいない人間にとって、エージェントという職業はピンとこない。
しかし、主人公がその困り果てた状況を隠すことなくさらけ出せて、それに対して実効的な救済策を提示できる。
そんな頼りになる存在は、どんな職業にあっても、たとえ極東にいようとも、いて欲しい。
もちろんあのエレンのようなエージェントは映画の中だけの存在かもしれないが、引いたところから困難を客観的に共有してくれる存在は貴重だ。
それは、困難を共有することなく、ただ噂話のネタとして消費するだけの極東の島国の人間関係に飽き飽きしているからかもしれないが…

RPG

以前、Tumblrで見つけたものにこんなものがあった。

https://alog4.tumblr.com/post/137275783078/%E8%87%AA%E5%88%86%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A9-2012%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E4%BD%8F%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%93%E3%82%8D%E3%81%AB%E3%81%BB%E3%81%A8%E3%81%BB%E3%81%A8%E5%AB%8C%E6%B0%97%E3%81%8C%E3%81%95%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F

見知らぬ土地に行き、お気に入りのRPGをスタートさせる。
もちろん手持ちのアイテムはゼロだが、そのかわりシガラミもゼロだ。

脚本家のキースは、ビンガムトンに行かざるをえないことで、強制的にRPGを始めさせられることになる。
ほとんど晴れることのないニューヨーク州の外れで、カリフォルニアの陽光を失った。
しかし、スマートだがココロが感じられない人々との関係を断ち、不器用だが実直な人々との関係を築いていく。

行き詰まったら、好きな場所でRPGを始めればいい。
いらないものは、全部捨ててかまわない。
困ったら、シナリオをチョチョっと書き直してまた進めばいい。
誰でもが、自分の人生の脚本家なのだから。
その時、あなたの隣に困難を共有してくれる誰かさんがいてくれれば、それ以上の幸運はないだろうが…

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