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「孤狼の血 LEVEL2」観た人のためのレビュー「県警バイプレイヤーの楔」

着ているジャージが違うだけで同じフィールドで同じ競技を戦う暴力団組織と警察組織。
そのフィールドでは、それぞれが持つ強みを生かした暴力が存分に発揮される。
しかし、今回の作品に登場する暴力団は、金儲けに勤しみ、本来の持ち味である組織としての戦闘力を失いかけている。
故に、本来、強い統制が働く組織の中にあって、上林という下っ端の幹部の暴走すら抑えることもできない。
では、県警はどうだろう?
彼ら特有の陰湿な暴力は、一向に衰えていない。
そうした力は、彼らが自己保全を図ろうとする時に一番強く働く。
そう、3年前から何ひとつ変化を見せてはいないのだ。

前作では、その暴力は日常生活の中に内在化し、時折顔を見せる程度だった。
しかし、本作では明らかに顕在化した暴力が日常生活を見下ろしている。
この映画がスーパーバイオレンスアクションムービーで終わらなかったのは、強いバイプレイヤーが強力な楔を打ち込んでいたからだ。

嵯峨大輔

滝藤賢一演じる県警捜査一課の管理官は、前作で監察官としての任務を失敗した男だ。
県警上層部の弱みを消すどころか、新たな弱みまで抱え込んでしまったのだから。

上に言われてやらされているめんどくさそうな、その裏の任務を、いかにもめんどくさそうにやっている風情が滲み出ている。
こんなめんどくせえこと、さっさと終わらせたいのに、キャリアが下のはずの若造は一向に言うことは聞かねえ。
言いなりになる下っ端は、全く頼りにならねえ。
そのめんどくささが積もりに積もってキレる様は秀逸だ。
それは何かに対する怒りなんかじゃない。
ただ、めんどくさいだけなんだ。

瀬島孝之

中村梅雀演じる警部補は、日岡秀一のバディとなる。
長年、公安畑を歩いてきたが、定年前に刑事としての夢である殺人事件の捜査に参加できるという設定だ。
そう、それはまさしく設定だった。

瀬島百合子

宮崎美子が演じるのは、瀬島孝之の妻だ。
登場シーンもセリフも少ないが、人の良さそうな笑顔の合間に見せる一瞬の表情。
それがきちんと物語に楔を打つ。

彼女が純粋な民間人なのか、あるいは一員なのかはわからない。
しかし、本物の公安も警察を退職したという事実のあとも、その任にあたると聞いたことがある。

両親のいない日岡秀一をあたたかく受け入れ心を開く。
首までどっぷり公安に浸かった夫婦のスキルに間違いはない。

しかし、孤狼を気取っている日岡秀一もまだまだ脇が甘い。
ガミさんが生きていたら、きっとドヤされていたことだろう。
「広大!ワレの目は節穴か!」

まあでも仕方ないよね。
ガミさんのOJTは、途中で終了せざるを得なかった。
だから、偶発的に発生した殺人事件を利用して、3年越しのオペレーションを県警が発動していたなんて見抜けなかったとしてもさ…

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