NFLで最高の選手、最高のチームとは?と問われれば、その答えは多岐にわたるだろう。
しかし、王朝を築き上げたチームは?と問われれば、その答えはひとつしかない。
10年で消えていくTeam of the decadeを尻目に彼らは20年も栄華を誇った。
NFL100年の歴史の中の20年だ。
その王朝の内幕を描くドキュメンタリーが、Apple TV+ で2月16日から配信される。
The Dynasty: New England Patriots
美しいサクセスストーリーにとどまらないであろうことは、予告編を見れば予想できる。
デフレゲート、スパイゲートという単語にとどまらず、アーロン・ヘルナンデスまで登場している。
プレスリリースには、偉大さへの道のりと、その代償が明らかになると記載されている。
興味深いのは、当事者のインタビューだけで構成されていないことだ。
ペイトリオッツのアーカイブから、何千時間にもわたる未公開のビデオ映像と音声ファイルが利用されている。
Part ways
フェイマスな選手やコーチがチームを離れるとき、英文のリリースではPart waysとシンプルに表現される。
それは、今回のビル・ベリチックについてもそうだった。
ここ最近の戦績、そして彼の年齢を思えば、驚きこそするが納得の結果だと思える。
一方で、僕がいまだに納得できていないのが、トム・ブレイディとPart waysの選択をしたことだ。
Quarterback TOM BRADY “Clearly Tom Brady seems to have made a deal with the Devil, because he’s not getting old.” – George R.R. Martin
情報源: NFL 100 | NFL.com
ライブでプレイし続けているGOATなんて、そうそう拝めるもんじゃない。
しかし、たいして衰えを感じさせない彼とペイトリオッツは契約を更新しなかった。
十分に力を持ち合わせていた彼は、入団初年度で海賊たちに#VLTをもたらした。
引退を決めた翌シーズンでさえ、スーパーボウル連覇までもう少しのところだったのだ。
なぜ、実績も実力もある史上最高の選手を引退まで見届けなかったのか?
ドラフトで、次代を代表するような逸材が指名できる可能性もなかったというのに。
いや、もしその可能性があったとしても、最高のメンターになれたはずなのに…
プレスリリースに、このような記載がある。
「縄張り争いのきっかけとなった内紛」と。
これは、まだ想像に過ぎないが、偉大になるにつれて成長したエゴ同士が激しく衝突していたのだろうか。
だとすれば、チーム内は、すでにPart waysだったのかもしれない。
アーロン・ヘルナンデス
大変、ショッキングでありながら、これまであまり語られることのなかったアーロン・ヘルナンデスの事件。
三流私大のスポーツ推薦の学生が大麻いじくりまわしたなんてしょぼい事件とは比べ物にならない、第1級殺人でNFLの現役のプロボウラーが逮捕されるという、大変ショッキングな事件。
しかも彼は、当時のTEの史上最高額の契約を結ぶほどの選手だったのだ。
Aaron Hernandez Top 100 of 2013
あのロブ・グロンコウスキーと同期入団。
彼より指名順位が低いのは、それまでの素行の悪さのせいだと言われている。
TEのみならず、当たり前にワイドアウトにセットする。
バックフィールドにもアラインするのは、ブロッキングバックになるためじゃない。
彼自身がボールをキャリーするRBとしてプレイするためだ。
2TEシステムは、ジョー・ギブスが確立させたが、それは主にブロッキング目的のため。
ローレンス・テイラーのように強力になりつつあったOLBという存在を自由にさせないためだった。
しかし、アーロン・ヘルナンデスとロブ・グロンコウスキーの2TEシステムは、もっとクリエイティブでネクストレベルに到達する可能性があったのだ。
だが、もたらされた現実は、1人はNFL100年のベストメンバーに選出されたが、もう1人は獄中で首を吊るしかなかったというもの。
僕にとっては忘れることのできない選手のひとりだ…
配信予定の2月16日は、第58回スーパーボウルが終わっておよそ1週間後。
シーズンが終わって空虚になったNFLファンには、もってこいの時期かもしれない。
ただ、スーパーボウルという極上のディナーの後のデザートとしては、ビターすぎる内容かもしれないが…