サイドラインやフィールドの声を拾って見せてくれるNFLのSound FXシリーズ。
歴史に残るシーホークスとパッカーズの激戦では、サイドラインの表情と様々な感情を伴った声、これらがあますところなく映し出されて、見ているコチラも忘れていた種類のエモーショナルなナニカを思い出す。
第4Q終盤の動画はコチラ
残り僅かの時間となっても活路を見いだせないシーホークスオフェンス。
あろうことかのインターセプトに沈痛な静寂のサイドライン。
それでもQBラッセル・ウィルソンは、声を張り上げてチームを鼓舞し続ける。
反応するものは誰もいないが。
陽気なポーカーフェイスのピート・キャロルは、喜びを爆発させる以外は表情を崩さない。
議論となった、パッカーズのSモーガン・バーネットがインターセプト後のリターンではなくダウンしたプレイも、LBジュリアス・ペッパースが指示している様子がしっかりと映し出されている。
一転してTDを奪われ、オンサイドキックも決められたパッカーズサイドラインは、呼吸さえ忘れたように黙りこむ。
まだリードしている状況なのに。
それにしてもQBラッセル・ウィルソンの2ポイントコンバージョンはスゴイ!
ザ・キャッチのモンタナの姿を彷彿とさせる。
しかし投げた方向を考えれば、あれ以上のプレイだ。
オーバータイムの動画はコチラ
皮肉にも、それぞれのファンの子供の表情が、この先の結果を暗示しているようで興味深い。
顔をあげたまま、まっすぐフィールドを見つめ続けるシーホークスファンの子供。
そして心配そうにダディを振り返るパッカーズファンの子供。
彼らは、この先おこることを予見しているようだ。
メンタリティーの差
能力もメンタリティーもくぐった修羅場の数を考えても、プロスポーツのエリート中のエリートの彼らに対して、メンタルの差だよなんて一般ピーポーが評論するのは、おこがましい。
しかしあらためてこの2つの動画を見る限り、このゲームにおいては結果的にその差があったのは否めない。
それはパッカーズが弱いのではなく、シーホークスがたくましすぎるという意味で。
そしてその根幹には、ヘッドコーチのピート・キャロルのパーソナリティーが強く影響しているように思える。
彼は一見、喜怒哀楽を自由に表現するように見えて、その感情を解放するのはポジティブな状況の時だけだ。
ネガティブな状況では、顔色を変えることなく平静を保ったまま。
そしてポジティブな感情の解放も、それは主にプレイヤーへの賛辞に使われている。
こうした土台がチームに合ったからこそ、お通夜も終わっていよいよ葬式が始まるくらいの局面でも、QBラッセル・ウィルソンは「勝つぞ!」とサイドラインを鼓舞し続ける事ができたのかもしれない。
対してパッカーズは、ひとつのミスに、ネガティブな状況に、しばしば声を失う。
自らのインターセプトの直後でも、「勝つぞ!」と声を張り上げ続けるシーホークスのQBラッセル・ウィルソンの姿と、まだリードしている状況ながらオンサイドキックのミスでうなだれたまま動けなくなったパッカーズのTEブランドン・ボスティックの姿が、全てを表していると言ったらいい過ぎだろうか…
陰と陽のポーカーフェイス
こうしてみると、今度のスーパーボウルは、ポーカーフェイスのヘッドコーチの対決といえるのかもしれない。
誰がどう見ても陰気でポーカーフェイスなペイトリオッツのベリチックと、実は計算された陽気さのシーホークスのピート・キャロル。
陰気な策士と陽気なモチベーターの対決は、興味深い。
しかし時代は冷徹な愛国者の振る舞いに辟易してる。
それはフットボールに限らずね。
いっそ今度のスーパーボウルは、ボールの空気圧をチェックせずに行ったらどうだろう。
そして勝敗は、戦略とは決して言えない、あざとい策略では決まらないということを、陽気なモチベーターが証明してみせる場にしてみてはどうだろうか。