第59回スーパーボウルのフライオーバーの担い手として白羽の矢が立ったのは、アメリカ海兵隊。
なぜなら、今年、彼らは、創設250周年を迎えるからだ。
そして、彼らの誕生の地は、フィラデルフィアだった…

United States Marine Corps Kicks Off 250th Birthday Celebration at Super Bowl LIX
The #SBLIX flyover 🇺🇸 pic.twitter.com/t5MdgcYA4y
— NFL (@NFL) February 9, 2025
F-35B Lightning II とMV-22B Ospreys による編隊は、何だか妙にリアリティがある。
ショー慣れしたアクロバットチームのそれとは、違うニオイが漂っている。

毎年、フライオーバーを担当するチームは、さまざまなメディアで、それを広報する。
なんだったら、このためだけにエンブレムを作成することだってある。
しかし、今回の海兵隊は、とても抑制の効いたリリースになっている。
The Super Bowl is the first of many events we will be hosting and participating in around the country during 2025 to commemorate our 250th birthday!
— U.S. Marines (@USMC) February 9, 2025
Tune in around 6:20 pm EST to see the flyover live. #usmc250 #Superbowl #SuperBowlSunday
そもそも海兵隊って
そもそも海兵隊という独立した組織の存在理由を僕は理解できていなかった。
水兵でもない、陸兵でもない、海兵という存在って何者なんだろう?
しかも、それが250周年という、ほぼアメリカ建国と同等の長い歴史を持っている。
なんなんだろうと、潜ってみた。
シンプルにいえば、軍艦に搭乗している陸兵ということになるのだろう。
そうして、その存在が誕生したのは、それが必要だったからだ。
対艦兵器の発達していなかった当時において、軍艦同士の戦闘は、結局のところ、接舷して、乗り込んで白兵戦を行うというものであったらしい。
操艦を主とする水兵だけに、その任務を負わせるのではなく、その場面で力を発揮する専門の荒くれ者を乗船させた。
それが海兵という存在らしい。
そして、当時の戦闘相手、大英帝国は、いち早く海兵隊を組織化していた。
アメリカも対抗しようとしたが、ジョージ・ワシントンが、自らの指揮する陸兵が減少することを嫌がったために、一から海兵隊を創設することになった。
その創設の地が、当時の首都だったフィラデルフィアなのだ。
そうして、僕は今回の結果に、フィラデルフィア・イーグルスの勝利にしっくり感を覚えるようになった。
海兵隊創設250周年に、フィラデルフィアをフランチャイズとするチームが負けるわけにはいかないではないか。
もし負けるようなことがあったなら、チーム全員、サミュエル・ニコラスの経営する酒場に呼び出されて、説教だけでは済まなかったことだろう。
強襲して揚陸して
対艦兵器が発達するようになると、海兵の相手は敵船ではなくなった。
もっぱら上陸した上での地上戦闘ということになる。
ひところは存在理由も不明確になり解散にまで追い込まれた。
だが、太平洋戦争で、その存在が一気にクローズアップされる。
南太平洋を支配下に収める日本帝国軍を排除する必要があったからだ。
そうして、歴史に残る激戦を繰り広げることになる。

強襲して、揚陸して、という任務を負うことになった彼らは、水陸両用の装備、並びに単独の航空支援の能力も有するようになった。
こうして、陸海空軍の全機能を備えた、即応の殴り込み部隊が確立されたのだ。
なるほど。
それで、ショーアップした広報が少ない理由も、フライオーバーのシリアスな雰囲気も合点がいった。
ナニカが起きれば、彼らは真っ先に飛び出さねばならない。
議会の承認がままならない状態でも、数日以内に世界のどこででも、ハイブリッドなタスクフォースを実行しなければならないのだ。
そのガチな匂いが漂っているのだろう。
余談だが、現在公開中の機動戦士Gundam GQuuuuuuXで、ジオン公国軍突撃機動軍司令であるキシリア・ザビが、シャア大佐率いる少数艦艇の艦隊を、殴り込み部隊と評していた。
また、強襲揚陸艦として設計されたペガサス級の、本来の能力が発揮されたシーンもインプレッシブだった。
もっとも、あれは、ドレン大尉の秀逸な指揮があってこそだが…
そういえば、シーマ・ガラハウ中佐もジオン公国軍海兵隊に所属しており、彼女の登場するゲルググも海兵隊仕様になっていたなぁ…
水陸機動団
そうして、我が日本にも、ハイブリッドな能力を持つ海兵隊が存在する。
その部隊は、水陸機動団と命名されている。
それが誕生したのは、アメリカ海兵隊とおんなじ。
必要だからだ。
大英帝国との独立戦争の真っ只中だったアメリカほど、ホットな状況ではない。
だが、こちとら、話も道理も通じない、思い上がった野心を持つ生き物と、水際で対峙しなければならないのだ。
英語と米語の違いがあるとはいえ、同じEnglishでコミュニケーションを取れる状況とは違うのだ。
2018年に創設された部隊は、歴史だけ見れば、まだまだヨチヨチ歩きもいいところなのだろう。
しかし、創設時に派遣されていた御本家のおかげで、その能力は急激に向上しているようだ。
だけど、本来は、こんな部隊が必要ないセカイが望ましいに決まってる。
アメリカ海兵隊が、存在理由がなくなって解散した歴史があるように、あらゆる軍隊の存在理由がなくなるセカイこそがベストのはずだ。
フライオーバーが、最もシリアスなオペレーションである程度のセカイがね…
