カンザスシティ・チーフスが4つめのスーパーボウルリングをお披露目した。
4粒の大きなダイヤモンドを含んだ宝石群は、実に14.8カラット。
しかし、どんなダイヤモンドよりも、強い輝きを放つものが、このリングには飾られている。
トムとジェリー
ビデオを見ながら、僕は、あの激闘を反芻していた。
両チームのDCが、両チームのエースRBのRYOEを、そろってマイナスヤードに封じ込めるという死闘。
オーバータイムにまでもつれ込んだそれは、A duel for life。
まさしく人生を賭けた決闘だった。
それに終止符を打ったのが、「トムとジェリー」とコールされたプレイだった。
Andy Reid called "Tom and Jerry," and @PatrickMahomes called game 😏
— NFL Films (@NFLFilms) February 13, 2024
Super Bowl @insidetheNFL
Tuesday 8/7c on @thecw pic.twitter.com/m04Zg22DSP
印象的だったのは、そのユーモラスなネーミングではない。
このプレイの開始まで、彼らは残り6秒になってもタイムアウトをとるそぶりさえ見せなかった。
彼らは、確信を持って、このプレイに臨んだのだ。
これで必ず決めると。
そのプレイチャートが、アンディ・リードの直筆により、リングに記されている。
しかし、もっとも輝きを放つものは別にある。
ノーマ・ハント BOWL
今回のスーパーボウルを、僕はノーマ・ハント BOWLと命名していた。
彼女のいない初めてのスーパーボウルだったからだ。
ノーマ・ハントは、あのラマー・ハントの妻であり、夫亡き後は子供たちと共同でフランチャイズのオーナーとしてチームを支えてきた人物だ。
さらに、全てのスーパーボウルを観戦しているNever Miss a Super Bowl Clubのわずか4人のメンバーの中で、唯一の女性だった。
彼女は、20年ぶりにスーパーボウル連覇チームが誕生するところを見逃してしまった。
しかもそれが、心血を注いだ自分たちのチームであったというのに…
僕は、彼女のことをスーパーボウルの母だと思っている。
スーパーボウルと名付けたのは、夫のラマー・ハントだ。彼が子供たちの遊んでいたスーパーボールによって着想を得たというのは有名な話だ。そして、ダラスのおもちゃ屋さんで、子供たちにそのスーパーボールを買い与えたのは、ノーマ・ハントなのだ。
そう、このリングには、彼女の、Norma Knobel Huntの頭文字が刻まれたのだ。
しかも、リングの表と裏でラマー・ハントと寄り添うように…
これこそが、このリングでもっとも輝きを放つものだ。
ラグジュアリーな宝石たちや、シーズンの情報を詰め込んだデザイン、それらの価値も認めないわけじゃない。
でも、それでも尚、寄り添うように配慮されたNKHとLHのイニシャルが、このリングの最もあたたかく、最も輝かしい部分なのだ。
人は死んだら名前しか残せないと言われる。
だとすれば、彼女が名前を残すのに、スーパーボウルリング以上にふさわしいものがあるだろうか。
彼女は、最もふさわしい場所に帰還を果たしのだ、永遠に…