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マイアミ・バイス 伝説のシューターの謎が解けた

マイアミ・バイスのひとつのシーンが、ずっと忘れられないでいた。
目撃した中で最速の早撃ちシーン。
しかも西部劇の曲芸とは違って、M1911系のオートマチックを使用した、極めてタクティカルなもの。
鮮やかな所作を見せつける男は、明らかに役者とは違う匂いを放っていた。
そうして、その男が何者なのかを、ようやく僕は知ることができた。

Miami Vice Jim Zubiena Mozambique drill scene

銃を向ける警官がほんの一瞬だけ目線を泳がした瞬間に、Appendix CarryしていたM1911系のオートマチックを抜き撃ち、3発もの銃弾を叩き込む。
電光石火と表現するしかない驚異的なスピードで…
この映像は、アメリカの法執行機関で教材になっているようだ。

The Jim Zubiena ProFile

その男の名は、Jim Zubiena
俳優でもある彼は、全米でも有数の射撃の名手だった。
監督のマイケル・マンにテクニカルアドバイザーと射撃のトレーナーを依頼された彼は、マイアミ・バイスの撮影直前にドン・ジョンソンフィリップ・マイケル・トーマスにみっちりと射撃のトレーニングを積んだ。
二人の主演俳優の射撃に向き合う姿勢から、劇中で使用する銃器の選定も行ったようだ。

その縁で、一言もセリフを発することのない無口な殺し屋として、マイアミ・バイスに出演することになったのだ。
ドーナツとコーヒーで、辛抱強くターゲットを待ち続ける姿も印象的だった。

アメリカの法執行機関で教材になるほどの、最先端のテクニックがTVで初めて公開されたことで、マイアミ・バイス自体の人気も高まった。

Appendix Carryと空砲

彼が銃を隠していたのは、股間の上あたり。
これはAppendix Carryとして、コンパクトなオートマチックとの組み合わせで、最近の主流になっている。
映像でもわかる通り、圧倒的に早く抜くことができる。
しかし、大きなリスクがある。
つまり、トリガーコントロールを誤ると、自らの股間を撃ち抜いてしまう。

「空砲だったから、あんなに早く撃てたんだ」とJim Zubienaは言う。
実弾だったら、もっと慎重に動いていたはずだと。
このシーンも7テイク目に成功している。
もし実弾だったら、彼の股間はミゼラブルなことになっていたはずだ。

グロックというトリガーセーフティーを備えた銃の登場で、初めてAppendix Carryは実用的になったのかもしれない。

Mozambique Drill

マイアミ・バイスを見ている当時は知らなかったのだが、彼が披露しているのはMozambique Drill
コラテラルをご覧になった方なら覚えていることだろう。
トム・クルーズ演じるヴィンセントという殺し屋は、標的を確実に仕留めるために、必ず3発の銃弾を撃ち込んでいた。

 “two to the body, one to the head”

胸に2発、頭に1発。
その所作が正確に染み付いていることが、ラストの伏線になっている点も面白い。
アクションとは一線を画すトム・クルーズのタクティカルな所作と、高解像度カメラが捉えたLAの夜の空気の匂いがインプレッシブな映画だった。

Collateral (2004)

フィクションの中の真実(ほんとう)

僕らをフィクションの中に埋没させるためには、真実(ほんとう)の力が必要になる。
リロードなしでグロックなんかより遥かに多くの銃弾をばら撒くリボルバーや、ショットガンでの精密射撃なんてシーンに遭遇すると、前のめりになっていたはずの僕らから、瞬時にある種の熱が奪われてしまう。
シンプルに表現すれば、シラけてしまうのだ。
しかし、真実(ほんとう)の所作が加わると話しが違う。

対多人数の近接戦闘において、装弾数6発のコルト・パイソンなんかじゃどうにもならないだろうと思っていても、鈴木亮平の圧倒的なリロードの速さに説得されてしまう。

8インチの銃身なんてコンバットには不向きだと思うのに、松田優作の速すぎるクイック・ドローに呑み込まれてしまう。

その所作において嘘はなく、その動きは真実(ほんとう)なのだ。
そのシーンは、単体としてはドキュメンタリーなのかもしれない…

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