フットボールの正しい技術を啓蒙するために、毎週、最高のお手本のプレイを披露した選手を表彰するNFL WAY TO PLAY。
振り返ってみると、タンパベイ・バッカニアーズのRB レナード・フォーネットが第1週の受賞者となったのは、今シーズンの結末を予言しているように思える。
何故なら対象となったのは、彼のチップブロックだったからだ。
弾き飛ばされたマイカ・パーソンズ
対戦相手のダラス・カウボーイズには、マイカ・パーソンズという強力なエッジが存在する。
誰もが対策に頭を悩ます存在を、彼はチップブロックで無力化してしまった。
強力なEdgeラッシャーに対して、全てのプレイでダブルチームで臨むことは不可能だ。そんなときに、チップブロックを活用するのだと解説されている。
情報源: NFL 2022 第1週のNFL WAY TO PLAYはバッカニアーズのRB レナード・フォーネット | ALOG
予言されたChampionship Game
今シーズンの大詰め、Championship Gameでは、ひとつのパスラッシュがゲームを決定づけた。
Mr. Relevantからパスの機能を奪ってしまったNFC Championship Gameはいうまでもない。
そして、最後にドライブを継続できずベンガルズが逆転されてしまったAFC Championship Game。
大事なところで、エッジに対して無策だったベンガルズは、みすみすジョー・バロウをサックさせてしまった。
「負けに不思議の負けなし」とノムさんが言ったように、これはベンガルズ敗戦の明確な理由のひとつだ。
そして迎えたスーパーボウル。
カンザスシティ・チーフスは2人目のTE ノア・グレイを、ほぼプロテクション専任で配置した。
その結果、Sackadelphiaと異名をとるほどQBサックを積み上げてきたフィラデルフィア・イーグルスは、スーパーボウルで、ただのひとつもそれをスタッツに残すことはできなかった。
その結果は、大方の予想に反してチーフスに#VLTをもたらすことになった。
「勝ちにも不思議の勝ちなし」と言ったら、ノムさんに祟られるだろうか…
#SBLVII CHAMPIONS.
Congratulations, @Chiefs! pic.twitter.com/So2FKwTGgI
— Kansas City Royals (@Royals) February 13, 2023
どんどん強力になっていくパスラッシュ。
オフェンスが、どれだけ完璧に近い動きをしたとしても、たった1人がポケットを破ってしまえばプレイは破綻する。
NFC Championship Gameを例に挙げれば、それはゲーム自体も破壊してしまう場合もあるということだ。
強力なパスラッシュにはスクリーンやドローを織り交ぜてなんて言ってたけれど、フットボールリテラシーの向上した現在では、パスラッシャーたちは、そんなこと百も承知だ。
さらにスプレッドの恒常化は、パスラッシャーたちに狙撃ポイントを明確化させているようにも思える。
OLを強化すると言っても、気のいい彼らには体勢的な不利が付きまとう。
目の前のパスラッシャーは、爆発的なスタートとともにやってくる。
あからさまなパッシングダウンであれば、なおのこと。
であれば、プロテクション自体を強化するチップブロックの存在は大きくなっていくのかもしれない。
不勉強な僕は、このテクニックを知らなかったが、日本でも取り入れられているものなのだろうか…
22週のうち表彰されたのはDBが11人と大半を占める。
しかも、ブロックが表彰されたのは、わずか3週。
残りは全てタックルだ。
カンザスシティ・チーフス RB ジェリック・マッキノンが表彰されたのも、パスプロでの強烈なブロック。
今更と言われるかもしれないが、RBのプロテクションの重要性を実感する。
情報源: NFL 2022 DIVISIONAL ROUNDのNFL WAY TO PLAYはチーフスのRB ジェリック・マッキノン | ALOG
QBの初受賞
さて、ブロックが表彰されたもう1人は誰かって？
なんと、それを受賞したのはQBなのだ。
クリーブランド・ブラウンズ QB ジャコビー・ブリセット。
ブロックとタックルばかりが表彰されるNFL WAY TO PLAYで、何故QBが？という疑問は、ごもっとも。しかし、彼は、見事なブロックを披露しているのだ。
情報源: NFL 2022 第12週のNFL WAY TO PLAYは ブラウンズ QB ジャコビー・ブリセット | ALOG
状況の苦しいチームを、なんとか引っ張り続けた彼は、QBとして初めてNFL WAY TO PLAYで表彰されるという栄誉が与えられた。
彼が見事だったのはブロックだけではない。
Passing Scoreでも、ひところはリーグの上位だった。
彼がスナップを受け取らなくなった後も、チームが上向きになったということはない。
それにそもそも、あのチーム自体に興味がなくなってしまった…
異例の第17週
初めてといえば、NFL WAY TO PLAYが実施されないという異例の事態があった。
それは、ダマー・ハムリンの事故が起きた、第17週だ。
今シーズンのNFLで最悪のニュースは、ゲーム中に起こってしまったバッファロー・ビルズのダマー・ハムリンの心停止だった。 そして最高のニュースは、その彼が重篤な状態から回復したことだ。 そのダマー・ハムリン自身が、元気な姿で深く感謝を伝える動画を公開した。 Did We Win?という問いかけを、僕は深く噛み締めている。
情報源: NFL 2022 ダマー・ハムリンが元気な姿で感謝を伝える動画を公開 | ALOG
そもそもNFL WAY TO PLAYは、フットボールの安全性を高めるために実施されている。
そして、ダマー・ハムリンの事故においては、なんらイリーガルなヒットはなかった。
それでも、起きる時には起きてしまう…
今は、あの事故が、あの悲劇と呼ばれることにならなかったことに感謝するべきなのだろう。
そして、世界が強い連帯を示したことにも…
