モータースポーツに明るくない僕にとって、「フォードvsフェラーリ」という構図は全くピンとこなかった。
しかし、調べてみると、そこにはモータースポーツ最大のグレートライバリーが存在した。
いや、それでは表現が美しすぎる。
エゴとプライドをかけた文字通りの戦争が行われていたのだ。
戦場は、ル・マンという世界最高峰のレースであり、武器は、そのためだけに開発されたレーシングカー。
公開された「フォードvsフェラーリ」とあわせてAmazonプライムで公開されいてるドキュメンタリー「24時間戦争」を観るとより楽しみが深まるだろう。
車を売るためにレースをするフォード
フォードとフェラーリでは、そもそもレースに参加する理由が違う。
フォードは、車を売るためにレースに参加する。
そもそも、創業時、レースに勝つことで名前を売り、投資者を得ることができたフォード。
以後は、レースに参戦していなかった。
しかし、GMのコルベットが日曜日のレースに勝つごとに月曜日には売れていく。
いつの間にやらGMのシェアは60%にまで達していた。
そう、フォードはレースをしないことでシェアを15%も失ってしまったのだ。
レースをするために車を売るフェラーリ
純粋にレースに魅せられ、レーサーになることを決意したフェラーリは、実家を売り飛ばして最初のレーシングカーを手に入れる、
以後も、全財産をレースに注ぎ込み、レースを続けるために仕方なく一般車を売らなければならなかった。
第二次大戦中の対決?
レースで直接対決する前に、第二次大戦中にフォードとフェラーリが激突した可能性があるらしい。
戦時中、フォードの工場では爆撃機を生産していた。
そこで作られた爆撃機がイタリアのフェラーリの工場を爆撃していた可能性が高いというのだ。
これは、確認されてはいないが、この事実を知ったら、「24時間戦争」も一段とダークになっていたのかもしれない。
お互いにアンダードッグ
ことレースに関して言えば、アンダードッグは間違いなくフォードのほうだ。
しかし、資本力という点では、フェラーリが劣るのは間違いない。
そしてお互いが劣勢を跳ね除けて噛みついたことで、物語は大きく熱く動き出す。
1500万ドルの買収を蹴る
フォードの買収の申し出に、意外にも応じたフェラーリ。
フェラーリ・フォードというレース部門の会社と、フォード・フェラーリというGTカー製造の会社という2社を設立するというところまで話はまとまった。
しかし、資本力で劣るはずのアンダードッグは最後の最後、契約に関するある条項に噛みついて、首を縦に振ることはなかった。
「レースに関する最終決定権をフォードが持つ」
そのことが、フェラーリには決して受け入れることができなかった。
実家を売り飛ばしてまで手に入れたレーシングカーを皮切りに、これまで全財産と引き換えに輝かしい戦績を勝ち取ってきた男のエゴとプライドは、1500万ドルという金額では売りに出されることはなかった。
創業者の名を持つ孫
フォードの社長は、創業者の名を持つ直系の孫だ。
そのような育ちの彼は、創業者とは種類の違うエゴとプライドを持ちあわせていたはずだ。
傷つけられたプライドを修復させるには、相手が最も誇りにしているものを奪わなければならない。
レースに関して言えばアンダードッグであるのは間違いがない。
しかし、このアンダードッグは、まあまあ金を持っていた。
こうして、世界最高峰のレースといわれるル・マンという戦場に、レース史上最大の投資額という最大の武器を投じることになったのだ。
レーサーの儚いエゴとプライド
誰よりも速く走りたいというレーサーのエゴとプライドは、シャープに研ぎ澄まされている。
しかし、強大な権力者の持つエゴとプライドの前では、それは儚く脆いものに過ぎない。
それはきっと、1967年の激闘の後、はじめて行われたシャンパンシャワーの泡よりも、儚いものであっただろう。
モータースポーツというさわやかな呼び名に抵抗を感じてしまう理由がわかったような気がする。
レースとは、プライドで作られた車体に、エゴという燃料をぶち込んで走り尽くすものであり、つまりそうした強烈なものの結晶だからなのだろう。
映画『フォードvsフェラーリ』公式サイト。大ヒット上映中!マット・デイモン × クリスチャン・ベイル豪華共演。伝説のレースで絶対王者に挑んだ男たちの奇跡の実話。
情報源: 映画『フォードvsフェラーリ』公式サイト
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