Amazon Prime Videoで機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島の配信がスタート。
エースパイロット同士の対決でありながら、戦争の局面を大きく変えることもなく、まして人の革新なども語られることもない。
ひと握りの哀しいニュータイプではなく、戦争を生き抜くその他大勢の物語は、一年戦争の奥行きを広げてくれる。
ファーストガンダムなどと呼ぶべきではない。
これは、紛れもなく、あの機動戦士ガンダムだ。
監督:安彦 良和———
『機動戦士ガンダム』は、名もない「小さな者達」が、たがいに助け合って巨きな敵と闘い、非情な運命の中を生きて行く物語です。かつてのテレビシリーズのなかに、もっともよくそうした色合いを表すひとつのエピソードがありました。しかし、いろんな事情からそのお話は全体の流れからはみだし、取り除かれてきました。今、ガンダムの初心を愛するスタッフはそれに光を当て、語り直します。ご覧ください。『ククルス・ドアンの島』
情報源: STAFF|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
アムロ・レイとククルス・ドアン
情報源: GALLERY|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
アムロとドアンは、同じ役割を担っている。
ドアンの子供たちとホワイトベースの子供たちが、彼らに発する声はとても似ていて、同じ意味合いを持っている。
それは自分達のヒーローへの声援だ。
戦火に巻き込まれた子供たちにとって、自分達を救い、守ってくれたのは、間違いなくこの2人なのだ。
アムロはホワイトベースを、そしてドアンは島を、それぞれの子供たちの家として守り続けている。
アムロは無自覚に、そしてドアンは能動的な選択の結果として。
状況とタイミングが違ったならば、お互いの立場が入れ替わっていても不思議ではないのだ。
アムロの成長
情報源: GALLERY|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
あの連邦の白い奴として認識して戦っていたドアンは、そのパイロットがあどけない少年であることに驚く。
そのパイロットが赤い彗星と双璧をなすほどの存在だと知らぬまま向き合ったアムロは、ただただ、その実力に驚かされる。
しかし、状況と間合いに躊躇なくビームライフルを投げ捨てるアムロの姿に成長が感じられる。
コクピットを降りたアムロは、サイド7の引きこもり少年だった頃と変わらず頼りない。
いろんな人に殴られっぱなしだ。
しかし、コクピットに乗り込んだアムロは、彼にしかできないことをやってのける。
まさしく、そのコクピットの中で、彼はいくつも修羅場を乗り越えてきたのだから。
ようやく見つけたガンダムに乗り込んでからのアムロは圧巻だ。
最小効率の戦い方を、非情さを含んだ選択を躊躇なく実行する頼もしさ。
スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還で、それまで脆弱だったルークが、マスター・スカイウォーカーとして登場するや、圧倒的な強さを見せたシーンを思い出した。
進んで物事をやるような少年じゃなかったアムロは、ここでは、自らなすべきことに躊躇なく一歩踏み出す姿を見せている。
そんな姿勢に、ドアンはガンダムを任せる決断をしたのだろう。
成長しなければ自らの死も、そしてホワイトベースという家も失ってしまうという修羅場を、コクピットの中で幾度も味合わざるをえなかったアムロは、少年から別のナニカになろうとしているようだ。
美しいアニメーションと3Dのメカニック
安彦良和監督による美しいアニメーションと、3Dでなめらかにスピーディーな動きを見せるリアルなメカニックの融合が、この作品の目玉のひとつ。
なにしろ、機動戦士ガンダムの最大の問題点を是正した作品なのだから。
その中でインプレッシブないくつかのメカをピックアップ。
コア・ブースター
地球連邦軍の戦闘機。セイラが搭乗し、スレッガーのジムを乗せて出撃する。
情報源: MECHA|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
細部がリファインされて、モビルスーツ用のハンドルも設置されている。
スレッガー中尉のジムがタンデムするシーンが登場する。
RGM-79 ジム
RGM-79 ジム地球連邦軍の量産型主力MS。スレッガー機はアムロ捜索のためにセイラの搭乗するコア・ブースターと共に出撃する。
情報源: MECHA|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
絶賛大量産中のジムには、さまざまなバリエーションが登場。
スレッガー搭乗機は人気なようで、ガンプラを入手するのも大変そうだ。
僕としては、コア・ブースターもキット化して欲しいところだ。
そうすれば、金髪さんと、彼女に馴れ馴れしい軽口を叩いて痛い目にあったスレッガー中尉のタンデムを再現できる。
MS-06GD 高機動型ザク (地上用)
申し訳ないが、僕はドアン専用ザクには、あんまり思い入れがない。
しかし、今回登場したホバークラフト付きのザクは、文字通り高機動でインプレッシブだった。
しかも、小隊の中で役割ごとに装備が違う。
エグバ機
サザンクロス隊に配備された褐色のホバー移動が可能な陸戦用のザク。ヒート・剣を持ち、白兵戦を好む。
情報源: MECHA|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
おなじみのキャラクターも、その性格がよりふくよかに描かれている。
その中でインプレッシブだったキャラクターをピックアップ。
ブライト・ノア
数々の激戦をくぐり抜けたホワイトベースの若き艦長。大反抗作戦を前に無人島の残敵掃討を命じられる。
情報源: CHARACTER|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
現在進行中のハサウェイ・ノアの物語を思えば、なんとも複雑な感情で見つめてしまう。
Anyway、いずれロンド・ベルの司令に昇りつめる名指揮官も、まだまだ駆け出しの将校。
しかし、サイド7から文字通り命からがらジャブローにたどり着いた経験と、二階級特進で少佐に昇進した実績が、彼に強い自信を与えているようだ。
それはつまり、地球連邦軍という強大な組織の下っ端にありながら、独断を押し通せるようになったということだ。
ところで、今作におけるミライさんの感情は、どのようなポジションにあったんだろうね。
まだ、スレッガー中尉も健在だし…
マ・クベ
ジオン公国軍の将軍。策士で、密かにある計画を発令する。
情報源: CHARACTER|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
ネタにされることの多い彼が、なぜいくつもの重責を担うのかは、不思議な点だった。
しかし、今回の彼はそれにふさわしい器の大きさを見せてくれる。
しかも驚くことに、ウィットとユーモアに富んでいるのだ。
彼が、ジオン軍地球侵攻軍総司令に抜擢されたのは、地球の美術品に詳しいからだけではない。
セイラ・マス
ホワイトベースの通信を担当する才女。その正体はシャアの妹で、敵国開祖のジオンの娘。コア・ブースターのパイロットも務める。
情報源: CHARACTER|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
悩ましのアルティシアの洗礼を受けた僕には、金髪さんはいつだって最高だ。
もっともそんなことを知られた日には、僕だってビンタの洗礼は免れない。
軟弱者は寄せつけず、弱き者には優しく手を差し伸べる。
ガンダム世界の女性キャラクターの中で、僕のALL TIME No.1。
情報源: GALLERY|機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 公式サイト
残念なこと
残念なことは、機動戦士ガンダムが映像化されるのは、これが最後だということだ。
それはつまり、もう機動戦士ガンダムの美しい映像を僕らが目にする機会はないということだ。
以前、機動戦士ガンダム THE ORIGINを全て映像化するという話もあった。
しかし、あれも結局、オリジナルエピソードに触らない部分に限定されてしまった。
誰かさんが首を縦に振らなかったのだろう。
「ククルス・ドアンの島」に限らず、機動戦士ガンダムの中で映像が乱れているものはたくさんある。
あれを修正したものが見たいのだ。
それに本当に速い赤い彗星や、3分も持たずに12機のリック・ドムが全滅する様子を今のリアルでスピーディーな3Dでも見たい。
お話を変える必要もなく、ただただ美しいアニメーションで見たいのだ。
これまで最も作画が狂っているといわれたエピソードが、最も美しい映像として復活したことは喜ばしいことだ。
そうしてそれが、あの全ての源である機動戦士ガンダムの映像をリファインする呼び水になってくれればと心から願ってやまないんだけどね…