Amazon prime videoで世界同時配信となった仮面ライダーBLACK SUNを全10話コンプリート。
評価が高いと言われる仮面ライダーBLACKを大人向けに製作するというコンセプトとキャスティングに、前評判も高かった。
全て観終わった後に感じるのは、確かにこれは大人向けであるということだ。
なぜなら、大人には、望まない結果に折り合いをつけるスキルがあるからだ。
強い俳優のチカラ
レジェンドとも言えるヒーローを演じるには、強い俳優が必要だ。
そして強い俳優は、ヒーローをもう一段グレードアップする相乗効果を生む。
シン・ウルトラマンで、斎藤工が示したように。
その点で、西島秀俊と中村倫也は素晴らしかった。
流浪のまま歳を重ねてしまったBLACK SUNと、長い幽閉から解放されて一気に王の座まで登り詰めようとするSHADOWMOONを演じきり、見応えのあるシーンを創り上げてくれた。
対峙するゴルゴムの三神官にも、強い俳優陣が起用され、クジラ怪人からノミ怪人、さらには反怪人団体の代表を演じた今野浩喜に至るまで、独特の存在感を発揮し、このセカイに臨場感をもたらしていた。
インプレッシブな平澤宏々路
情報源: 平澤宏々路「仮面ライダーBLACK SUN」で変身「西島秀俊さんに負けないくらいやろう」 – 芸能写真ニュース : 日刊スポーツ
そして、インプレッシブだったのが平澤宏々路だ。
役柄は置いといても、画面の中で放つ強い存在感は、並いる俳優陣にも、ダブルライダーにも決して劣ることはなかった。
しかも、まさかの変身シーンまで披露してくれるとは…
悪とは、誰だ。
胸が熱くなる数々のシーンがありながら、しかし、僕は物語に最後まで没入することができなかった。
令和における特撮のわりにギミックが稚拙だとか、少なくとも王と呼ばれる創世王の描き方が薄っぺらいとかの、その前にもっと決定的な要素がある。
薄く散りばめられた政治的なサムシング。
エスプリもなく、深まりもなく、ただ散りばめられたそれは、風刺とも呼べない。
プロフィールに何かに反対していることを声高に自慢しているTwitterアカウントのタイムラインをうっかり覗き込んでしまったような、後味の悪さと白けた感じ。
政治的な要素も風刺も盛り込んでくれて構わない。
それをしっかりと生かしてくれるのであれば。
さらに言えば、それが物語を深めてくれるのであれば。
だが、本作では、そうではなかった。
そうした稚拙な要素が登場するたび、僕は物語から引き戻されてしまった。
大学の正門の脇で干からびている、誰も目にすることのない立て看板が思い出された…
「悪とは、誰だ。」がテーマであるというのなら、それが誰かは明白だ。
大人の俳優陣がチカラを発揮した演技を台無しにしてしまった、幼稚な製作陣。
彼らこそが、本作における悪だ。
そういう意味では、この作品は、子供にも見せるべきなのかもしれない。
大人とは、すべての面において成長した存在ではないと知らしめるために。
無自覚な幼稚さを抱え込んだまま歳を重ねてしまうのも、大人という存在なのだと知らしめるために…