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2020 第54回スーパーボウル「ジャージの勝敗予想とラマー・ハント BOWL」

2020 第54回スーパーボウル 「NFLフィルムズのハイライトでラマー・ハント BOWLを振り返ろう」

NFLフィルムズがスーパーボウルのハイライトフィルムを公開。
彼らの手にかかれば、それはいつものようにエピックな短編映画のような仕上がりだ。
これを観ながら、見どころが山ほどあった、あの激闘を振り返ろう。

ロースコアゲームの匂いなのに

不思議なゲームだった。
ガチガチのロースコアゲームの匂いしかしないのに、気づけば30点もの得点がスコアボードに並んでる。
どちらのディフェンスも、相手のオフェンスを爆発させることは許さなかった。
切り裂くようなラン・アフター・キャッチは、全くと言っていいほど見られない。
エクストラヤードなんて、とんでもない。
デザイン上の最低限のゲインが奪えれば、神に感謝を示さなければいけないほど、どちらのディフェンスもフィールドを支配していた。
並の攻撃力しかないようなチームだったら、とてもじゃないが二桁得点などできなかったはずだ。
わずかなチャンスをモノにできる力を持った2チームだったからこそ、このスコアにたどり着けたはずだ。

プロボウラーTE対決のNational Tight End BOWL

普段の爆発力を発揮させてもらえなかったのは、ふたりのプロボウラーTEも同様だった。
しかし、明るいニュータイプとしての爆発力は発揮できないぶん、彼らのプレイはいぶし銀のようなクラシックなTEの輝きを放っていた。
ボールキャリアーのために献身的なブロックを行い、プレイアクションの短いパスを確実に補給した。
結果的にインターフェアが、二人の、いや2チームの明暗を分ける象徴となったのは印象深い。
49ersnのジョージ・キトルは、畳み掛けるチャンスをペナルティーで失い、チーフスのトラビス・ケルシーは、追いかけるチャンスを手に入れることができた。
勝利も手に入らず、自分のベストバージョンも披露できなかったジョージ・キトルは、すでに復讐心に燃えている。

一方のトラビス・ケルシーは、OBでもあるレジェンド、トニー・ゴンザレスの祝福も受け、喜びを爆発させている。

プロボウラーTE対決のNational Tight End BOWLとしても注目を受けたこの試合で、この二人に優劣などつけることはできなかった。
しかし、勝敗という結果だけがもたらしたコントラストは、あまりにも強い。

FBに喝采を

両チームのメインウェポンが、なかなか決定的な仕事をさせてもらえない中、脚光を浴びたのは現代フットボールで最も地味な存在、FBだった。
49ersのカイル・ユーズチェックは、パスレシーブで決定的な仕事をし、TDもあげた。
もし勝利をあげていたら、MVPになっていただろうか…

Awards & Honors: 2016: AFC Pro Bowl 2017: Bill Walsh Award, NFC Pro Bowl, 49ers Community Relations Youth Football Award 2018: NFC Pro Bowl Click Here to View Kyle Juszczyk’s Full Bio

情報源: Kyle Juszczyk

一方、チーフスのアンソニー・シャーマンは、ボールに触れることはなかった。
そもそも、フィールドに登場する機会も限られていた。
しかし、ようやくリードを奪った終盤、どうしてもファーストダウンが欲しい状況で見せた彼のブロックは素晴らしかった。
完璧以上にLBをコントロールした彼のブロックの後ろでは、TBはただボールを受け取ってスプリントさえすればよかったのだから。
ドライブを継続するためのプレイだったはずが、とどめの一撃にアップグレードしたのは、全て彼の完璧なブロックによるものだ。

Ninth-year fullback enters his seventh season with Kansas City in 2019 after spending two seasons with the Arizona Cardinals. Joined Kansas City as part of a trade that sent CB Javier Arenas to Arizona. Recorded a career-long 36-yard touchdown reception

情報源: Anthony Sherman

勝負所のオプション・プレイ

印象深かったのは、チーフスが勝負所のショートヤードを何度もオプション・プレイで乗り切っていたことだ。
OCのエリック・ビエネミー自身が、コロラド大学の学生時代にオプション・プレイで走り回っていたRB出身だったからだろうか。
このゲームの第1プレイにもオプションを選択していたのは、彼なりの宣戦布告だったのかもしれない。

僕のMVPはDEフランク・クラーク

あの冷静なクラシック・ハンサムのガロポロに仕事をさせないどころか、やってはならないミスまで犯させていたチーフスのフロントは、かなりの働きぶりだった。
その中でも、目立った働きを見せたのがDEフランク・クラークだ。

Fifth-year defensive end enters his first season with the Chiefs in 2019.  Spent four seasons with the Seahawks appearing in 62 games (33 starts). During the 2018 season, led the Seahawks defense with 13.0 sacks (-52.5 yards). Traded to Kansas City from

情報源: Frank Clark

特に印象に残っているのが、チーフスが残り3点差まで追い上げた後のシリーズだ。
時間を使うドライブなど許せない、追加のTDなどもあり得ない、断ち切るしかない。
そんな状況で迎えた3 & 5。
DCスティーブ・スパグニューロは、どんな選択をするのだろうかと興味津々だった。
フツーに守れば5ヤードなんて、さっくりショートパスでいかれてしまう。
だからといって安易なブリッツは、裏目のロングゲインの恐れもある。
そこで我らがファイヤーゾーンの大将スパグニューロが選択したのは、やっぱりブリッツだった。
このプレイで、インサイドLBのポジションについたフランク・クラークは、ディレー・ブリッツで見事にガロプロを封じ込めた。

チーフスの、追い上げスイッチが入ってからのディフェンスは一段と素晴らしかった。
モメンタムを手にしたということではなく、ただただ彼らの仕事ぶりがすごかったのだ。
DBケンドール・フラーの激しいプレイぶりも印象的だった。
インターセプトをあげたことより、ディープから躊躇せずショートゾーンに迎撃機のように飛び込んでいくプレイぶりが印象に残る。
そこに守りに入った様子は一ミリも感じられなかった。

Fourth-year cornerback enters his second season with Kansas City in 2019. Joined Kansas City as part of a trade that sent QB Alex Smith to Washington. Made his NFL debut in the Redskins’ win over Cleveland (10/2/16), recording eight tackles (seven solo).

情報源: Kendall Fuller

ラマー・ハント BOWL

情報源: Kansas City Chiefs 60th season logo – 2019 Kansas City Chiefs season – Wikipedia

AFL設立60周年に、ラマー・ハント・トロフィーは初めてホームに帰還を果たした。
であれば、ロンバルディー・トロフィーがスーパーボウルの名付け親のもとに帰るのも当然の帰結なのかもしれない。
そうしてチーフスは、初めてNFLのチャンピオンとなった。
以前のスーパーボウルでの勝利は、あくまでAFLの代表としてNFLを倒したに過ぎないのだから。
そこにアンディ・リードの「初めて」も加わる初物尽くしの結末は、新しいディケードの始まりにふさわしい。
そうして、それはNFLに新しさを持ち込んだラマー・ハントを思い出させる。
トマホークチョップは途切れることなく鳴り響いていた。
もし誰も解説してくれなければ、僕はそこがアローヘッドだと、彼らのホームスタジアムだと信じて疑わなかったことだろう…

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