独白

3Dプリンタと無人機と空母 「海洋を漂う兵器工場と通勤するパイロット」

最新機種のデータを受け取った空母は、その内部に抱える3Dプリンタ工場で最新型の無人航空機を製造。
家から通勤している本土のパイロットがその無人機を遠隔操縦して、家族との夕食前に、中東の何処かを攻撃する。

これが新しい戦争の光景なのだろうか。
こうした試みが、現在、米軍で進行中のようだ。

米海軍のマイケル・リェンサ少佐によると、米軍の未来は空母を「海に浮かぶ工場」にできるかどうかにかかっているようです。各空母が3Dプリンタ部隊を載せて、それで兵器やドローンや、シェルターまでもその場で作ってしまうことを目指すんだとか。

引用元: 空母に3Dプリンタ積んで、兵器もドローンもその場で作っちゃおう…という試みが米海軍で進行中 : ギズモード・ジャパン.

どれも遠い未来の話のようだが、ひとつは実現可能であり、ひとつは実験に成功しており、最後のひとつは現実に起きている。

3Dプリンタの可能性

実現可能なものは3Dプリンタ工場だ。
一晩でビルを作れるシステムも開発されており、何しろ月面基地建設も計画されている。

ESAでプロジェクトを率いるローレント・パンバギアン(Laurent Pambaguian)氏は、「3Dプリント技術は、建物を丸ごと製作できる」と声明で述べている。月面でも同じ手法で基地の建設を目指すという。

引用元: ニュース – 科学&宇宙 – 3Dプリンターで月面基地、ESA発表 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ).

空母から飛び立つ無人機

先日、米軍は空母からの無人機の発艦に成功し、その模様を公開している。
これで世界中のどこにでも、無人機を配備できる。

ドローン戦争時代到来。空母から米無人爆撃機「X-47B」が初発艦に成功の歴史的瞬間(動画) : ギズモード・ジャパン.

実戦投入されている無人攻撃機

ピンと来ないかもしれないが、無人攻撃機はすでに実戦投入されている。
そう、無人偵察機ではなく、無人攻撃機だ。

すでにアフガニスタンやイラクの空を飛び回り、現実に稼働している。
それは通常の戦闘にかかわらず、テロ容疑者の暗殺にも使用されている。
しかもその運用は、これまで米軍ではなくCIAが行なっていたようだ。

ホワイトハウスによると、無人機はこれまで中央情報局(CIA)が運用してきたが、今後は米軍に所管を移す。暗殺作戦を承認する特別裁判所や独立監視委員会を設置するなどして監督体制も強化するという。

引用元: <オバマ米大統領>テロ容疑者暗殺、無人攻撃機使用を厳格化 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース .

無人機の技術は、つい最近開発されたように見えるが、実はその歴史は長い。 第二次大戦中から研究が本格化し、1944年にはB-17爆撃機を改造し、不完全ながらも実戦に投入している。

1944年には、アメリカ陸軍が強固に防御されたV1飛行爆弾発射施設などを破壊するため、B-17爆撃機を無人機に改造し高性能炸薬を積み込んで体当たりさせるという「アフロディーテ作戦」を立案していた。

引用元: 無人航空機 – Wikipedia.

無人機のパイロットは、本土からでも遠隔操縦が可能であるため、戦地に赴く必要すらない。 髪の毛一本ほどの危険な目にも、あうことはない。
長い時間とお金をかけて育成された経験豊富なパイロットを失う心配はなくなった。
しかし、皮肉なことに、戦地に赴いた兵士より高い割合でPTSDを発症している模様。

「いつミサイルを発射してもおかしくない状況から、次には子どものサッカーの試合に行く」という平和な日常と戦場を行き来する、従来の軍事作戦では有り得ない生活を送ることや、敵を殺傷する瞬間をカラーテレビカメラや赤外線カメラで鮮明に見ることが無人機の操縦員に大きな精神的ストレスを与えているという意見もある[12]。

引用元: 無人航空機 – Wikipedia.

「今俺たち殺したの子どもじゃないか?」と彼は隣の男に訊いた。

「ああ、たぶん子どもだ」と答えるパイロット。

「あれは子どもだったのか?」―ふたりは画面のチャットの窓にこう入力してみた。

すると誰か見知らぬ人物、この世界のどこかで彼らの攻撃を見守っていた軍司令部の誰かが答えた。「いや、あれは犬だ」

ふたりはもう一度そのシーンを録画で見直してみた。二本足なのに犬か?

夏に調査報道ジャーナリスト協会が発表した推計では、パキスタンの部族地域内だけで少なくとも168人の子どもがドローン攻撃で亡くなっているそうです。

引用元: ドローンを遠隔操縦するパイロットふたりの悲しい会話 : ギズモード・ジャパン.

いって来るよと家族に挨拶を交わした後で、任務を果たし、家に帰って夕食をとる。
子供に、「今日はどんなお仕事したの?」と聞かれた時に、返す答えを彼らは持ちあわせているのだろうか?
生き延びたという達成感もなく、ただゲームのように行われる作業は、なかなかにココロをえぐりそうだ。
まして、そこに子どもの巻き添えがあったとすれば。。。

現在はまだ、遠隔操縦とはいえ人の心を介在している。
そしてそれは、痛みをともなっている。

この先の技術の進歩で、空母にさえ人の必要性がなくなり無人機もプログラムで飛行可能となった場合、物資補給以外では寄港の必要すらなくなった空母は、攻撃可能な航空師団を抱えた巨大な兵器工場として、海洋を漂い続ける。
そうして、まったく人の心が介在しなくなった時、目にする光景は僕のココロが耐えうるものだろうか。

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