久しぶりにLAMY Safariを手に入れてしまった。
選んだのは、2025 限定色 sunset。
いい歳の男であるくせにと思ったが、いい歳の男だからこその理由もある。
のっけるインクは、濡羽色だ。
LAMY safari 2025 sunset & dark dusk
毎年リリースされるようになったLAMYの限定色。
2025年は、サンセットとダークダスク。
正直に告白すると、この特別なカラーに惹かれて!
というわけではない。
さら、毎年のコレクションを押さえておきたいコレクターというわけでもない。
この間、2本目を追加したばかりのサクラクラフトラボ005も気に入っている。

トモエリバーSの謳い文句であるスッキリ感のせいか、サクラクラフトラボ005の水性顔料ゲルインキのぬるサラ感のサラの部分がより強調される。
なんというか、あと口がいい感じがする。
ほぼ日手帳 HON を勢い余って購入してしまった理由 | ALOG
ただ、手書きの比率が増えてくると、もうひと味、欲しくなってくる。
そうして、万年筆に手を出すことになるというのも、お馴染みの僕のサイクル。
やれやれ、冥王星のように長い時間をかけて、僕は同じところを堂々巡りしているようだ。
だが、それでも、ここしばらく我慢が効いていたのは、どうせ万年筆を手に入れるのなら、もうちょい高級な書き味を味わえるペン先を持つものを手に入れたいなぁとも思っていた。
そうして、僕を魅了するモノも存在する。

マイスターシュテュック x オリンピック ヘリテイジ シャモニー 1924 クラシック 万年筆 – 高級万年筆 – Montblanc® JP
情弱な僕には、モンブランの書き味がどれほどのものなのかは知りようもないが、このブルーグレーとオレンジのデザインには、ハートを鷲掴みされる。
この色の組み合わせは、フェラーリに戦争をふっかけた頃のフォード・GT40を思い出させるよね。
そうして、同じLAMYのラインアップの中でも上の方に鎮座するLAMY dialog cc。

特許取得のツイストアクションメカニズムを備えた、世界初のキャップレス万年筆。
2本とも、グッドなデザインに太い軸。
そして柔らかそうなペン先。
惹きつけられるよねぇ…
OK!
だが、ちょっと待て!
気が向いたときだけ仕事をする僕の理性というやつが、ご丁寧に釘を刺す。
「お前は、それを使って何を書く気なんだい、文豪さんよ」
そう、僕が書くのは、せいぜいユビキタス・キャプチャー。
とても書いたものをTLに上げることなどできない、高級な落書きに過ぎない。
そうしたものに、高級万年筆を用いる余裕はあるのかい?
やってます感を創出するためだけに、省庁をバンバン創設するほどの潤沢な予算を持つ国家と違い、日々を滞りなく乗り切っていくだけで精一杯の僕には、文豪やってます感に割ける予算は捻出できない。
いつか、潤沢な予算を抱えることができたなら、何も考えずに手に入れたいとは思うけどね。
もっとも、度重なる増税に黙って納税してくれる国民を抱えていない僕には、それがいつになるのかは予測もつかない。
国債の発行機能は、僕には備わっていないし…
ホワイトクリップ
そんなこんなで、LAMY safariに落ち着くのも、これまた例年通りのサイクルだ。
そうして僕は、ひと頃、ホワイトモデルばかりを買っていた。
それは、ゲン担ぎの意味を込めて。
今では、盤石の大ヒット商品であるLAMYのSafariも最初は売れず、ホワイトモデルを出すことによってブレイクしたというのだ。
売り上げの低迷が続く1983年、最後のチャンスということで、ボディーのカラーをツヤのある、ホワイトのSafariを発売。これが従来の万年筆では考えられなかったスタイリッシュなデザインオブジェとして、学生や若者の指示を得て、ヒット製品に。万年筆に「白」という色が使われた最初のモデルになります(白は2002年で生産終了)。
ジェットストリームインクをLAMYのsafariで使う方法 | ALOG
現在は、クリップまでホワイトのモデルも限定ながら販売されている。

じゃあ、これでいいかなと思った僕だが、せっかくだから2025年の限定色もチェックしてみようと思った。
もし、サンセット単体での販売だったなら、ホワイトクリップを選んでいただろう。
サンセットとダークダスクが同時に登場したことが、僕には刺さったのだ。
ドーンからデイ、そしてダスク
あなたは、Apple TV+のファウンデーションをご覧になったことがあるだろうか?
そこに、400年前に初代皇帝となり、現在も皇帝であり続けているクレオン1世が登場する。
彼は不死なのではない。
常に3世代のクローンを用いて、自分自身を入れ替え続けているのだ。

現役を退いたブラザー・ダスク。現役の皇帝を務めるブラザー・デイ。そして、幼きブラザー・ドーン。
年老いた自分の知恵に助けられながら、次世代の自分の教育を、自分が行うというシステム。
Apple TV+ファウンデーション配信開始「気になる皇帝とデマーゼル」 | ALOG
生誕という夜明けを迎えたドーン。
日の光のもとで人生を謳歌するデイ。
そして、日が落ちた後も生きていかなければならないダスク。
人生の3つのステージが、そのまま名前になっている。
じゃあ、いったい僕は誰なんだい?
そんなところに、LAMYがサンセットとダークダスクをリリースしたのだ。
もう日が落ち切ってしまった真っ暗なセカイ。
というには寂しすぎる。
冷静に自分のステージを観察してみれば、その前ということになるのだろう。
そうして、そんな年齢の男は、往々にして艶やかな色にすがりついたりしてしまう。
このコーラルピンクは、そんなものたちへの救済だ。
となれば、今の僕に、これ以上にふさわしい選択があるだろうか…
濡羽色というインク
今回、のっけるのは濡羽色というインク。

古くから黒く艶やかな女性の髪を表現する色の名前として用いられてきた、烏(からす)の羽のような艶やかな黒色。
インクの沼にはまりこんでいない、さしてインクを知りもしないオトコの僕は、本当にたまたま出会したのだ。
濡羽色なんて名前に惹かれてしまうのも、僕のような年齢の男の悪いくせなのだろう。
長年気づかなかったが、僕はブルーブラックをあんまり好んでいないらしい。
そうしてダークパープルのような色を求めて、LAMY crytal ink azuriteを試したりもした。

LAMY Safari キャンディー マンゴー とクリスタルインク「アズライト」レビュー | ALOG
色合いは好きだったが、インクの成分の問題なのか、ちょっと放置したら、僕のささやかなSafariコレクションは全て破壊されてしまった。
無事だったのは、ボトルのインクのみ。
ペン先も、あれこれ洗浄してみたが、どうにもならなかった。
このあたりが情弱の限界点と割り切って、いっさいを廃棄した。
そうして、黒いインクで、僕でもコントロールできるものはないかと、無い知識で探してみた。
黒も、薄っちょろいものではなく、本当に真っ黒がいい。
だが、そうしたものは、シロウトの僕には扱いづらそうだった。
であれば、真っ暗でなくてもいい。
できれば黒に、ダークな紫色のニュアンスを含んだものがないのかと思っていた。
果たしてこれが、その色合いを正確に表現するものなのかはわからないが、もう、その名前が気に入ってしまったのだ。
もとより、手帳メインでEFのペン先で書く僕にとって、そこまで微妙な色判別が必要なシーンは訪れることはないだろうし…
あとはお馴染みの別売りの純正コンバーターを使って、あっという間にセットアップ完了だ。

抜け具合をチェック
僕が普段使いする手帳やノートでの、いわゆる抜け具合というやつをチェックしてみた。

ほぼ日手帳 HON
トモエリバーSに変わって、イロイロ言われてたみたいだけど、何ら問題なし。
画像は省略するが、ほぼ日の無地ノートも、当然ながら問題なし。


測量野帳
測量野帳も従来通り、問題なし。


野帳
意外だったのは、野帳。
公式には説明がないので、思い違いかもしれないが、測量野帳とスタイリッシュにアップデートされた野帳には、若干の紙質の違いが感じられる。
事実、以前は、野帳では万年筆インクは抜けていた。
だが、今回試してみたらOK!だった。
個体差なのかもしれないが、より良い結果はウェルカムだ。
これで選択肢が増える。


モレスキン
先日、久しぶりに購入して、以前との紙質の違いを感じて期待していた。
だが、結果は残念なものになった。
完全に抜けている…


この結果は、本当に残念だ。
あらためて、モレスキン特有のサイズ感のしっくり感を実感し、なんだったらメインに使って行こうかと思っていた矢先だったのだから…

僕が手に入れたのは、ラージサイズ。思いっきり書き殴れるスペースがある。だが、意外にコンパクトなのだ。
おかえりASMR
あらためて万年筆で書いてみると、これまで僕の生活に欠けていたものの正体が分かった。
ASMRだ。
カリカリ、さりさり響く音と、それに伴って紙から指先にフィードバックされる感覚。
手書きという行為が、僕にとってはフィジカルな快楽を伴うということを実感する。
ナニカ書くもののクオリティが上がるわけでもない。
だが、ただ、気持ちいい。
僕にしては珍しく、購入するまでけっこう逡巡したけれど、久しぶりのLAMY safari 万年筆の購入は正解だったようだ。
ついでに来年の限定モデルの予言もしておこう。
もう、あなたにもわかるでしょ?
残っているのは、DawnとDayのふたつだよね…
