室井慎次:Find Peace

ほったらかしにしていた室井慎次 敗れざる者室井慎次 生き続ける者を、一気に視聴した。
重い腰を上げたのは、『踊る大捜査線 N.E.W. 』の公開が近くなってきたからだ。

2本続けて観終わって、これは室井という男の長い葬式だったんだと痛感する…

僕の感覚を裏付けるように、室井を成仏させたいという脚本家の君塚良一の思いが、この映画制作の起点になっている。

柳葉や自分のために室井の終焉を描かなければならないのではないかと考えた君塚は、2022年12月5日に亀山に続編を制作できないかと打診するメールを送ったという。この時点で君塚は「室井を成仏させたい」と本作のラストを意識した内容を書いていた。

室井慎次 生き続ける者 – Wikipedia

Find Peace

室井慎次という男は、現場でサラリーマンあがりの刑事に出会ったばっかりに、その警察官僚としての生き様を大きく転針させることになる。
東北大出身という、その世界においてはコンプレックスを感じざるを得ない学歴を、上に上り詰めるためのバネにしていた男は、偉くなるための別の理由を見出した。

正しいことをするために偉くなる。

サラリーマンあがりの刑事と交わした約束。
それは奇しくも、和久さんと吉田副総監の想いを受け継ぐものでもあった。

そうして彼も、先達と同じくらいの歳を迎える。
だが、約束は一向に果たせない。

警察庁組織改革推進委員会を立ち上げるところにまでは漕ぎ着け、委員長として5年の月日を費やしたが、結論は得られず、その委員会は解散することになる。
それは、もうゲームは続けられないことを意味する。
ゲームが続いてさえいれば、いつか逆転ホームランを放てる打席に立つチャンスはある。
しかし、もうゲームセット。

そうして彼は、定年を前に退官するという選択をする。

僕らは、室井という男との付き合いは長い。
しかし、彼のプライベートなど、これまで知る由もなかった。

着る物は通販で間に合わせ、家庭を持つような人との恋愛に時間を割くこともなく、家できりたんぽ鍋を振る舞うという約束は、いつも空手形に終わる。
おそらく、約束を果たすことに、彼は、全精力を傾けてしまったのだろう…

そうして初めて目にしたプライベートは、敗戦処理のゲームのようだった。
失意と罪滅ぼし。
退官後の彼の生活には、そのふたつしか存在しない。
そのふたつだけを抱え込んで、雪深い中で生きていき、それを全うする。
なんて哀しい生活なんだと思っていた。

だが、そうではなかった。
里親とはいえ、家族のあたたかな生活も味わっていた。
それに何より、彼には、新しい夢が芽生えていた。

ようやく果たせなかった約束の呪縛から解き放たれ、これからを、前を向くことができたのだ。
これを成仏と言わずとして、他になんと表現しようがあるだろうか。

だって、あの男が、どんな時でも唇を2ミリしか上げられなかった男が、笑っているのだ。
新しい夢を語りながら。
それは決して人生の敗戦処理ではなかったはずだ…

彼の理想は、「室井モデル」として、秋田県警本部長である新庄が実践する。
彼の子供たちも、過去の因縁を断ち切って前に進んでいる。
あの日向真奈美の娘でさえも…

偉くならなくても、正しいことはできる。
いい大人として、生きてさえいれば…

思えば、あのサラリーマンあがりの刑事が、青島がいなければ、室井の世界は、いつも苦くてシリアスだ
そういう意味では、あの男のもたらす明るさは、室井にとってもかけがえのないものだったのかもしれない。

えっ?
その約束のもうひとりの当事者は、どうしてるかって?

「やってるよ、警官」

青島俊作は、まだ警官をやっている。
しかも、空き地署にいた男は、本店の捜査一課に配属されている。

『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』本予告【9月18日(金)公開】


彼が希望を託した相手は、約束を果たせず去ってしまった。
ノンキャリアで、しかも、かつての和久さんと同じくらいの歳になった男が、今さら、正しいことをするために偉くなるなんてことは不可能だ。

同期である捜査一課長の北丘が言うように、青島のエンジンは、今の原動力はなんなのか?
そのことだけを、僕も知りたいのだろうね、きっと…

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