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WBC2013 日本VS台湾 後味の良い激闘と継続中の「311」

彼らは、自国チームの負けが確定すると、即座に相手チームへの祝福を、自国の国旗に書き込んだ。
彼らとは台湾の人々のことで、その国旗には「日本おめでとう」と書き込まれていた。

プロ野球選手がその業務以外で死力を尽くす場面には、そうはお目にかかれない。
ホームランがどうしたとか飛距離がどうのというほんわかしたゲームではなかった。
シングルヒットが出るか出ないかで勝負が別れる。
いや内野安打でも、フォアボールを選んでもファインプレーとなるような紙一重の展開。
モメンタム、流れを作ることなど出来なかったが、勝負どころの盗塁で力づくでチャンスをもぎ取った。
やじろべえが一瞬傾いた時に、たまたまゲームセットを迎えたような展開。
両チームとも、それぞれに怖さを味わったに違いない。
日本チームは、チームになって初めて全員で勝負強さを手に入れるという機会に遭遇し、有機的なチームに昇華した。
そして、あと1イニングでチャンピオンチームを屠るという絶好のチャンスを逃した台湾チームは、次回の格好のモチベーションを手に入れた。
この悔しさを味わった台湾チームは、今回の勢いに加え、よりたくましくなって立ちはだかるライバルとなるだろう。

ことナショナルチーム同士がぶつかる試合は、どのスポーツでも、普段僕らが忘れているナショナリズムを妙な具合に引きずり出す。
そして良質の高いレベルのゲームは、いつのまにか民族の代表の代理戦争の様相を呈していく。
そしてその熱は、自国相手国それぞれを巻き込んでネガティブな熱風を撒き散らし、張り巡らされたソーシャルメディアがボタンひとつでたやすく、それを増幅させてしまう。

しかし、今回は熱風は吹かなかった。

吹いたのは、さわやかな風そのもの。
そして、そのさわやかな風を増幅させたのも、これまたソーシャルメディアだった。

僕ら日本国民は、台湾の人々に大きな借りがある。
その借りを返せていないだけではなく、お礼さえきちんと伝えられていなかった。
奇しくも「311」からちょうど2年というころに開催されたゲーム。
あの震災発生直後、いち早く義援金を届けてくれた台湾の人々に、当時の民主党政権とマスコミは正式に感謝を伝えきれていない。
例によって大陸の「うるさ方」に配慮をしたのかもしれないが、感謝をあらわすべき時に政治力を発揮すべきではない。
もっとも、政治力を発揮すべき場面ではそれをやらなかったばっかりに、今では政権を担えない野党として共産党といい勝負になってしまったが。

以来、僕ら日本国民の喉に刺さり続けていた小骨。
その小骨を取るべく、ある日本人がTwitterで呼びかけた。
球場へ行く日本人に横断幕やプラカードで台湾への感謝を伝えて欲しいと。
それに反応した野球ファンが、思い思いのメッセージボードを持ち寄り、スタンドを埋めた。 事前に伝わっていた台湾の人々も、このメッセージを受け取り、過激なプラカードを控えるよう呼びかけあっていた。
直前の韓国戦で「北の将軍様の御曹司」の画像まで持ちだして韓国側を攻撃していたことを心配しての呼びかけだっただろうが、この呼びかけがなくても酷いものは持ち込まれなかったであろうことは想像に難くない。
寛大な台湾の人々は、こうした行動をまたも好意的に寛大に受け止めてくれた。
そして「台湾のマスコミ」は大々的に報じてくれた。

謝謝台湾

謝謝台湾2

謝謝台湾3

「どうだい、俺らは好かれてるんだぜ?!」 と「日本人のウケの良さ」にあぐらをかいている場合ではない。
台湾の人々の寛大さと振る舞いに学ばなければならないだろう。

もし僕らがこのゲームの敗戦という事実に直面していても同じ振舞いができていたかどうかは自問しなければなるまい。

そしてなにより「復興してほしい」といち早く義援金を届けてくれた彼らの思いをムダにすることなく、もう一度「311」に目を向けなければならない。
あれからずっと喉に突き刺さり続けている、とても小骨とはいえない巨大なモノをそろそろ引きぬく作業に本腰を入れなければならない。
「アベノミクス」で生み出されるであろう大きな利潤が、渇ききった東北の喉を潤すことにつながればと願っているのは僕だけではないだろう。

台湾ナインs

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