ついに始まったノックアウトステージ。
引き分けなんて曖昧な結果は許されない。
勝利の女神の微笑みを享受できないチームは、妹からのキスにもありつけない。
「勝ちたい」日本と、「負けられない」ブラジルの対戦は、順当な結果に終わった。
それは、実力差の話ではない。
力の拮抗した「勝ちたい」チームと、「負けられない」チームの対戦は、往々にして「負けられない」チームが勝利を収めてしまうからだ。

ヒューストンで日本は佐野海舟の先制点でブラジルを最後の最後まで苦しめながら、終了間際の一撃に沈み1-2で敗れ、ラウンド32で大会を去った。勝者であるブラジル代表のクーニャは「称賛に値する」と認め、森保監督が「またさらに力をつけられるようにやっていく」と前を向く。惜しまれながらの敗退が残したものを追う。
ブラジルを追い詰めた日本代表:ラウンド32で散るも世界に示した「誇り」と次への糧 | FIFAワールドカップ2026
拮抗する「意欲VS意地」
サッカーに関してはニワカの僕だが、今回のサッカー日本代表チームには、歴代と比較しても地力があったはずだ。
先制されても追いつく力があり、落としてはいけないゲームを勝ち切るマネジメントもあった。
そうしてブラジル相手に、日本がまさかの先制点を挙げるという展開で始まった。
「いい守備からいい攻撃へ」のスローガン通り、ブラジルのパスをインターセプトすると、そのままひとりで撃ち切っての見事なゴール。
以前なら、無駄に手数をかけすぎて不要なパスを出してしまったり、打ち損じてしまったり、そんなシーンが走馬灯のように浮かぶ。
だが、佐野海舟は、シンプルに結果を生み出した。
これが代表初ゴールというのも意外だけれど…
その後、ブラジルはボールを支配しながらチャンスの数を作り出し、確率論的にも、それがスコアにつながった。
日本も、よく跳ね返していたが、後半は、跳ね返すだけにとどまってしまった。
そこからのカウンターに繋がらない。
「いい守備がいい守備どまり」と表現するべきか。
ではまったく圧倒されていたのかといえば、そうではない。
展開によっては…という可能性を感じさせた。
つまり、強豪国の下のカテゴリーを脱して、ノックアウトステージにいるべきチームになっているはずだ。
だから、日本とブラジルの力の差も、紙一重であったはずだ。
111年に及ぶ紙一重
だが、ここからの紙一重が、思ったよりも分厚く頑丈だ。
ラグビーの話で恐縮だが、皆さんは2016年のニュースを覚えておられるだろうか。
アイルランド代表が、初めてオールブラックス相手に勝利を挙げたというニュースを…
1905年の初対戦以来、実に111年後、28回目の対戦で、アイルランドは初勝利を挙げることができたのだ。
同じ強豪国という括りにいながら…
過去10回のラグビーワールドカップで3回の優勝を果たしたオールブラックス。
そのクラスと、それ以外では同じ強豪国の中でも「紙一重」が強固に存在している。
だから、それをさらに上回る南アフリカに、漫画のような猛練習で強くなったブレイブ・ブロッサムズが勝利を挙げたのは、本当に本当に驚きだった。

サッカーワールドカップで言えば、過去22大会中、5度も優勝しているブラジルは、強豪国グループの中でもSクラス。
日本は強くなっているし、親善試合とはいえ負けることも経験した。
でも、だからこそ、まだまだ格下のチームに「負けられない」。
そのブラジルに、「勝ちたい」、勝てるかもと臨んだ日本。
多くのスポーツで、力の拮抗した「勝ちたい」チームと、「負けられない」チームの対戦は、「負けられない」チームが勝利を収めてしまう。
五分五分の勝負であるのなら、意欲を意地が跳ね除ける。
それを経験の差という表現に変えてもいいのかもしれない。
だから、これから成り上がろうとするチームは、相手を圧倒できる、オーバーパワーする力がなくてはならない。
それほどの力を身につけたとき、はじめて「負けられない」チームの意地と五分の勝負に持ち込めるはずだ。
アメリカンフットボールの世界では、かつて関西学生リーグで孤高を誇った関学を、国立大の京大が倒したのは、サイズのでかい選手を並べて、力づくでオーバーパワーするというものだった。
宇宙を支配する物理法則が、王者の意地をねじ伏せた。
コンタクトスポーツではないサッカーにおいて、どんな最短ルートがあるのかは、僕にはわからない。
ただし、ベースのフィジカルが強くなることに間違いはないんじゃないだろうか。
それは単に「当たり負けしない」という意味だけではない。
極限のトーナメントを戦い抜くための、圧倒的な「タフネス」の差だ。
ベストメンバーがヘルシーな状態でピッチに居並ぶこと。
それもフィジカルと表現してもいいはずだ。
今回の日本代表の怪我人の多さを見て、そんなことを思った。
もちろん不運なタイミングや、所属チームでのシーズンの中での避けられないものもあるだろう。
だが、結果論的に言い切ってしまうと、名選手はケガに強い。
まして、4年に1度の大舞台を、それが理由で出場できないなんて不運も持ち合わせていない。
これは批判でなく、僕の愚痴と妄想だ。
だって、怪我人がいなければ、本当にベストメンバーだったなら、新しい歴史の扉が開いたんじゃないかと思ってしまうんだよね…
